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第6章
第14話 スリーチェへの頼みとプランティへの重大な話
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「お嬢様!こっちです!!」
「ま、待ってプランティ!」
スリーチェとプランティは陽の光が殆ど射し込まない深い森の中を走っていた。
「お嬢様!スクトさんはどこに!?」
「わ、分かりません……!
ですが、この森の中にいるはずです!
ついほんの先程までわたくしと共にいたのですけど……!」
スリーチェはここに至るまでのことを回想していた―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さあ!プランティ!貴女の力を見せて差し上げなさい!」
「あ、あのあの!わ、私は取り合えず1キロメートル程後方で待機しているので何かあったら呼んでください……!
何もなかったら呼ばなくていいです……!
いやむしろ私の事忘れて貰って結構です……!」
「あの正直邪魔なんですけど」
といった感じに、スリーチェとプランティは他チームを転々としていた。
そんな時―――
「やぁ、スリーチェさん!ちょっといいかい!」
「あ、スクトさん!」
スクトがスリーチェへと声をかけて来たのだ。
「君達が解散した後、僕はまた別のチームの様子を見てあげてたんだけどさ、どうも狙ってた『ロック・リザード』がここから北の方の森の中に隠れちゃったらしくて、探すのに手間がかかりそうなんだって。
君の『探知魔法』の力を貸して貰えないかな?」
「ええ!勿論構いませんわ!
わたくしの力の見せ所ですわね!
腕がなりますわー!」
「うう……また見ず知らずの人達と……」
スリーチェが腕をぐるぐると回し、プランティがこの日何度目になると知れない鬱屈とした台詞を吐き出すのだった。
そして、スクトはスリーチェに気付かれないようにスッとプランティの元へ近づいた。
「プランティさん……アリスリーチェさんから君だけに伝えなければならないことがあるらしいよ。
出来れば今すぐ会えないかって」
「えっ……?」
突然出て来たアリスリーチェの名に、プランティは困惑の声を上げた。
「あ、あの、それって……?」
「詳しいことは僕も分からないけど、何か重大な話があるらしい。
何でも―――」
スクトは「ふふふ~ん♪」と鼻歌を口ずさむスリーチェをチラリと見た。
「場合によっては、もう君がスリーチェさんのお付きではいられなくなるかもしれない……だとか」
「――――――っ!?」
プランティは思わず声を発しかけ、とっさに口に手を当てた。
自分がお嬢様のお付きでいられなくなる?
一体何故―――いや、心当たりはある。
自分はお嬢様のお父上の執務室に無断で侵入した上、機密文書にまで手を出した。
本来なら知られた時点で即刻追放、最悪処刑すらありえる重罪だ。
だが昨日はアリスリーチェ様は処罰する気は無いと……いや、それもアリスリーチェ様ご自身から聞いたことではない。
ただのスクトさんの推測だ。
やはりお許しにはなられていなかったのか……
しかし、『場合によっては』という言い方も気になる。
お付きでいられなくなることは確定してないのか……?
様々な思考が一瞬でプランティの頭を駆け巡った。
「それは……今すぐでなければならないのですか……?」
「これもよくは分からないが……
時間が経つと状況は不利になる、とのことらしい……」
事態は現在進行形で動いている、ということなのか……?
なんにせよ……活動が終わってからゆっくり話を聞く、という訳にはいかないようだった……
「………アリスリーチェ様は今どちらに……?」
「ここから南東方向にある大きな岩場の近くで待っている、だってさ」
今からスクトとスリーチェが向かう場所とは反対方向だった……
プランティは少しの逡巡の後、言葉を発した。
「お嬢様……その、ちょっとよろしいですか……?」
「どうしましたの、プランティ?」
スリーチェは振り返り、プランティを見た。
「えっと、その、ちょっと私、お時間を頂ければと………」
「?
どうかされたのですか?」
「いえ、その、えっと、その……」
「………プランティ、貴女……?」
まずい……!
何か察せられてしまったか……!?
「もよおしてしまったのですね!?」
「あ、はい、そうです」
勘の悪い主で助かった。
「もう!そういうことはもっと早く言ってくれないと駄目ですわよ?」
「あ、ええ、はい……
あの、それでは少し離れますが……
何かあったらすぐに『レゾナンス・ベル』でお呼びくださいね……?」
「はいはい!お花摘みの最中に呼ばれたくなければ早く済ませてらっしゃい!」
そんな主のノンデリ発言を背に受けつつ、プランティはスクトから聞いた場所へと駆け出していった。
この時……プランティはもう解決したと思い込んでいた問題が再燃したことで冷静さを欠いていたのだろう。
なぜ、わざわざアリスリーチェがスクトにそんな話を伝言するように頼む必要があるのか、疑問に思わなかったのだから……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それで、この森ですの?
『ロック・リザード』が隠れた森というのは」
「ああ、そうなんだけど………
あの子達はどこ行っちゃたのかな……」
スクトに連れてこられた森は草木が鬱蒼と生い茂っており、昼間でありながら中は薄暗い様相だった。
スクトが言っていたチームはその森の前で待機しているという話だったのだが、そこには人一人見当たらなかった。
「もしかして……『ロック・リザード』を探しに森の中に入っちゃったのかな……?
ちょっとマズいな……
こういう場所で不意の遭遇戦になったりでもしたら……
下手したら大事故を引き起こしかねないぞ……
調査隊員は止めなかったのか……?」
スクトは顎に手を当て、しばし考え込んだ。
「しょうがない、ちょっと探してくるからここで待っててくれ」
「あ、でしたらわたくしの探知魔法で―――」
「ああ、大丈夫大丈夫。
奥までは行ってないだろうし、呼びかければすぐに見つかると思うよ。
その魔法って結構魔力使うだろう?
無駄使いさせるのも悪いしね。
それじゃあ、行ってくるよ」
「あっ、スクトさん!」
スクトは少し強引に会話を切り上げて森の中へと入ってしまった。
スリーチェはスクトの様子にどうも違和感があった。
下手したら大事故を引き起こしかねないなどと言っておきながら、すぐ見つかるだろうなんてどこか楽観的な所が見られる。
少し矛盾していないだろうか……?
しかし勇者一行のメンバーであるスクトの言うことに間違いはないのだろうと、スリーチェはそれ以上何か思いはしなかった。
「それにしてもプランティはまだお花を摘んでいるのでしょうか?
もうだいぶ時間が経ったかと思いますけど……」
そんなことを呟きながらふと空を見上げると―――
「ん……?
なんでしょうか……
あれは……狼煙………?」
1本、2本、3本と………
平原のあちこちから狼煙が立ち上り始めた。
事前に聞いていた説明ではあの色は確か……
「緊急事態を知らせる狼煙……!?」
スリーチェがそんな焦りの声を上げたのとほぼ同時に―――
「「「ウォオオオオォォオオオン!!!」」」
「っ!!!あ、あれはっ!?」
平原から『ヘルハウンド』の群れがスリーチェの方へ向かって疾走してきた。
その数は、3体。
「なぜあんな魔物がここに!
いえ、そんなことより、プランティを……!
だめ!間に合わない!」
スリーチェは咄嗟に『レゾナンス・ベル』を手に取ったが、『ヘルハウンド』がここまで来るのにもうあと数秒と掛からないだろう……!
もはや駄目元で《ブロウアップ・ブラスト》を撃つしか……!
と、その時―――
「はああああああああ!!!!」
―――ゴキャゴキキィッ!!
「ギャィイイイイッッ!!」
「無事ですか!?お嬢様!!」
「プランティ!?」
突然横合いからスリーチェの前へと飛び出たプランティが『ヘルハウンド』3体を一瞬のうちに殴りつけた!
『ヘルハウンド』は後方に数十メートル程吹っ飛び、地面に叩きつけられるとそのまま動かなくなった……
「戻るのが遅れて申し訳ありませんでした!
お嬢様!早く『扉』へ!」
「ぷ、プランティ!一体何が!?」
「分かりません……!
突然、あの犬型の魔物が現れ、それだけでなく『ロック・リザード』の数も急増し……!
とにかく今は学園側へと非難することを最優先―――!?」
「「「ウォオオオオオ!!!」」」
――――どたっどたっどたっ……!!
「また……!
今度は『ロック・リザード』の群れまで……!
くっ……!お嬢様!一旦森の中に逃げますよ!」
「え、わっ!プランティっ!」
プランティは強引にスリーチェの手を引き、背後の森へと駆けだす。
そして、2人が森の奥深くへと姿を消すと―――
2人へ向かっていたはずの魔物の群れはピタリと動きを止めたのだった―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
それから少しの時間が経ち―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
森の前でまるで石のようにジッとしてた『ヘルハウンド』と『ロック・リザード』の群れはピクリと反応すると、森の反対側へと身体を向けた。
そこに現れたのは―――
―――ザッッ!!
「プランティさん!魔物の群れが!」
「くっ………!お嬢様ぁっ……!!」
フィルと―――スリーチェと共に森へ消えたはずのプランティであった。
「ま、待ってプランティ!」
スリーチェとプランティは陽の光が殆ど射し込まない深い森の中を走っていた。
「お嬢様!スクトさんはどこに!?」
「わ、分かりません……!
ですが、この森の中にいるはずです!
ついほんの先程までわたくしと共にいたのですけど……!」
スリーチェはここに至るまでのことを回想していた―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さあ!プランティ!貴女の力を見せて差し上げなさい!」
「あ、あのあの!わ、私は取り合えず1キロメートル程後方で待機しているので何かあったら呼んでください……!
何もなかったら呼ばなくていいです……!
いやむしろ私の事忘れて貰って結構です……!」
「あの正直邪魔なんですけど」
といった感じに、スリーチェとプランティは他チームを転々としていた。
そんな時―――
「やぁ、スリーチェさん!ちょっといいかい!」
「あ、スクトさん!」
スクトがスリーチェへと声をかけて来たのだ。
「君達が解散した後、僕はまた別のチームの様子を見てあげてたんだけどさ、どうも狙ってた『ロック・リザード』がここから北の方の森の中に隠れちゃったらしくて、探すのに手間がかかりそうなんだって。
君の『探知魔法』の力を貸して貰えないかな?」
「ええ!勿論構いませんわ!
わたくしの力の見せ所ですわね!
腕がなりますわー!」
「うう……また見ず知らずの人達と……」
スリーチェが腕をぐるぐると回し、プランティがこの日何度目になると知れない鬱屈とした台詞を吐き出すのだった。
そして、スクトはスリーチェに気付かれないようにスッとプランティの元へ近づいた。
「プランティさん……アリスリーチェさんから君だけに伝えなければならないことがあるらしいよ。
出来れば今すぐ会えないかって」
「えっ……?」
突然出て来たアリスリーチェの名に、プランティは困惑の声を上げた。
「あ、あの、それって……?」
「詳しいことは僕も分からないけど、何か重大な話があるらしい。
何でも―――」
スクトは「ふふふ~ん♪」と鼻歌を口ずさむスリーチェをチラリと見た。
「場合によっては、もう君がスリーチェさんのお付きではいられなくなるかもしれない……だとか」
「――――――っ!?」
プランティは思わず声を発しかけ、とっさに口に手を当てた。
自分がお嬢様のお付きでいられなくなる?
一体何故―――いや、心当たりはある。
自分はお嬢様のお父上の執務室に無断で侵入した上、機密文書にまで手を出した。
本来なら知られた時点で即刻追放、最悪処刑すらありえる重罪だ。
だが昨日はアリスリーチェ様は処罰する気は無いと……いや、それもアリスリーチェ様ご自身から聞いたことではない。
ただのスクトさんの推測だ。
やはりお許しにはなられていなかったのか……
しかし、『場合によっては』という言い方も気になる。
お付きでいられなくなることは確定してないのか……?
様々な思考が一瞬でプランティの頭を駆け巡った。
「それは……今すぐでなければならないのですか……?」
「これもよくは分からないが……
時間が経つと状況は不利になる、とのことらしい……」
事態は現在進行形で動いている、ということなのか……?
なんにせよ……活動が終わってからゆっくり話を聞く、という訳にはいかないようだった……
「………アリスリーチェ様は今どちらに……?」
「ここから南東方向にある大きな岩場の近くで待っている、だってさ」
今からスクトとスリーチェが向かう場所とは反対方向だった……
プランティは少しの逡巡の後、言葉を発した。
「お嬢様……その、ちょっとよろしいですか……?」
「どうしましたの、プランティ?」
スリーチェは振り返り、プランティを見た。
「えっと、その、ちょっと私、お時間を頂ければと………」
「?
どうかされたのですか?」
「いえ、その、えっと、その……」
「………プランティ、貴女……?」
まずい……!
何か察せられてしまったか……!?
「もよおしてしまったのですね!?」
「あ、はい、そうです」
勘の悪い主で助かった。
「もう!そういうことはもっと早く言ってくれないと駄目ですわよ?」
「あ、ええ、はい……
あの、それでは少し離れますが……
何かあったらすぐに『レゾナンス・ベル』でお呼びくださいね……?」
「はいはい!お花摘みの最中に呼ばれたくなければ早く済ませてらっしゃい!」
そんな主のノンデリ発言を背に受けつつ、プランティはスクトから聞いた場所へと駆け出していった。
この時……プランティはもう解決したと思い込んでいた問題が再燃したことで冷静さを欠いていたのだろう。
なぜ、わざわざアリスリーチェがスクトにそんな話を伝言するように頼む必要があるのか、疑問に思わなかったのだから……
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それで、この森ですの?
『ロック・リザード』が隠れた森というのは」
「ああ、そうなんだけど………
あの子達はどこ行っちゃたのかな……」
スクトに連れてこられた森は草木が鬱蒼と生い茂っており、昼間でありながら中は薄暗い様相だった。
スクトが言っていたチームはその森の前で待機しているという話だったのだが、そこには人一人見当たらなかった。
「もしかして……『ロック・リザード』を探しに森の中に入っちゃったのかな……?
ちょっとマズいな……
こういう場所で不意の遭遇戦になったりでもしたら……
下手したら大事故を引き起こしかねないぞ……
調査隊員は止めなかったのか……?」
スクトは顎に手を当て、しばし考え込んだ。
「しょうがない、ちょっと探してくるからここで待っててくれ」
「あ、でしたらわたくしの探知魔法で―――」
「ああ、大丈夫大丈夫。
奥までは行ってないだろうし、呼びかければすぐに見つかると思うよ。
その魔法って結構魔力使うだろう?
無駄使いさせるのも悪いしね。
それじゃあ、行ってくるよ」
「あっ、スクトさん!」
スクトは少し強引に会話を切り上げて森の中へと入ってしまった。
スリーチェはスクトの様子にどうも違和感があった。
下手したら大事故を引き起こしかねないなどと言っておきながら、すぐ見つかるだろうなんてどこか楽観的な所が見られる。
少し矛盾していないだろうか……?
しかし勇者一行のメンバーであるスクトの言うことに間違いはないのだろうと、スリーチェはそれ以上何か思いはしなかった。
「それにしてもプランティはまだお花を摘んでいるのでしょうか?
もうだいぶ時間が経ったかと思いますけど……」
そんなことを呟きながらふと空を見上げると―――
「ん……?
なんでしょうか……
あれは……狼煙………?」
1本、2本、3本と………
平原のあちこちから狼煙が立ち上り始めた。
事前に聞いていた説明ではあの色は確か……
「緊急事態を知らせる狼煙……!?」
スリーチェがそんな焦りの声を上げたのとほぼ同時に―――
「「「ウォオオオオォォオオオン!!!」」」
「っ!!!あ、あれはっ!?」
平原から『ヘルハウンド』の群れがスリーチェの方へ向かって疾走してきた。
その数は、3体。
「なぜあんな魔物がここに!
いえ、そんなことより、プランティを……!
だめ!間に合わない!」
スリーチェは咄嗟に『レゾナンス・ベル』を手に取ったが、『ヘルハウンド』がここまで来るのにもうあと数秒と掛からないだろう……!
もはや駄目元で《ブロウアップ・ブラスト》を撃つしか……!
と、その時―――
「はああああああああ!!!!」
―――ゴキャゴキキィッ!!
「ギャィイイイイッッ!!」
「無事ですか!?お嬢様!!」
「プランティ!?」
突然横合いからスリーチェの前へと飛び出たプランティが『ヘルハウンド』3体を一瞬のうちに殴りつけた!
『ヘルハウンド』は後方に数十メートル程吹っ飛び、地面に叩きつけられるとそのまま動かなくなった……
「戻るのが遅れて申し訳ありませんでした!
お嬢様!早く『扉』へ!」
「ぷ、プランティ!一体何が!?」
「分かりません……!
突然、あの犬型の魔物が現れ、それだけでなく『ロック・リザード』の数も急増し……!
とにかく今は学園側へと非難することを最優先―――!?」
「「「ウォオオオオオ!!!」」」
――――どたっどたっどたっ……!!
「また……!
今度は『ロック・リザード』の群れまで……!
くっ……!お嬢様!一旦森の中に逃げますよ!」
「え、わっ!プランティっ!」
プランティは強引にスリーチェの手を引き、背後の森へと駆けだす。
そして、2人が森の奥深くへと姿を消すと―――
2人へ向かっていたはずの魔物の群れはピタリと動きを止めたのだった―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
それから少しの時間が経ち―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
森の前でまるで石のようにジッとしてた『ヘルハウンド』と『ロック・リザード』の群れはピクリと反応すると、森の反対側へと身体を向けた。
そこに現れたのは―――
―――ザッッ!!
「プランティさん!魔物の群れが!」
「くっ………!お嬢様ぁっ……!!」
フィルと―――スリーチェと共に森へ消えたはずのプランティであった。
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