勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

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第4章

第6話 アルミナとサファイア

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「いよーう!!
 ウィデーレ!!スクト!!
 実に5年ぶりだね!!」

アルミナは2人がいる山の頂上へと移動し、元気よく挨拶を交わした。

「うん、久しぶりアルミナ。
 相変わらず元気そうで安心したよ」
「そりゃもう私は毎日が元気ハツラツ!ファイト一発さ!
 何だったら翼をさずかっちゃってるぞ!!」
「相変わらず意味不明で安心と不安がごっちゃになります」

―――ドォン!!!

「うぉーっと!!」
「水晶ゴーレムが!」

アルミナとの衝突で吹き飛ばされたゴーレムが立ち上がり、再び歩を進めて来ていた。

「残念だけどのんびりお話している暇はないみたい。
 ねえ、アルミナ。
 アレ倒せそう?」
「多分確実に倒せるかもしれない!」
「いやどっち!?」
「分からん!!
 でもやれるだけのことをやってやるさ!!
 では、行ってくる!!」

アルミナは水晶ゴーレムへ身体を向け、叫んだ。

「《ヴァリアブル・コランダム-サファイア》!」

その『魔法名』と共に、彼女の全身が光に包まれたのち、髪が青色へと変わり―――

―――ボッッッッ!!!

彼女はその場から―――

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

―――ズゥン!ズゥン!

水晶ゴーレムは先程の衝撃などまるでなかったかのように、変わらず歩を進めていく。
そんなゴーレムの正面に――

―――ドッッッ!!

青い髪の人間……アルミナが舞い降りた。

もしその場に普通の人間がいれば、彼女が突然その場に現れたようにしか見えなかったことだろう。
ゴーレムはその人間の登場になにも怯むことはなく、拳を振り上げた。
目の前に障害が現れたら、ただ排除する。
そんな機能的な動きで、アルミナを狙った。

その水晶の拳が振り下ろされる。
だが、アルミナはその場から動こうとしなかった。

拳がアルミナの頭上、ほんの数センチ上にまで迫る。
もはや、どう考えても巨大な拳に潰されるしかない、そんな状態から――

アルミナの姿が、突如消える。

―――ドオッッッ!!

確かに標的を捉えたはずの拳が、何もない地面を叩いた。

そして、目の前から消えた標的を探す為、ゴーレムが周囲を索敵する。

「おい」

突如、人間の声が響いた。
ゴーレムの頭上からだ。

アルミナは、ゴーレムの頭の上に立っていた。
ゴーレムの拳を避けた後、目にもとまらぬ速さで10メートルのゴーレムの身体を駆け上ったのだ。

ゴーレムは即座に両手で頭上の標的を掴みにいった。
だが、またしてもそれは空振りに終わる。
先程と同じ様に掴む直前に標的が消えたのだ。

「こっちだ」

今度はゴーレムの背後にいる。
もはや瞬間移動と言ってもいい程の超スピードだった。

「さて、では私からも行くぞ!!!
 これよりお前が囚われるは!!」

アルミナは両腰に差している二対の剣を両手で抜いた。

そして―――

「《スラッシュ・スペース》!!!」


――ガキキキキィィィイィィ!!!


10メートルの巨人の姿が、剣の嵐の中に飲み込まれた。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「あ、相変わらず凄い………」
「ま、単に相手の周りで滅多矢鱈に斬りまくってるだけなんだけどね」

その光景にスクトは思わず息をのんでしまっていた。
対してウィデーレは実に平然としている。

「《ヴァリアブル・コランダム》……
 言ってしまえば、身体強化魔法なわけなんだけど……
 あのコはその上昇幅が余りにも異常なんだよね」
「未だに信じられません……
 あれだけの凄まじい魔法を使っていながら……
 あの人の『魔力値』は5000だなんて……」

『魔力値』5000。
一般人の平均『魔力値』の半分しかない数値である。

「まあ、あのコにとって『魔力値』なんてあってないようなものだからね。
 なにせ―――」

ウィデーレは羨望の眼差しと共に、その戦場を見つめる。

「あのコ、いくら魔法を使っても、魔力が減らないんだもん」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「むっ!?」

ゴーレムをその凄まじい『剣戟の空間』に閉じ込めていたアルミナは、怪訝な声を発した。

ゴーレムがアルミナを捉えることはない。
だがしかし、アルミナもまたゴーレムに致命傷を与えることが出来ずにいたのだ。

もはや万を超える回数は斬り付けているはずなのだが、一向にゴーレムにダメージはない。
それがただの岩石であればとっくに削りきっている、いやそれ以前に一刀のもとで両断しているはずだった。

そう、このゴーレムはとにかく『硬い』

これだけの相手に何度斬りつけても刃こぼれをおこさないアルミナの剣も流石は国王より譲り受けた極上品と言えるが、これでは永遠に決着はつかない。

いや、それだけではなかった。

「んっ!?こいつ!!」

ゴーレムはアルミナを『無視』し始めたのだ。
この標的を捉えることは不可能。
しかしこの標的もまた己を倒すことは不可能。

ならば無理に相手をする必要などない、という判断を下したのだろうか。
未だ凄まじい剣戟とその反響音の嵐の中で、ゴーレムはゆっくりと再び歩を進みだしたのだった。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「ふーん、あのコの《スラッシュ・スペース》で削り切れない硬度なんてねぇ。
 確かに討伐隊の報告では10人がかりで使用する破砕槌でも傷一つ負わなかった、ってのがあったけど……
 正直、予想以上だ」
「あの技で複数体のゴーレムをまとめて倒したことだってあるのに……!」

ウィデーレは冷静だったがスクトは明らかに焦りを滲ませていた。
スクトが今まで見て来たアルミナの戦いはその全てが彼女の一方的な攻勢で終わっていた。
彼女が敵を仕留めきれない光景など見たことがなかったのだ。

「こうなると、今回はあのコも『アレ』を使うしかないか」
「『アレ』……?」

「うん、スクトが仲間になってからは『スピードフォーム』だけで十分だったから、見るのは初めてだっけ。
 あの魔法のもう一つの力………『パワーフォーム』は」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

剣戟を止め、アルミナは再びゴーレムの正面へと立っていた。
ゴーレムはアルミナに対応するのは時間の無駄だと学習したのか、立ち止まらずにいる。

「ふんっ!上等だ!!
 久しぶりに使ってやろう!!」

アルミナは改めて剣を構え、叫ぶ。

「《ヴァリアブル・コランダム-ルビー》!」

そして、先程と同じく、全身が光に包まれ、それが晴れた時―――
彼女の髪は、燃え上がるような赤へと変貌していた。

「では!再び行くぞ!!」

アルミナが両腕を交差させ、突撃の構えを見せる。

ゴーレムはそれに構うことなく、そのまま歩みを進めようとした。
ゴーレムからしてみればどうせこの標的の攻撃は通じないのだから、構う必要など―――


「はあああああ!!!!」


――――ビキィィィィン!!!!


瞬間。
ゴーレムの身体が弾き飛ばされた。
彼女が最初に突撃してきたときより、はるか後方に。

そして、弾き飛ばされたゴーレムがゆっくりと立ち上がると―――

その胸にはX字の傷が深々と刻まれていた―――
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