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第4章
第5話 勇者一行とゴーレム
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《 大陸西部・奥地 》
「相変わらず、ここは殺風景だなぁ」
ヴァール大陸南西部奥地。
そこは草木が全く見当たらない山岳地帯。
おおよそ人が住むには適さないであろうその地の一際高い山の頂上に1人の女性の姿があった。
身長は150センチほど、清流を思わせる水色のロングヘアーが強めの風になびいている。
左目には眼帯をしており、右目は燃えるような紅色であった。
彼女の名はウィデーレ=ヘイム。
かの勇者一行のメンバーの1人であった。
「ウィデーレさん!」
そんな彼女の後ろから声がかけられる。
ウィデーレがその方向へと振り向くと、そこには男の姿があった。
身長170センチ程の顔つきにはまだどこか幼さの残る、少年と青年の中間のような印象を受けるグレーの髪の男はウィデーレの姿を見るととても嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「スクト!大きくなったね!」
「そりゃ、あれから5年も経ってますから!
もうお酒も飲めるようになりましたよ!」
スクト=オルモースト。
彼もまた勇者一行のメンバーであった。
その中でも最年少、そして唯一の勇者達がこの大陸に来てから新しく仲間になった者でもある。
勇者達が『ヴァール大戦』に参戦し、戦い続ける中で彼と出会い、その非凡な才能を見込まれたのだ。
そして、彼の才覚を見出したのは他ならぬウィデーレなのであった。
「ウィデーレさん、今は調査隊の隊長をしているんでしたよね?
100を超える隊を束ね、未だ危険が蔓延る魔物の生存圏に挑み、人類の脅威を未然に防ぐ……
いやぁー!全く憧れます!」
「まあ正直言って、私の趣味半分だけどね。
知らない生き物や植物の生態調査がメインで、本来の仕事はついでみたいなものかな。
そういう貴方こそ、今や王直属の護衛隊隊長でしょ?
全く立派になっちゃって」
「いやぁ、えへへ……」
スクトが照れながら頭を搔いた。
「そっかぁ、時が経つのは早いなぁ」
そんなことを言いながら、彼女は左目の眼帯をずらし、右目へと移した。
右目の代わりに開かれたその左目は、澄んだ藍色をしていた。
「わ、やっぱり『魔力値』もかなり上がっているね。
最後に見た時は20000ぐらいだったけど、今のこのモヤの大きさ……30000近くにまでなってる」
「あ、やっぱりわかりますか!相変わらず凄いですね!
ただ見るだけであらゆる解析魔法の代わりが果たせてしまうというその瞳は!」
ウィデーレのエクシードスキル、【アナライズ・レフトアイ】はスクトの言う通り、見ただけで相手の『魔力値』や魔力の動きを把握できるものであった。
コーディスが語っていた、かつてフィルの故郷で強大な『魔力値』を持つ者がいる、と言ってきたのも彼女だったのだ。
「それ程便利な代物でもないけどね。
色々見えすぎちゃって普段使いには不便だから、こうして隠しておかなくちゃだし」
そう言って、ウィデーレは眼帯を左目へと戻し、再び紅色の瞳を開かせた。
「貴方こそ、本来人間の『魔力値』とは生まれた時から総量が決まっていて、決して増えることはないと言われているのに、その法則を打ち破った成長する『魔力値』……【グロウアップ・ヴァリュー】
私からしてみればそっちの方がよっぽど凄いよ」
「いやいや!そんなこと滅相も!」
「謙遜しないの。
5年で10000も増えるんだから後10年もすれば、50000の大台突破も夢ではないんだから」
「50000……そういえば、コーディスさんが設立に尽力したっていう、例の学園でなんか『魔力値』50000のとんでもない入学者が現れたって話でしたよね……
しかも、それは人間ではなく、『魔王』を名乗る魔物だって言われてるとか……
はは、流石にそれは何かの間違い―――」
「あ、それ本当。
私も前に確認したよ」
「…………………………」
当たり前のようにそんなことをのたまうウィデーレにスクトは沈黙してしまった……
ちなみにこれは全くの余談だが、スクトは勇者一行の中で最も常識人と言われており、どうかコーディスと代わって欲しいという強い要望が学園関係者(特にアリエス)から上がっている程である。
「それにしてもコーディスか……また私達勇者一行が全員揃うのはいつになるのかな」
「揃ったら揃ったでまた僕がツッコミに回る日々が始まりそうで怖いんですけど―――」
―――ズゥン……!
「「――!!」」
突然、2人の耳に巨大な足音が聞こえて来た。
―――ズゥン……!ズゥン……!
「どうやら、思い出話はここまでのようだね」
「ええ……」
その足音がする方向へ、2人が目を向ける。
そこは幅が20メートル程ある峡谷。
足音は数キロ先の崖の向こう側から響いてきていた。
―――ズゥン……!ズゥン……!
そして―――
崖の陰から、『ソレ』は姿を現した。
「何なんでしょうか……アレは」
「まぁ……ゴーレム、としか言えないかな」
そう、2人が見つめている先にある『ソレ』は、身長10メートルほどの巨人……ゴーレムであった。
だが―――
「あの身体……どう見ても普通のゴーレムとは違いますよね」
「水晶ゴーレム……とでも呼ぶべきかな。
調査隊の報告通りだね」
ウィデーレが言った通り、そのゴーレムの身体は美しい水晶によって出来ていたのだ。
その巨大な半透明の人型は、見る人が見れば芸術品として評価されてもおかしくはなかった。
「僕、あんなの見たことありませんよ……
ゴーレムって普通、土や岩で出来ているものですよね……?」
「一応、鉱山地帯なんかでは、鉱石を含んだゴーレムも出てくるけど、アレがそう言ったモノと同一とは考えにくいね」
そんな会話を交わしている内に、水晶ゴーレムはどんどん歩みを進めていく。
「あれ、やっぱりどう見てもこっち側……大陸東側に向かって進んでますよね」
「昼夜問わずあのペースで進んでくるとなると……あと1ヵ月もしない内に人類生存圏に到達しちゃうかな」
つまり、今この場で何とかしなければならないということなのだが……
スクトは懐から時計を取り出した。
「……『あの人』はまだ来ていないんですか?
もうすぐ、事前に聞いてた時間になっちゃいますよ?」
「んー、まぁ大丈夫だよ。
あのコなら時間までには間に合うから」
「いやでも、もう数分もない……っていうか、もう後数秒で時間に!」
「ほら来た」
「えっ?」
ウィデーレが指差した方向へ、スクトが振り向くと―――
「遅刻遅刻ゥーーーーー!!!!」
―――ボッッッッッ!!!!!
『何か』が、2人の間を通り過ぎていった―――
そして―――
―――ゴギャッッッッ!!!!
凄まじい衝突音が、彼方から……というか、水晶ゴーレムの方から聞こえて来た。
―――ゴゴゴゴゴゴォォォ!!!!
その衝撃により、水晶ゴーレムが後方へと弾き飛ばされる。
弾き飛ばされる前までゴーレムが立っていた場所には―――
「いったーい!
もう!どこ見て歩いてるのよー!」
なんか、食パンを咥えながらしりもちをついている、この大陸の英雄がいた。
「「…………………………」」
そして、それをウィデーレとスクトの2人はノーリアクションで見ていた……
しばらくの沈黙の後……
その英雄は食パンを口の中に押し込み、パンパンと土を叩きながら立ち上がった。
「という訳で!!
勇者アルミナ!!
古の少女漫画スタイルで見参!!!」
「相変わらずだなぁ、アルミナは」
「ええ、ホントに。
相変わらず過ぎてちょっと頭痛くなってきました」
「相変わらず、ここは殺風景だなぁ」
ヴァール大陸南西部奥地。
そこは草木が全く見当たらない山岳地帯。
おおよそ人が住むには適さないであろうその地の一際高い山の頂上に1人の女性の姿があった。
身長は150センチほど、清流を思わせる水色のロングヘアーが強めの風になびいている。
左目には眼帯をしており、右目は燃えるような紅色であった。
彼女の名はウィデーレ=ヘイム。
かの勇者一行のメンバーの1人であった。
「ウィデーレさん!」
そんな彼女の後ろから声がかけられる。
ウィデーレがその方向へと振り向くと、そこには男の姿があった。
身長170センチ程の顔つきにはまだどこか幼さの残る、少年と青年の中間のような印象を受けるグレーの髪の男はウィデーレの姿を見るととても嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「スクト!大きくなったね!」
「そりゃ、あれから5年も経ってますから!
もうお酒も飲めるようになりましたよ!」
スクト=オルモースト。
彼もまた勇者一行のメンバーであった。
その中でも最年少、そして唯一の勇者達がこの大陸に来てから新しく仲間になった者でもある。
勇者達が『ヴァール大戦』に参戦し、戦い続ける中で彼と出会い、その非凡な才能を見込まれたのだ。
そして、彼の才覚を見出したのは他ならぬウィデーレなのであった。
「ウィデーレさん、今は調査隊の隊長をしているんでしたよね?
100を超える隊を束ね、未だ危険が蔓延る魔物の生存圏に挑み、人類の脅威を未然に防ぐ……
いやぁー!全く憧れます!」
「まあ正直言って、私の趣味半分だけどね。
知らない生き物や植物の生態調査がメインで、本来の仕事はついでみたいなものかな。
そういう貴方こそ、今や王直属の護衛隊隊長でしょ?
全く立派になっちゃって」
「いやぁ、えへへ……」
スクトが照れながら頭を搔いた。
「そっかぁ、時が経つのは早いなぁ」
そんなことを言いながら、彼女は左目の眼帯をずらし、右目へと移した。
右目の代わりに開かれたその左目は、澄んだ藍色をしていた。
「わ、やっぱり『魔力値』もかなり上がっているね。
最後に見た時は20000ぐらいだったけど、今のこのモヤの大きさ……30000近くにまでなってる」
「あ、やっぱりわかりますか!相変わらず凄いですね!
ただ見るだけであらゆる解析魔法の代わりが果たせてしまうというその瞳は!」
ウィデーレのエクシードスキル、【アナライズ・レフトアイ】はスクトの言う通り、見ただけで相手の『魔力値』や魔力の動きを把握できるものであった。
コーディスが語っていた、かつてフィルの故郷で強大な『魔力値』を持つ者がいる、と言ってきたのも彼女だったのだ。
「それ程便利な代物でもないけどね。
色々見えすぎちゃって普段使いには不便だから、こうして隠しておかなくちゃだし」
そう言って、ウィデーレは眼帯を左目へと戻し、再び紅色の瞳を開かせた。
「貴方こそ、本来人間の『魔力値』とは生まれた時から総量が決まっていて、決して増えることはないと言われているのに、その法則を打ち破った成長する『魔力値』……【グロウアップ・ヴァリュー】
私からしてみればそっちの方がよっぽど凄いよ」
「いやいや!そんなこと滅相も!」
「謙遜しないの。
5年で10000も増えるんだから後10年もすれば、50000の大台突破も夢ではないんだから」
「50000……そういえば、コーディスさんが設立に尽力したっていう、例の学園でなんか『魔力値』50000のとんでもない入学者が現れたって話でしたよね……
しかも、それは人間ではなく、『魔王』を名乗る魔物だって言われてるとか……
はは、流石にそれは何かの間違い―――」
「あ、それ本当。
私も前に確認したよ」
「…………………………」
当たり前のようにそんなことをのたまうウィデーレにスクトは沈黙してしまった……
ちなみにこれは全くの余談だが、スクトは勇者一行の中で最も常識人と言われており、どうかコーディスと代わって欲しいという強い要望が学園関係者(特にアリエス)から上がっている程である。
「それにしてもコーディスか……また私達勇者一行が全員揃うのはいつになるのかな」
「揃ったら揃ったでまた僕がツッコミに回る日々が始まりそうで怖いんですけど―――」
―――ズゥン……!
「「――!!」」
突然、2人の耳に巨大な足音が聞こえて来た。
―――ズゥン……!ズゥン……!
「どうやら、思い出話はここまでのようだね」
「ええ……」
その足音がする方向へ、2人が目を向ける。
そこは幅が20メートル程ある峡谷。
足音は数キロ先の崖の向こう側から響いてきていた。
―――ズゥン……!ズゥン……!
そして―――
崖の陰から、『ソレ』は姿を現した。
「何なんでしょうか……アレは」
「まぁ……ゴーレム、としか言えないかな」
そう、2人が見つめている先にある『ソレ』は、身長10メートルほどの巨人……ゴーレムであった。
だが―――
「あの身体……どう見ても普通のゴーレムとは違いますよね」
「水晶ゴーレム……とでも呼ぶべきかな。
調査隊の報告通りだね」
ウィデーレが言った通り、そのゴーレムの身体は美しい水晶によって出来ていたのだ。
その巨大な半透明の人型は、見る人が見れば芸術品として評価されてもおかしくはなかった。
「僕、あんなの見たことありませんよ……
ゴーレムって普通、土や岩で出来ているものですよね……?」
「一応、鉱山地帯なんかでは、鉱石を含んだゴーレムも出てくるけど、アレがそう言ったモノと同一とは考えにくいね」
そんな会話を交わしている内に、水晶ゴーレムはどんどん歩みを進めていく。
「あれ、やっぱりどう見てもこっち側……大陸東側に向かって進んでますよね」
「昼夜問わずあのペースで進んでくるとなると……あと1ヵ月もしない内に人類生存圏に到達しちゃうかな」
つまり、今この場で何とかしなければならないということなのだが……
スクトは懐から時計を取り出した。
「……『あの人』はまだ来ていないんですか?
もうすぐ、事前に聞いてた時間になっちゃいますよ?」
「んー、まぁ大丈夫だよ。
あのコなら時間までには間に合うから」
「いやでも、もう数分もない……っていうか、もう後数秒で時間に!」
「ほら来た」
「えっ?」
ウィデーレが指差した方向へ、スクトが振り向くと―――
「遅刻遅刻ゥーーーーー!!!!」
―――ボッッッッッ!!!!!
『何か』が、2人の間を通り過ぎていった―――
そして―――
―――ゴギャッッッッ!!!!
凄まじい衝突音が、彼方から……というか、水晶ゴーレムの方から聞こえて来た。
―――ゴゴゴゴゴゴォォォ!!!!
その衝撃により、水晶ゴーレムが後方へと弾き飛ばされる。
弾き飛ばされる前までゴーレムが立っていた場所には―――
「いったーい!
もう!どこ見て歩いてるのよー!」
なんか、食パンを咥えながらしりもちをついている、この大陸の英雄がいた。
「「…………………………」」
そして、それをウィデーレとスクトの2人はノーリアクションで見ていた……
しばらくの沈黙の後……
その英雄は食パンを口の中に押し込み、パンパンと土を叩きながら立ち上がった。
「という訳で!!
勇者アルミナ!!
古の少女漫画スタイルで見参!!!」
「相変わらずだなぁ、アルミナは」
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