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第4章
第4話 僕と君と貴女とアミューズメントパーク
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―――ギリギリギリギリ………
「………ねぇ、オニキスさん」
「………何かな、アリスリーチェ」
―――ギチギチギチギチ………
「アナタは何故、フィルさんの、腕を掴んで、わたくしと、反対方向に、行こうとしているのでしょうか……?」
「きゅる、それはね、キミが連れて行こうとしてるお店が、どうみてもさっきみたいに2人でしか座れないような小さいテーブルしか用意されてないからだよ……?」
―――メキメキメキメキ………
「オニキスさん、わたくしの、案内がなければ、この街を回るのは困難ですわよ……?
この場は、どうか、わたくしに、任せて、くださいな……!」
「いやいや、ボクもフィルも、初めて見るモノばかりだし、多分どのお店でも楽しいと思うよ?
だからさ、アリスリーチェも、そんな無理して、力を込めて、フィルを、連れて行こうと、しなくても、いいんだよ………!」
「あの、2人とも?
ちょっとさ、一旦話し合おう?
僕の肩からさ、結構凄い音聞こえ始めてるしね?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ね、アリーチェさん。
その、出来ればキュルルも一緒に楽しめるお店にしてくれませんか……?」
「きゅるっ!」
「……………………………………」
アリーチェさんは目を瞑りながら、黙りこくってしまっている。
「分かりましたわ……
まぁ、今日の所は我慢致しましょう」
溜息をつきながらアリーチェさんは諦観を滲ませた声を出した。
まだ少し不安だけどこれで何とか3人で仲違いせず過ごせそうだ。
それにしても……我慢する、なんて言うほどキュルルと一緒に過ごすの嫌なのかなぁ……
「次の機会があったら、今度こそ2人きりで……」
「?
何かいいましたか、アリーチェさん?」
「いえ!なんでもございませんわ!」
アリーチェさんがボソッと呟いた言葉はよく聞こえなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うわーーーーー!」
「ここって……!」
アリーチェさんに連れてこられた、ある施設。
僕とキュルルは、目の前に飛び込んできた光景に目を奪われた。
そこには物凄く広いフロアの中に様々なモノ……おそらくマジックアイテムの類だろうか……が置かれていたのだ。
大きなガラスケースの中に入っている人形を竜のかぎ爪を模したアームを操作してゲットする『飛竜キャッチャー』
空中に投影された光の印をリズムに合わせて次々に触れていく『シャイニー・ダンサー』
その他様々な娯楽用の装置が所狭しと並んでいたのだった。
「これ……アミューズメント施設……って言うんでしたっけ?」
「ここはわたくしのように特別な立場の者にしか知らされていない、シークレットアミューズメントパークですわ。
王都のマジックアイテム開発局と提携しており、常に世界最先端の娯楽用マジックアイテムを体験できますのよ」
そんなアリーチェさんの説明を聞きながら、僕らは施設内を歩き回る。
キュルルは目を輝かせながらどれから遊ぼうか悩んでいるようだった。
僕もまた様々な装置に目移りしていると……
あることに気付いた。
「あの、アリーチェさん……
これって、どれも1回遊ぶのに硬貨が必要になるようですけど……
しかもコレ、結構な額の……」
僕はたまに故郷の村の近くの街で買い物するぐらいしかお金というものを使ったことがないため、金銭感覚は一般の人よりも乏しい方だろう。
でも、そんな僕でもつい躊躇が生まれるような額であるということだ。
確か、この硬貨一枚で街での高級料理店1食分に相当するとか聞いたような……
「もう、それぐらいわたくしが支払いますわよ。
わたくしからお誘いしたのですからそれぐらいは当然ですわ」
「えっ!?でも……!」
「ただ施しと受けるのが心苦しいというのなら、この前わたくしをお助けいただいたお礼、ということでしたらいかがです?
当然、わたくしとしてはこれだけで恩を返せ終えたなどとは到底言えませんが」
「そ、それは……うーん……」
女性に奢ってもらう……どうにも恰好がつかないけど……
格好つけてどうにかなることでもないからなぁ……
「あの……キュルルの分まで払っていただくことになっちゃいますけど……その……」
「勿論承知の上ですわよ。
そもそも先程3人で楽しめる所としてここを紹介したのですよ?
それが嫌なら初めから来ておりませんわ」
ふーむ……ここまで言われちゃうとなぁ……
気を使う方がかえって失礼かも……
よし、ここは……!
「それじゃあ、思いっきりご厚意に甘えさせて頂きます!」
「ええ、どうかご遠慮なさらず、楽しんでくださいな!」
「きゅっるーーーー!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ドラゴン叩き』……?」
僕らの目の前にはドアの付いた巨大な箱があった。
「あの中に入ると前方、左右、天井に空いた穴から次々にドラゴンの頭が飛び出てきますの。
それをこの伝説の剣、ならぬ伝説のハンマーで叩いていく、というものですわ」
「きゅるー!面白そう!!
ボクやってみるーー!!」
「あっ、ちょっとキュルル!」
キュルルはドアの前に置いてあるハンマーを取るとドアを開けて箱の中へと駆けこんだ。
しょうがないので僕はドアの窓から中の様子を伺うことにした。
すると―――
『いらっしゃいませ。
難易度はいかがいたしますか?』
「きゅるっ?」
箱の中から音声案内が聞こえて来た。
「オニキスさん、そのまま口頭で難易度を指示すれば認識してくれますわよ」
「ふえー……どんな原理なんだろ……」
僕が感心していると……
「きゅるー!
じゃあ、とにかくいっちばん難しいのでー!!」
『当遊戯における最高難易度は『リアル絶体絶命級』となっておりますが………
本当によろしいでしょうか?』
ん……?
なんか凄い不穏な気配が………
「うんうん!いいから早く早くー!」
『かしこまりました。
なお、当店はこの遊戯における怪我及び死亡に関する一切の責任は負いませんので、ご了承願います』
いやあの、ちょっと待って。
『それでは―――――
スタート!』
―――ガシャン!!
早速、正面の壁の穴からドラゴンの頭が飛び出て来た。
そして―――
―――ゴォオオオオオオオ!!!!
「きゅるぅうううう!!??」
その口から火炎放射が―――
って、いやいやいやいやいやいやいやいや!!!
「最大難易度『リアル絶体絶命級』は実際のドラゴンを想定した挙動をしてきますの。
正面の壁のドラゴンは炎を、右側は氷を、左側は強酸を、天井は雷を吐き出してきますのよ」
「なんだこの危険な遊戯!!??
ってかなんでそんな冷静なのアリーチェさんんんんんんんんんんんんん!!!」
「きゅるぅああああああ!!!
上等だぁああああああああ!!!!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『パーフェクト!!!
素晴らしいです!!
アナタならばすぐにでも王都警備隊に入隊できるでしょう!!
ぜひ、警備局までご連絡を―――』
「きゅるーーーー!!!」
キュルルは誇らしげにハンマーを掲げながら箱から出て来た……
「ちっ……
この遊戯は実力判定器としても使われており、優れた成績の者には王都警備局へのスカウトがかかりますのよ」
「そんなもん置いておいて大丈夫なんですかここ!?
ってか今舌打ちしました!?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ダンス・ダンス・ファイターズ』……
手元の操作盤でキャラクターを操作、対戦させつつ、足元に配置された矢印型ボタンをリズムに合わせて踊るように踏んでいくという遊戯―――」
「いや無理でしょおおおおおおおおおおお!!!
なんで混ぜちゃったのコレぇえええええ!!!」
「きゅるー!!フィルー!ガンバレー!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ザ・ハウス・オブ・ザ・クライシス』!!
投影されたモンスターに向かって魔剣を振り、炎や雷を打ち込んでいく爽快感溢れるわたくしもとてもお気に入りの遊戯ですわ!
1回のプレイで周りが大惨事になってしまいますので中々遊べる機会がありませんのよ!!」
「薄々思ってましたけど、この施設なんか色々とダメではあああああああ!!??」
「きゅるー!フィルー!後ろからくるよーー!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぜー……はー………」
「きゅる……フィル、疲れちゃった?」
「うんまぁちょっと……色々と………」
いやまぁ、楽しいことは楽しいけどね……
なんか1回の遊戯でドッと体力や精神力を削られる気がする……
「では、そこのフードコートで少し休憩致しましょうか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
僕達はアリーチェさんに案内された施設内にあるレストランのような場所で軽い昼食に入っていた。
「もぐっ!はむっ!むぐっ!」
「遠慮なく大量の注文を頼みますのねこの『魔王』様は……」
「あはは………」
そんな中で、僕はふとあることを訪ねた。
「そういえば、アリーチェさん。
さっきの喫茶店での新聞で、少し気になる記事があったんですけど」
「なんですの?」
「大陸西部の奥地にて謎の魔物を確認、っていうのなんですけど……
そこで勇者様の名前があった気がしたんですが、何かご存じだったりします?
お店から出る直前に目に入ったので、詳しく読んでなかったんです」
「ああ、数日前に大陸西部調査隊から報告があったという、あの話ですわね。
なんでも、今まで見たこともない特殊な魔物が発見されたとのことですわ」
「特殊な魔物?」
「ええ、それで討伐隊が組まれたらしいのですが、討伐に失敗。
その結果を受けて初代勇者が出向くことになった、ということですわ」
「勇者様が直接出向くことになる程の魔物……!」
僕は思わずゴクリと唾を飲んだ。
それは一体、どんな魔物だというのだろう……
「………ねぇ、オニキスさん」
「………何かな、アリスリーチェ」
―――ギチギチギチギチ………
「アナタは何故、フィルさんの、腕を掴んで、わたくしと、反対方向に、行こうとしているのでしょうか……?」
「きゅる、それはね、キミが連れて行こうとしてるお店が、どうみてもさっきみたいに2人でしか座れないような小さいテーブルしか用意されてないからだよ……?」
―――メキメキメキメキ………
「オニキスさん、わたくしの、案内がなければ、この街を回るのは困難ですわよ……?
この場は、どうか、わたくしに、任せて、くださいな……!」
「いやいや、ボクもフィルも、初めて見るモノばかりだし、多分どのお店でも楽しいと思うよ?
だからさ、アリスリーチェも、そんな無理して、力を込めて、フィルを、連れて行こうと、しなくても、いいんだよ………!」
「あの、2人とも?
ちょっとさ、一旦話し合おう?
僕の肩からさ、結構凄い音聞こえ始めてるしね?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ね、アリーチェさん。
その、出来ればキュルルも一緒に楽しめるお店にしてくれませんか……?」
「きゅるっ!」
「……………………………………」
アリーチェさんは目を瞑りながら、黙りこくってしまっている。
「分かりましたわ……
まぁ、今日の所は我慢致しましょう」
溜息をつきながらアリーチェさんは諦観を滲ませた声を出した。
まだ少し不安だけどこれで何とか3人で仲違いせず過ごせそうだ。
それにしても……我慢する、なんて言うほどキュルルと一緒に過ごすの嫌なのかなぁ……
「次の機会があったら、今度こそ2人きりで……」
「?
何かいいましたか、アリーチェさん?」
「いえ!なんでもございませんわ!」
アリーチェさんがボソッと呟いた言葉はよく聞こえなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「うわーーーーー!」
「ここって……!」
アリーチェさんに連れてこられた、ある施設。
僕とキュルルは、目の前に飛び込んできた光景に目を奪われた。
そこには物凄く広いフロアの中に様々なモノ……おそらくマジックアイテムの類だろうか……が置かれていたのだ。
大きなガラスケースの中に入っている人形を竜のかぎ爪を模したアームを操作してゲットする『飛竜キャッチャー』
空中に投影された光の印をリズムに合わせて次々に触れていく『シャイニー・ダンサー』
その他様々な娯楽用の装置が所狭しと並んでいたのだった。
「これ……アミューズメント施設……って言うんでしたっけ?」
「ここはわたくしのように特別な立場の者にしか知らされていない、シークレットアミューズメントパークですわ。
王都のマジックアイテム開発局と提携しており、常に世界最先端の娯楽用マジックアイテムを体験できますのよ」
そんなアリーチェさんの説明を聞きながら、僕らは施設内を歩き回る。
キュルルは目を輝かせながらどれから遊ぼうか悩んでいるようだった。
僕もまた様々な装置に目移りしていると……
あることに気付いた。
「あの、アリーチェさん……
これって、どれも1回遊ぶのに硬貨が必要になるようですけど……
しかもコレ、結構な額の……」
僕はたまに故郷の村の近くの街で買い物するぐらいしかお金というものを使ったことがないため、金銭感覚は一般の人よりも乏しい方だろう。
でも、そんな僕でもつい躊躇が生まれるような額であるということだ。
確か、この硬貨一枚で街での高級料理店1食分に相当するとか聞いたような……
「もう、それぐらいわたくしが支払いますわよ。
わたくしからお誘いしたのですからそれぐらいは当然ですわ」
「えっ!?でも……!」
「ただ施しと受けるのが心苦しいというのなら、この前わたくしをお助けいただいたお礼、ということでしたらいかがです?
当然、わたくしとしてはこれだけで恩を返せ終えたなどとは到底言えませんが」
「そ、それは……うーん……」
女性に奢ってもらう……どうにも恰好がつかないけど……
格好つけてどうにかなることでもないからなぁ……
「あの……キュルルの分まで払っていただくことになっちゃいますけど……その……」
「勿論承知の上ですわよ。
そもそも先程3人で楽しめる所としてここを紹介したのですよ?
それが嫌なら初めから来ておりませんわ」
ふーむ……ここまで言われちゃうとなぁ……
気を使う方がかえって失礼かも……
よし、ここは……!
「それじゃあ、思いっきりご厚意に甘えさせて頂きます!」
「ええ、どうかご遠慮なさらず、楽しんでくださいな!」
「きゅっるーーーー!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ドラゴン叩き』……?」
僕らの目の前にはドアの付いた巨大な箱があった。
「あの中に入ると前方、左右、天井に空いた穴から次々にドラゴンの頭が飛び出てきますの。
それをこの伝説の剣、ならぬ伝説のハンマーで叩いていく、というものですわ」
「きゅるー!面白そう!!
ボクやってみるーー!!」
「あっ、ちょっとキュルル!」
キュルルはドアの前に置いてあるハンマーを取るとドアを開けて箱の中へと駆けこんだ。
しょうがないので僕はドアの窓から中の様子を伺うことにした。
すると―――
『いらっしゃいませ。
難易度はいかがいたしますか?』
「きゅるっ?」
箱の中から音声案内が聞こえて来た。
「オニキスさん、そのまま口頭で難易度を指示すれば認識してくれますわよ」
「ふえー……どんな原理なんだろ……」
僕が感心していると……
「きゅるー!
じゃあ、とにかくいっちばん難しいのでー!!」
『当遊戯における最高難易度は『リアル絶体絶命級』となっておりますが………
本当によろしいでしょうか?』
ん……?
なんか凄い不穏な気配が………
「うんうん!いいから早く早くー!」
『かしこまりました。
なお、当店はこの遊戯における怪我及び死亡に関する一切の責任は負いませんので、ご了承願います』
いやあの、ちょっと待って。
『それでは―――――
スタート!』
―――ガシャン!!
早速、正面の壁の穴からドラゴンの頭が飛び出て来た。
そして―――
―――ゴォオオオオオオオ!!!!
「きゅるぅうううう!!??」
その口から火炎放射が―――
って、いやいやいやいやいやいやいやいや!!!
「最大難易度『リアル絶体絶命級』は実際のドラゴンを想定した挙動をしてきますの。
正面の壁のドラゴンは炎を、右側は氷を、左側は強酸を、天井は雷を吐き出してきますのよ」
「なんだこの危険な遊戯!!??
ってかなんでそんな冷静なのアリーチェさんんんんんんんんんんんんん!!!」
「きゅるぅああああああ!!!
上等だぁああああああああ!!!!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『パーフェクト!!!
素晴らしいです!!
アナタならばすぐにでも王都警備隊に入隊できるでしょう!!
ぜひ、警備局までご連絡を―――』
「きゅるーーーー!!!」
キュルルは誇らしげにハンマーを掲げながら箱から出て来た……
「ちっ……
この遊戯は実力判定器としても使われており、優れた成績の者には王都警備局へのスカウトがかかりますのよ」
「そんなもん置いておいて大丈夫なんですかここ!?
ってか今舌打ちしました!?」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ダンス・ダンス・ファイターズ』……
手元の操作盤でキャラクターを操作、対戦させつつ、足元に配置された矢印型ボタンをリズムに合わせて踊るように踏んでいくという遊戯―――」
「いや無理でしょおおおおおおおおおおお!!!
なんで混ぜちゃったのコレぇえええええ!!!」
「きゅるー!!フィルー!ガンバレー!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「『ザ・ハウス・オブ・ザ・クライシス』!!
投影されたモンスターに向かって魔剣を振り、炎や雷を打ち込んでいく爽快感溢れるわたくしもとてもお気に入りの遊戯ですわ!
1回のプレイで周りが大惨事になってしまいますので中々遊べる機会がありませんのよ!!」
「薄々思ってましたけど、この施設なんか色々とダメではあああああああ!!??」
「きゅるー!フィルー!後ろからくるよーー!!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ぜー……はー………」
「きゅる……フィル、疲れちゃった?」
「うんまぁちょっと……色々と………」
いやまぁ、楽しいことは楽しいけどね……
なんか1回の遊戯でドッと体力や精神力を削られる気がする……
「では、そこのフードコートで少し休憩致しましょうか」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
僕達はアリーチェさんに案内された施設内にあるレストランのような場所で軽い昼食に入っていた。
「もぐっ!はむっ!むぐっ!」
「遠慮なく大量の注文を頼みますのねこの『魔王』様は……」
「あはは………」
そんな中で、僕はふとあることを訪ねた。
「そういえば、アリーチェさん。
さっきの喫茶店での新聞で、少し気になる記事があったんですけど」
「なんですの?」
「大陸西部の奥地にて謎の魔物を確認、っていうのなんですけど……
そこで勇者様の名前があった気がしたんですが、何かご存じだったりします?
お店から出る直前に目に入ったので、詳しく読んでなかったんです」
「ああ、数日前に大陸西部調査隊から報告があったという、あの話ですわね。
なんでも、今まで見たこともない特殊な魔物が発見されたとのことですわ」
「特殊な魔物?」
「ええ、それで討伐隊が組まれたらしいのですが、討伐に失敗。
その結果を受けて初代勇者が出向くことになった、ということですわ」
「勇者様が直接出向くことになる程の魔物……!」
僕は思わずゴクリと唾を飲んだ。
それは一体、どんな魔物だというのだろう……
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