勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

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第4章

第1話 僕と休日の予定

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勇者学園3日目。
サポート能力測定用模擬戦。

生徒2人がペアとなり、一方がメインで戦闘を行う役、一方は武器やマジックアイテムでサポートを行う役となる。
戦闘役は一切の武器を持たず、魔法も使えない。
サポート役は事前に武器やマジックアイテムの選定を行い、様々な状況に適した行動をこなせるかを見る、という形式の模擬戦である。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

サポート役:フィル=フィール
戦闘役:ヴィガー=マックス
VS
サポート役:ミルキィ=バーニング
戦闘役:カキョウ=ガーデニング

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「おいフィルゥウウウウ!!!
 なんだこの変な時計はぁあああああああ!!」
「これ、凄いんですよ!
 複数のタイマーで同時に時間を測ることが出来るんです!
 焼き時間、茹で時間、蒸し時間、繊細な時間調整が必要なモノもこれなら圧倒的に効率よく――」
「いや何のサポートをするつもりなんだよテメェは!!!」

「魔法が使えずとも、我が秘技『瞬身呼吸法』を用いれば……!
 スゥー………ハァッ!!!」
―――ヒュンッッ!!

―――ドゴォ!!
「グボハぁっっっ!!!」
「ヴィ、ヴィガーさぁぁん!!!」

「この通り、速攻の決着は十分可能なのです!!!」
「へぇ、すげぇなぁ嬢ちゃん。
 ところでコレなんの為の模擬戦だっけ?」

「フィル=フィール、ミルキィ=バーニング、
 共にサポート能力は低めである、と………」
「理不尽過ぎるだろぉおおおおおおお!?」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

勇者学園4日目。
指揮能力測定用模擬戦。

生徒で5人のグループを作り、1人を指揮官とする。
決められたエリア内でグループ毎に陣地を決め、敵陣地から立てられた旗を奪い合い、奪取した旗の数を競う。
なお、指揮官以外の4人は指揮官の命令のみに従い行動すること。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

グループメンバー

フィル=フィール
アリスリーチェ=マーガレット=ガーデン
ミルキィ=バーニング
ヴィガー=マックス

指揮官:キュルル=オニキス

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「きゅる!!
 とにかく旗を持ってくればいいんだよね!!
 じゃあ全員突撃ーーー!!
 あ、ついでに指揮官命令!!
 巻貝女はフィルに近づいちゃダメーー!!」

「「「「コレを指揮官に指名したのは誰だぁああああああ!!!」」」」


「うーん、やっぱ無茶だったかなぁ」
「逆になんでイケると思ったんですかコーディスさん……」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

勇者学園5日目。
完全自由形式模擬戦。

お互い了承の元であれば、試合形式、人数など完全に各々で自由にルールを決め、模擬戦を行う。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「今日と言う今日は決着を付けてやるぞ巻貝女ぁああああああああああ!!!!」

「貴女達!!!
 いつぞやのバスルームでの借りを返す時ですわよ!!!!」
「「「承知いたしました!!!!」」」



「「「「「うおおおあああああああああ!!!!!」」」」」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「えー……A区画からC区画は徹底的に破壊し尽くされ完全に使用不能です。
 また戦いに巻き込まれた生徒達が数十名、いずれも命に別状はありませんが、なんとも非難がましい視線をひしひしと浴びさせられました」
「まぁ、学園活動には命に関わる危険なものもあるってのは承知の上のはずだしね?」
「絶対こちらとしても想定外ですよねコレ」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

そんなこんなで学園生活が始まって5日が経った。

「それでは今日の活動はここまで。
 さて、明日と明後日は休養日だ。
 皆まだまだ慣れない生活で疲れていることだろう。
 しっかり休んで英気を養ってくれ」

コーディス先生のその言葉と共にその場が弛緩していく雰囲気を感じる。
確かに、コーディス先生の言う通り僕のこれまでとまるで違う生活のうえ、絶対に『勇者』になるという気負いもあって、かなりの疲労感があった。
肉体的にも、精神的にもだ。

「そして、明後日には第2次入学者募集もまた始まる。
 また君達と共に生活を送る仲間が増えることになるだろう。
 たった一週間とはいえ、学園生活経験者として君達からも気にかけてあげてくれたまえ。
 それでは、解散」

そっか、そういやまだ入学者募集も続くんだっけ。
また数万単位で殺到するのかな……
今だけでも相当な人数なのに……

「おそらく次からの入学者数は初日程の人数にはならないでしょうね」
「え?」

考えていたことが顔に出ていたのか、アリーチェさんがそんなことを言いながら話しかけて来た。

「あの、それって……?」
「まぁ、当日になれば分かるかと思いますが……
 そうですわね、どうせなら……」

そう言うと、アリーチェさんは少し言葉を切った。
そして気のせいか、少し頬を赤くしながら改めて声を発した。

「ねぇフィル、明日の休養日なのですが……
 わたくしと一緒に街にお出掛けなさいませんこと?」
「えっ?」

僕が驚いた声を出すと、アリーチェさんは少し目を逸らし、少し早口になりながら言葉を続けた。

「い、いえ、今お話しした内容に関することでして。
 その、街へ行った方が分かりやすいかと思いまして。
 別に、他意があるわけではございませんでして。
 決して、その、貴方と2人で、その、で、デートなどと―――」

「きゅるーーー!!!
 フィーールーーーーーー!!!!」
「うおわっ!
 キュルル!?」

キュルルが僕に飛びついてきた。

「もう、キュルル……
 いい加減突然飛び掛かってくるの止めなってば………」
「えー!?
 別にいいでしょー!?
 えへへー!
 あのさ、あのさ!
 明日って学園活動お休みなんでしょー?
 ボク、フィルと一緒に『街』って所見てみたいなー!」

「えっ……キュルルが街に……?
 大丈夫かな……間違いなく騒ぎになっちゃうと思うけど……
 うーん……一応形は人型だし、フードとかで体色を隠せば、なんとか……?」
「ねーねー!
 いいでしょー!
 行こーよー!!」

「あ、そういえばさ、今丁度アリーチェさんと明日街に行こうかって話してたんだけど……」
「きゅるっ!巻貝女!!」

「………………………………………」

折角だから一緒に、なんて一瞬考えたけど……
会話を途中で切り上げられたアリーチェさんは笑顔のまま固まっていた。

………流石に僕もこの笑顔が決してポジティブな感情から来ているものではないことぐらいは分かる……
ああ、ここからまたいつもの流れが………

「オニキスさん……少しの間、目を瞑っていただいてよろしいでしょうか?」
「きゅる?」
「アリーチェさん?」

おや?
てっきりいつものように罵倒と魔法の応酬が始まるのかと思ったら、アリーチェさんは実に穏やかにキュルルに話しかけてきた。

「もし、言うことを聞いていただければ、今後わたくしはアナタとフィルの邪魔をいたしませんわ」
「きゅるぅ……?
 本当ー……?
 嘘だったら《スパイラル・パルヴァライズ》に組み込み10分間の刑だぞ……?」

そう言いながらキュルルはアリーチェさんの言う通り目を瞑り始めた。
そして、アリーチェさんはキュルルの前まで移動し、両手でキュルルの脇腹辺りを抱えると……

「《エミッション・アイス》」

―――ピキキキキキィ!!!
「キュピィッ!?!?!?」

アリーチェさんの唱えた『魔法名』と共にキュルルが氷漬けに―――
って、うえええええええええ!!!!????

「本来は少量の氷を生み出す魔法である《エミッション・アイス》ですが、
 空中に作り出すのではなく、相手の身体に触れ、直接冷気を送り込むという形にすることにより冷凍することが出来る、という訳ですわ。
 最も、人間相手ではここまで瞬時に凍らせるのは難しいのでしょうが……
 わたくしの予想通り、オニキスさんは全身が液体であるため、冷気の伝導が素早く全身に行き渡ったようですわ」
「いやいやいやいやいや!!!!!
 あのちょっとちょっとちょっとおおおお!!!」

「まあ、それでもしっかりと両手で相手を挟み込むようにしないといけないので実践では使い辛いのが難点でありましょうか……」
「アリーチェさぁぁぁん!?
 聞こえてますよねぇええええ!?」

「さて、それでは邪魔者も消えたことですし、明日の予定を話し合いま―――」

―――ピキッ……!ピキッ……!

「――っ!!!
 この音は……まさか!?」

―――ピキィッ!ピキキキ……!!!

「きゅぅぅぅるぁあああああああ!!!!!」

―――バッキィィィアアアアア!!!!

「まぁぁぁぁきぃぃぃぃがぁぁぁぁぁいぃぃいいいいぁああああああ!!!!!」

「ふっ………
 流石は『魔王』………と言ったところですか……
 よろしいですわ………」



「もう絶対に許さねぇぞキュぅうううううるぅぅあああああああああ!!!!!」
「今度こそしっかりと討伐して差し上げますわああああああああああ!!!!!」


「結局いつもの流れかよぉ!!!!!!」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

で、何だかんだで僕とキュルルとアリーチェさんの3人で街へ繰り出すこととなりましたとさ。
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