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第3章
第9話 僕と1日の終わり
しおりを挟む《エクスエデン校舎・個別バスルーム》
「はぁー……結局僕の体力不足問題についての解決策は未だ見つからず、か……」
ここは部屋ごとに用意されているバスルーム。
僕は今、桶の中にお湯を溜めながら、食堂で有耶無耶になっていた問題について改めてぼやいていた。
それにしても、この校舎に用意された生徒用の部屋の数は例え入学者が数万人規模になっていたとしても十分余裕がある程だっていうのにその全てにこのバスルームも用意されているって話なのだから驚くばかりだ。
この蛇口っていうのを捻って水やお湯が出てくる仕組みに関しても一体どういうものなのか僕にはさっぱりだ。
僕が住んでいた故郷の村では井戸から水を汲んできて、節制しながら使っていたっていうのになぁ……
まぁ、使えるものはありがたく使わせて頂くとしよう。
僕は桶に十分にお湯が溜まったのを確認すると蛇口を閉め、それを一気に頭から被った。
そして、瞑っていた目を開け、呟いた。
「でも……キュルルやアリーチェさんは、こんな僕が強くなるって信じてくれているんだ……
絶対に、諦めたりなんかしないぞ!」
「きゅるっ!!
そうだよ!!
フィルなら絶対大丈夫だよ!!」
「うん!
ありがとうキュル――」
―――バッシャアアアアアアアン!!!
僕は即座に側転で湯舟に向かって飛び込んだ。
「キュルルゥウウウウウウウ!!??
なぁんで君がここに居るのかなぁああああ!?」
「ボクも一緒にお風呂入りたかったの!!」
「部屋の鍵はぁ!?
今は君でも入れないはずだよね!?」
「窓!!!」
「実に簡潔かつ明快な説明ありがとう!!!」
窓の付いている部屋は外壁に面している必要がある為、数に限りがある。
今はまだ空きがある状態だけど後から入学者が増えればいずれは埋まってしまうだろうし、折角だからと僕は選んだのだけど……
まさかこんな裏目が……
「キュルル!!
一応今の君は女の子なんだから素っ裸で人の前に現れちゃダメでしょ!!」
「ボクいつも素っ裸だよ?」
「あ、はい……」
改めて考えるとそうだった……
人の形はしているけど、全身漆黒だし粘液の身体だしで特に誰からも指摘されてなかったなぁ……
うーん……物凄い今更だけど今からでも意識して貰おうかな……
「いやそれはともかく僕が素っ裸だからとりあえず今はご退出お願い頂けるかな!?」
「どうしてー!?
僕が昔見たチョーサっていうのに来てたあの男と女の2人組は森の中で素っ裸になって抱き合おうとしてたよー!!
僕が思わず身を乗り出して音出しちゃったら慌てて服着て逃げ出したけど」
「あの2人そこまでしようとしてたのかよ!!!」
今度見かけたら絶対ネタにしてやるからな!!!
「ねー!だからー!
ボク達もーー!!」
「いやちょっと待ってマジで待って!!!
ちょっと本格的に洒落にならないからぁ!!」
僕は必死に湯舟に突撃しようとするキュルルを食い止める!!
―――バァン!!!
「そこまででしてよ!!!
カキョウ!
ウォッタ!
ファーティラ!」
「「「はっ!!!」」」
―――ズババババッッ!!!!
「きゅるぅううううう!?!?!?」
「ふう………
危ない所でしたわね、フィル。
カキョウが引きはがし、
ウォッタが拘束し、
ファーティラがトドメを刺す……
この3連携はいかにオニキスさんと言えども対応出来なかったようですわね。
流石に命にまでは及ばないようにしておりますのでご安心を」
「いやあのなんで当たり前のようにここに現れてるんですか貴女達!?
っていうかしっかり水着まで着てるし!!!!!」
「仕方ありませんでしょう。
貴方の貞操の危機でしたのよ?
わたくしとしても殿方の湯浴みの場に乱入するなどとても恥ずべき行いと心得てはおりますが、そんなことを理由に貴方を見捨てることこそ、ガーデン家として、そして何より『勇者』として恥ずべき行いですわ。
そして、こうして浴室へと立入ることになってしまう以上、その場に相応しい装いをしなければならないのもまた当然の理屈ということですわ」
「いやもうどうツッコめばいいのかちょっと考える時間を貰ってもよろしいでしょうか!?」
「そ、それともまさかわたくしもまた全裸になるべきとでも!?
い、いくら貴方でもそこまでの事を許すわけにはいきませんことよっ!!」
「アリスリーチェ様!!
ならばせめて我々だけでも!!
フィール様!!
ここはどうか我ら3人の裸でどうにか……!
どうにかお許しをッ……!!」
「ストォォォップ!!!!!
お願いですから話を聞いてぇえええ!!!」
「キュゥゥらぁああああああ!!!
おォォまえらァアアアアアアア!!!!」
―――バチィィィン!!!
「なっ!?
もう復活した!?
それにウォッタの《アクア・ジェイル》を破っただと!?」
「くっ!
流石に『魔王』を名乗るだけのことはあるということですのね……!
貴女達!!本気で行きますわよ!!」
「「「承知しました!!!」」」
「今日こそその巻貝をヤドカリの住み家にしてやるぅうううううううううううううううううう!!!!!」
「アナタこそ天突き(ところてん押し出すヤツ)に詰め込んでさし上げますわあああああああああああああああああああ!!!!」
「『勇者』になるのって………
大変なんだなぁ…………(2回目)」
こうして、僕らの学園生活は過ぎていくのだった。
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