勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

文字の大きさ
上 下
46 / 173
第3章

第5話 氷剣と適した形

しおりを挟む
「《アイス・ブレード》!」

――ピキキキ……!

「おおっ!スゲーなお前!
 氷で剣を造れんのかよ!」
「へへっ……!
 代々氷魔法が得意系統でな……!
 まだこの氷剣を維持するのに結構な集中力が必要なんだけど……
 コイツは中々の強度があるんだぜ……!」

そう、俺はこの力で絶対に『勇者』になる!!

その為にも、こんな模擬戦で躓いてなんていられねぇ!
誰が相手だろうが、俺の《アイス・ブレード》で薙ぎ倒してやる!!

「では、次。
 ヴィガー=マックスとフィル=フィール」

「来たか!!
 相手は……!
 あの何かと目立ってるガキか………!」

フィル=フィール。
入学の日からあり得ねぇ低『魔力値』だとかあの黒い魔物との知り合いだとかで話題に事欠かねぇ奴だったが……
見た目はただのチビで実力は大した事ねぇ、ってのが昨日までの認識だった……

だが、今日の午前の学園活動……アレでアイツへの評価は一転したと言ってもいい……!
詳細は不明だが、アイツは『エクシードスキル』に目覚めたらしく、あの時見たのもそれによるものらしい……

周りへと目をやると、どうやら他の生徒達もアイツへの興味が隠し切れない、という様子だった。

へっ……!面白れぇじゃねぇか……!!
どんな訳分かんねぇ奴が相手だろうが……俺は絶対に負けねぇ!!

「では双方、用意」

コーディス先生の声と共に、そのソイツが俺の前に立つ。

「おい、言うまでもねぇけどよ、
 俺は負けるつもりはねぇぞ!」
「は、はいっ!
 よろしくお願いします!!」

ソイツは緊張した面持ちで気合を入れるように両腕を引き締めて返事をした。
その姿は如何にも頼りないその辺のガキ、と言った印象だが……

俺は油断なんかしねぇぞ!
全力でテメェを叩き潰してやるよ!!

「それでは……はじめ!!」

そして、コーディス先生の宣言と共に――

「《バスター・アイス・ブレードォ》!!」

――ピキキキャキャキャ!!!

俺の構えた両手に、巨大な氷剣が生成される!

出し惜しみはしねぇ!!
俺の出せる最大の魔法で相手をしてやる!!

俺の魔法を見たソイツは、一瞬気圧されたようだったが……
すぐに顔つきを険しくし、妙な木片を取り出した。

あれは……!
午前の活動の時に、俺は見た!
あの妙な柄から、黒い槌が生成されたのを……!

「【フィルズ・キッチン】……!!」

上等だ!!
来やがれ!!!

「《レードル》!!!」

そして、奴の柄の先に…………!!!





『黒いおたま』が、生成された…………






「………………………………………」

俺は……いや、俺を含めた周りの生徒達は………
皆一様に言葉を失った…………

反応に困るという意味で………………………

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「はあああああ!!」
「くっ!!」

――ガキィィン!!!

クソっ!!身体が弾かれそうだ!!
奴の『おたま』が俺の氷剣に触れるたび、凄い衝撃が襲ってくる!!

一体どういう原理なのか、あの『おたま』は何かに当たるととんでもなく重量を増しやがる!

「でやあああ!!」
「甘ぇんだよっ!!」

―――ギャリリィ!!

「うあっ!!」

だが、奴自身はそれ程戦闘に慣れているわけじゃない。
俺は氷剣で『おたま』の衝撃を受け流し、反撃に転じる!!

「おらぁ!!」
―――ブォン!!

「くぅっ!!」
―――ヒュッ!!

ちぃっ!中々すばしっこい奴だ!
奴はギリギリで俺の剣を躱し、『おたま』を構え直す!!

そして、慎重になったのか、迂闊には飛び込んでこなくなった。
奴は『おたま』を正面に構え、じりじりとこちらに近付き、『おたま』を叩きこむチャンスを伺っている。
こちらも奴の『おたま』に細心の注意を払い、『おたま』の動きをしっかりと見極め―――









「あのさァアアアアアアアアアアア!!!!!
 スッゲェ気ぃ抜けるんですけどォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

――バッキャアアアアアアアン!!!!!!

氷剣を爆散させた俺は頭を抱えて絶叫した…………

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 

「なんでだよ!?!?
 なんで『おたま』なんだよオオオオオ!!!」
「えっ!?ごっ、ごめんなさい!!
 『フライ返し』の方が良かったでしょうか!」
「そうじゃねぇよ!!!!
 そうじゃねぇんだよォオオオオオ!!!!」

ヴィガーは我を忘れフィルの胸ぐらを掴んでガクガクと揺すっていた……

「ヴィガー、試合放棄により勝者、フィル」

そしてそんな光景をまるで気にしないコーディスの宣言が淡々と響き渡った。

「きゅるーー!!
 やったねフィル!!
 ボクの協力のおかげだねーー!!」
「流石ですわね、フィル。
 わたくしの助力の元、見事勝利を収めて見せましたわね」
「………………………………………」
「………………………………………」
―――ズォオオオオオオ!!!
―――バシュゥゥッッッ!!!

「『おたま』にやられる相手の気持ちも考えろよォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「わ、わ、わ、分かりました!!!
 次はもっと真面目な形考えます!!!
 えっと、えっと!!
 あ、そうだ!!
 『しゃもじ』はどうでしょう!!!」
「大概にしとけよテメェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...