勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

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第2章

第18話 僕とあるモノ

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「はっ……ははっ………!
 ははっ……はははっ……!!
 ヒャーはっはっはっはっはァアア!!!」

俺は傷だらけの身体のことも忘れ、高笑いをあげる!!

やった!!あのクソ共がッ!!
ザマァーみやがれッ!!!

今ので奴らは間違いなくバラバラだ!!
恐らく辺り一面に奴らの『残骸』がブチまけられたことだろうよ!!

散々この俺を舐め腐りやがって……!!
精々あの世で後悔しやがれェッ!!!

そんなことを考えている内に、俺の爆破の煙が晴れてきた。

さぁて……アイツらはどんな具合にグチャグチャに―――


「…………あ?」


煙が晴れたその中から現れたのは、奴らの死体ではなく―――


「た………盾ェ!!??」

黒く、丸い、デカい盾だった………!!

その後ろには………!!!
あのクソ共が……平然と………!!!

なっ、なっ、なっ―――

「なんなんだそりゃああああああ!!!!」

俺は頭の血管がブチ切れるんじゃねぇかと思う程の絶叫をあげる!!!

なんだあの盾は!!??
あんなもん、一体どこから出しやがった!!??

いや、よく見ると奴がさっきまで持っていたふざけた剣が無くなってやがる!!
まさか………あの剣が………変形した………?

「ふっ……ざけるな………!
 ふざけるなァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

俺は、喉をつぶしかねない程の絶叫を吠えた………!

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

レディシュさんはもはや人の言葉を忘れたかのような様相だった。

渾身の魔法を防ぎ切ったこの盾の存在にとてつもなく激昂していた。

そう、盾……のように彼には見えていることだろう………

でも、これは…………

「それ…………
 鍋蓋………ですわよね………」

アリスリーチェさんが後ろから声をかけてきている………
恐らくその顔は何とも言い難い微妙な表情をしていることだろう………

「えっと……その……
 アレを防がなくちゃ……って思って……
 その時、瞬間的に脳裏に浮かんだのが……
 昔、勇者ごっこで盾として使ってた鍋蓋で……
 今では調理器具としてもしっかり手に馴染んでいて……」

特に大人数のパーティーなんかで使うような大鍋の蓋は他の子ども達にも大人気だったなぁ………

僕は望郷の思いにしばし身を寄せた……

ちなみにこの黒い鍋蓋も先程の黒い包丁同様、何かが当たると重量が激増するという特性を持っているらしく、あの凄まじい爆発の衝撃でも吹き飛ばされずに済んだのだった。

「はぁ……はぁ………
 ああ………………………
 もう………もう、終わりだ…………
 終わりにしてやらァ…………………」

と、声が裏返るほどに絶叫を張り上げていたレディシュさんが、急に糸が切れたように静かになり、ブツブツと小さな声を呟き始めた。

「俺の………全ての魔力を使って………
 まだ完全に成功したことのねぇ………
 『高等爆発魔法』で………!
 そんな盾じゃ防ぎきれねぇ程の大爆発で……!!
 テメェらを……消し飛ばしてやらァ………!!」

「なっ、なんですって……!?」
「高等、爆発魔法……!?」

高等魔法……それは本来使える者は国から正式に認められた『上級魔法師』に限られており、余りにも凄まじい威力を持つため、特定の戦場以外での使用は固く禁じられているという禁断の魔法……!!

「おっ、おやめなさい……!!
 ここら一帯が……吹き飛びますわよ……!!
 それに……貴方自体……どうなることか!!」

「知ったことかァアアアアアア!!!
 俺はもうテメェらをチリ一つ残さず消し飛ばさねぇと気が済まねぇんだよォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

もはや、彼の目からは正気が失われていた……!!

彼は、ゆっくりと、右手を上げ――――

「くたばれ………!」

狂気の笑みを浮かべながら―――


「《ディザスター・エクスプロージョン》!!!」


その禁断の『魔法名』を唱える。
そして―――

―――コォオオオオオオ!!!

彼の右掌の上に、紫色の球体が生まれ、そこから凄まじい奔流が巻き起こる……!!

「はっ……はははっ……!!
 成功だァ……………!!
 テメェらはもう終わりだァアアアアア!!」

「う……ああ……!」
「なんて……こと………!」

右手の球体が、凄まじい爆発を起こすであろうことが容易に感じ取れた……
そして、それは……!
今にも解き放たれそうだった……!!

「フィル…………ごめんなさい………」
「アリスリーチェさん……?」

アリスリーチェさんが全てを諦めたような表情で僕に謝罪の言葉を投げかける。
その瞳からは、涙が零れ落ちていた。

「わたくしの問題に……貴方を……巻き込んで……
 本当に………ごめん………なさい……………」

アリスリーチェさんは、今にも気を失いそうな蒼白な顔色のまま、ただひたすらに「ごめんなさい」と繰り返していた……

僕は……ここで、終わる……?

あの子との誓いも果たせず……

ここで、こうして泣いてる人も救えず……

『勇者』にもなれず……

「いや――」

「フィル………?」

僕は、前を見据える。

「何度でも言います」

柄だけの木剣を両手で構え、頭の上へと掲げる。

「僕は」

そして、心の中に、イメージを浮かべる。

「『勇者』になる!!」

その言葉と共に、柄の先に――『あるモノ』が形成されていく。

アリスリーチェさんとレディシュさんが、その『あるモノ』が形作られていく様を見上げる。

この状況で、僕らが助かる為に必要な『あるモノ』

それは――――!!!!
















「…………………………鍋?」















そう、大きな……、とても大きな黒い鍋だった。

それを――――

「はああああああ!!!!」








「は?」
―――ガポ








レディシュさんに覆いかぶせた!!!

よし!!!
これでもう、彼は爆発魔法なんて発動する気にはならないだろう!!!
この密閉状態でとんでもない威力の爆発なんて引き起こした日には………

もう……想像するのも恐ろしいことになってしまうのは明白だ!!!

これで、彼は爆発魔法の発動を止めて、後は僕らの不在を不審に思った誰かが探しに来てくれるのを待っていれば―――

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆









「お、おい!!!ちょっと待て!!!
 この魔法は一度発動したら止めることは……!!
 おい!!あ、あ、開けろ!!!!
 コレを開けろォオオオオオオ!!!
 た、頼む!!!開けてくれ!!!
 開けてくれェエエエエエエエエエエ!!!!
 お願いします!!!!!!!!!!
 開けてくださ―――!!!!!!!」









 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



彼の懇願は黒い鍋に阻まれ、届くことはなかった…



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆





――――ドムォッッッッッッッッ!!!!!




 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

《 校舎前広場 》

「うおおおお!!!なんだあああ!!!
 今度は地震かああああ!!??」

「いや!!これも爆発……なのか?
 なんか凄ぇ音は聞こえた気はするけど……」

「さっきの音も変だったけど……
 今度のはなんつーか………」

「埋め立てられた洞窟の中で、とんでもない量の爆弾を炸裂させた……
 みてぇな感じかなぁ…?」

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「っ~~~~~…………………」

…………もんのすんごい衝撃が、黒い鍋越しに僕へと伝わってくる………
ビリビリと腕が痺れ、身体が硬直し、思わず目を瞑ってしまう。

しばらくして……
腕の痺れが取れて来た頃……
僕は恐る恐る目を開いた………

大きな黒い鍋と地面との間に空いた隙間から……
モクモクと、物凄い量の煙が立ち上っていた……


僕は呟いた。


「アリスリーチェさん……
 僕、コレ開けたくないんですけど……」
「見なかったことにしてしまいましょうか」



そして、森の中へとやってくる生徒や先生達の声が聞こえてきたのだった。
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