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第2章
第4話 君と模擬戦
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「では双方、用意」
「きゅる!」
「へへっ……!」
全生徒が見守る中、コーディス先生の言葉と共にキュルルと大柄生徒がそれぞれの位置に着く。
「武器は使ってもいいんだよなぁ、先生」
「ああ、双方合意の上ならね」
「きゅる!別に問題なーし!」
その確認を合図に大柄生徒が巨大な斧を構える。
「キュルル……!」
僕は両拳を握り、祈るような姿勢になってしまう。
この場で心情的にキュルルの側に立っているのはおそらく僕だけだろう……
「キュルル=オニキス……
果たしてあのスライムが本当に『魔王』などという大層な肩書を持つに相応しい者なのかどうか……
精々見極めさせていただきましょうかね」
アリスリーチェさんが近くでいつものように椅子に座り、ティーカップを片手にキュルル達を見据えている……
「断っておくが、これは実力判定のための模擬戦。
決して殺し合いではない。
それを忘れないでほしい」
「きゅきゅる!」
「へいへい……!」
「それでは……はじめ!!」
その言葉と同時に――――
―――ダッッ!!
「きゅるーーーーー!!」
キュルルは大柄生徒に向かって一直線に走り出した!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
殺し合いではない……ねぇ……
へっ!魔物相手にそんなの考える必要あるかよ!!
あの魔物はこっちへと真っ直ぐ走ってきている。
それなりの速さだが――全然見切れる程度だ!!
俺は自慢の大斧を振り上げる!
そして魔物が俺の目の前にまで来るタイミングを見計らって―――!!
「昨日の礼を……受け取りやがれええ!!!」
渾身の力で振り下ろす!!
もちろん殺す気でだ!!!
―――ドンッッッ!!!!
ははっ!やった―――いや!!
奴がいねえ!?
そう思った瞬間、左側の視界の端に何かが映る!
即座にそちらへ目を向けると――いた!
くそっ!紙一重で避けやがったか!!
奴は右腕を振りかぶり、こちらを狙っている!
だが――
へっ!そんな細っこい、見るからに柔らかそうな腕でどうしようってんだ!
恐らくこっちの追撃より先に奴の拳が飛んでくるだろうが……
なんの問題もねぇ!
そんなもん蚊に刺された程のダメージもあるか!
その想像通り、奴の拳が俺の脇腹へと放たれる。
だが、そんなも―――
―――ズンッッッッッ!!!!!!
「―――ごあッ!!!!???」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
キュルルの右腕が………
大柄生徒の脇腹へ、めり込んだ。
その見るからにぶ厚い筋肉の内側へと……!!
「ごっ……はっ………!?」
大柄生徒は斧を手放し、脇腹を抑え悶絶している。
その隙にキュルルは再び右腕を思いっきり振りかぶり――
「待っ―――!!」
「きゅるーーーっ!!!!」
―――ゴッッッ!!!
大柄生徒の左頬を――打ち抜いた!!
そのまま大柄生徒は空中を錐揉み回転しながら数メートル先まで吹っ飛び、地面に激突すると…………気絶した。
「そこまで。
勝者、キュルル」
「きゅっきゅるーーー!!」
コーディス先生の宣言と共に、キュルルがバンザイしながらぴょんぴょん跳ねる。
「キュルル……!」
「きゅるー!フィルー!勝ったよー!!」
キュルルが僕に向かって抱き着いてきた。
僕は思わず尻もちをついて、キュルルに押し倒されてしまう。
「キュルル!凄いよ!
ホントにこの姿のまま勝てちゃうなんて!!」
「えへへー!きゅるるーー!」
キュルルは上機嫌に僕に頬擦りしてくる。
流石にちょっと恥ずかしくなってきた……
「今のは一体どういうことですの……?
あれだけの体格の方をあんな風に吹っ飛ばすことなど、到底アナタの細腕で出来ることでは……」
アリスリーチェさんが僕達の近くまで移動し、疑問を投げかけて来た。
確かに、今のキュルルにあんな腕力があるなんてとても思えない。
勿論、人間である僕達の肉体と魔物の肉体とでは違う部分もあるのかもしれない。
でも、それにしたってこのキュルルのプルプルの身体にそんな力があるとは………
「ふふーーん……」
キュルルが誇らしげな声を出しながら立ち上がる。
そして右腕を真横に掲げると……
―――ボトボトボトボトッ!
…………腕の中からなんか落ちて来た。
―――ゴロ………
地面に転がったそれらは………
「腕に石、詰め込んでましたーー!!!」
「「シンプルにエグイッッッッッ!!!!!!」」
僕とアリスリーチェさんは同時に叫んだ……
そういや、キュルルがコーディス先生からルール説明聞いてた辺りでなんかゴポゴポ聞こえたような……
あの時既に足元から石や小石を体内に取り込んでいたのか……
「いくら細腕でもこれだけ詰め込めばそりゃ腹筋にもめり込む……」
「黒い体色の所為で詰め物に気が付けなかったのですわね……」
「きゅるっ!!」
キュルルは自慢げに胸を張っている……
「あのう、あれ、いいんですか……
ルール違反なのでは……」
「うーむ、こっちから明言したのは『人型』を崩してはいけないってだけだし。
体内に物体を取り込むのは魔法じゃなくてスライムとしての特性だし。
武器の使用は禁止してないし」
そんなこんなで、この模擬戦の初戦は終了したのだった……
「きゅる!」
「へへっ……!」
全生徒が見守る中、コーディス先生の言葉と共にキュルルと大柄生徒がそれぞれの位置に着く。
「武器は使ってもいいんだよなぁ、先生」
「ああ、双方合意の上ならね」
「きゅる!別に問題なーし!」
その確認を合図に大柄生徒が巨大な斧を構える。
「キュルル……!」
僕は両拳を握り、祈るような姿勢になってしまう。
この場で心情的にキュルルの側に立っているのはおそらく僕だけだろう……
「キュルル=オニキス……
果たしてあのスライムが本当に『魔王』などという大層な肩書を持つに相応しい者なのかどうか……
精々見極めさせていただきましょうかね」
アリスリーチェさんが近くでいつものように椅子に座り、ティーカップを片手にキュルル達を見据えている……
「断っておくが、これは実力判定のための模擬戦。
決して殺し合いではない。
それを忘れないでほしい」
「きゅきゅる!」
「へいへい……!」
「それでは……はじめ!!」
その言葉と同時に――――
―――ダッッ!!
「きゅるーーーーー!!」
キュルルは大柄生徒に向かって一直線に走り出した!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
殺し合いではない……ねぇ……
へっ!魔物相手にそんなの考える必要あるかよ!!
あの魔物はこっちへと真っ直ぐ走ってきている。
それなりの速さだが――全然見切れる程度だ!!
俺は自慢の大斧を振り上げる!
そして魔物が俺の目の前にまで来るタイミングを見計らって―――!!
「昨日の礼を……受け取りやがれええ!!!」
渾身の力で振り下ろす!!
もちろん殺す気でだ!!!
―――ドンッッッ!!!!
ははっ!やった―――いや!!
奴がいねえ!?
そう思った瞬間、左側の視界の端に何かが映る!
即座にそちらへ目を向けると――いた!
くそっ!紙一重で避けやがったか!!
奴は右腕を振りかぶり、こちらを狙っている!
だが――
へっ!そんな細っこい、見るからに柔らかそうな腕でどうしようってんだ!
恐らくこっちの追撃より先に奴の拳が飛んでくるだろうが……
なんの問題もねぇ!
そんなもん蚊に刺された程のダメージもあるか!
その想像通り、奴の拳が俺の脇腹へと放たれる。
だが、そんなも―――
―――ズンッッッッッ!!!!!!
「―――ごあッ!!!!???」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
キュルルの右腕が………
大柄生徒の脇腹へ、めり込んだ。
その見るからにぶ厚い筋肉の内側へと……!!
「ごっ……はっ………!?」
大柄生徒は斧を手放し、脇腹を抑え悶絶している。
その隙にキュルルは再び右腕を思いっきり振りかぶり――
「待っ―――!!」
「きゅるーーーっ!!!!」
―――ゴッッッ!!!
大柄生徒の左頬を――打ち抜いた!!
そのまま大柄生徒は空中を錐揉み回転しながら数メートル先まで吹っ飛び、地面に激突すると…………気絶した。
「そこまで。
勝者、キュルル」
「きゅっきゅるーーー!!」
コーディス先生の宣言と共に、キュルルがバンザイしながらぴょんぴょん跳ねる。
「キュルル……!」
「きゅるー!フィルー!勝ったよー!!」
キュルルが僕に向かって抱き着いてきた。
僕は思わず尻もちをついて、キュルルに押し倒されてしまう。
「キュルル!凄いよ!
ホントにこの姿のまま勝てちゃうなんて!!」
「えへへー!きゅるるーー!」
キュルルは上機嫌に僕に頬擦りしてくる。
流石にちょっと恥ずかしくなってきた……
「今のは一体どういうことですの……?
あれだけの体格の方をあんな風に吹っ飛ばすことなど、到底アナタの細腕で出来ることでは……」
アリスリーチェさんが僕達の近くまで移動し、疑問を投げかけて来た。
確かに、今のキュルルにあんな腕力があるなんてとても思えない。
勿論、人間である僕達の肉体と魔物の肉体とでは違う部分もあるのかもしれない。
でも、それにしたってこのキュルルのプルプルの身体にそんな力があるとは………
「ふふーーん……」
キュルルが誇らしげな声を出しながら立ち上がる。
そして右腕を真横に掲げると……
―――ボトボトボトボトッ!
…………腕の中からなんか落ちて来た。
―――ゴロ………
地面に転がったそれらは………
「腕に石、詰め込んでましたーー!!!」
「「シンプルにエグイッッッッッ!!!!!!」」
僕とアリスリーチェさんは同時に叫んだ……
そういや、キュルルがコーディス先生からルール説明聞いてた辺りでなんかゴポゴポ聞こえたような……
あの時既に足元から石や小石を体内に取り込んでいたのか……
「いくら細腕でもこれだけ詰め込めばそりゃ腹筋にもめり込む……」
「黒い体色の所為で詰め物に気が付けなかったのですわね……」
「きゅるっ!!」
キュルルは自慢げに胸を張っている……
「あのう、あれ、いいんですか……
ルール違反なのでは……」
「うーむ、こっちから明言したのは『人型』を崩してはいけないってだけだし。
体内に物体を取り込むのは魔法じゃなくてスライムとしての特性だし。
武器の使用は禁止してないし」
そんなこんなで、この模擬戦の初戦は終了したのだった……
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