勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~

冒人間

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第1章

第7話 僕と貴女との譲れない信念

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『ガーデン』……そうだ、僕がよく料理で使っている食料品の袋にそんな名前が書かれた紋章が印されていたような……
確か魔王との戦いで荒れてしまった大地の農地支援を大陸のあちこちで行っている大貴族で、今や大陸の食糧事情はこの貴族が一手に担っているも同然だとかなんとか……
僕も村の大人達から聞いただけで詳しくは分かってないけど、とにかく物凄く偉い家の人ということだ。
そんな人までこの学園に……
それに……

「新たな『勇者』として人々を導く……?」
「ええ、そうですわ。
 魔王が討ち取られ5年……
 ようやく訪れた平和の矢先、再びの魔物の活性化。
 今、人々の心には不安の影が訪れつつありますわ。
 これは魔王復活の前触れでないか、と」

確かに……表立って言われたりはしていないけど街で耳を澄ましてみればそんな話がちらほら聞こえては来ることもある。
本気ではない、冗談めかした風な雰囲気ではあるが、着実に人々の心に不安は募ってきているのだ。

「初代勇者が健在とはいえ、あの大戦の記憶はまだまだ新しい。
 またあの戦いが繰り広げられるのではないか……
 そんな心の暗雲を取り除き、真の安寧と平和を与えてくれる者……
 人々は今、そんな存在を求めているのですわ。
 その為には、初代勇者を超える『勇者』の姿を世界に示さねばなりません」
「勇者様を超える……!?」

僕は『勇者』になりたい、とは幼い頃からずっと思っていたが今の『勇者』を超える、などという発想はまるで浮かんでこなかった。
僕の中では勇者様とはこの世界の頂点の人物、王様以上の存在として絶対視しているものだった。
そんな大それた言葉を発しながら彼女の眼差しは微塵も揺るがない。

「この超大陸『ヴァール』において、有史の頃より存続し続けてきた誇り高きガーデン家の名に懸けて。
 必ずや究極至高の『勇者』となり、人々の心を導き、歴史にその名を刻んでみせる。
 それこそがわたくしの使命………そして、信念ですわ」
「はぇぇ………」

凄い人だ………
掛け値なしにそう思った。

「なんていうか……凄いですね……
 純粋に尊敬します……
 アリスリーチェさん……」
「貴様!この方を気安く名前で呼ぶなど!」
「わっ!その!すいません!」

褐色肌のお付きの人に強い口調で注意を受けてしまった。

「気にせずともよろしいですわ。ファーティラ。
 それよりも貴方、わたくしから善意の忠告ですわ」
「あ、はい、なんでしょう……?」

彼女はティーカップを一口含み、言った。

「貴方、今すぐ入学を辞退した方がよろしいですわよ?」
「!!!!」

僕は言われた内容をすぐには飲み込めず、数秒固まってしまった。

「どういう……意味ですか?」

僕は動揺を隠しながら……いや実際には全然隠せてなかったけど……
とにかく聞き返した。

「貴方、お触れの内容をちゃんと確認されまして?
 このような文がしっかりと記されておりますわよ。
 『学園内の活動においては身体損傷、あるいは生命に危険が及ぶものあり。学園側はの保護活動は行うが、基本方針として入学者は自らの身体、生命の維持に関しては自らが責任を負うべし』と」
「そ、それは……!」

その文章自体は僕だって目を通してはいた。
そりゃあ、『勇者』になるため学園なのだからただ勉強する為だけじゃなく、訓練をしたり、場合によっては魔物と戦うようなこともあるんだろう……
怖くないと言えば嘘になる……でも……!

「それは……僕だって勿論覚悟を……!」
「貴方、ここに居たらいつか死にますわよ」
「っ!!」

僕の言葉を遮るようにアリスリーチェさんは言った。
侮蔑も嘲笑もなく、ただ事実を告げているだけだとでもいう様に、淡々と……

「ご自身でも分かっているのではなくて?
 自分は『勇者』になれる器ではないと」
「そっ!!そんなことっ!!!!」

「その未成熟な身体。
 おそらく入学者中最低の『魔力値』。
 貴方がこの学園に入学するのは無茶だと、誰もが口を揃えて言うことでしょうね」
「うぅ………」

僕は思わず5年前までの村の皆の反応を思い出してしまう。
誰も馬鹿にしたりはしないけど、決して心からの肯定の言葉はない。
気まずそうに言葉を濁して、別の道を提案してくる。
『あはは、そうだな……いつか、なれたらいいな。
 まあ、でもほら、別に――――』

「別に『勇者』になんてなれなくてもいいじゃありませんの」
「――――――――――」

『いつか絶対、勇者になる為に』
『きゅきゅるる!』

「嫌です」
「―――え?」

僕は彼女を真っ直ぐ見据えて、言う。

「僕は『勇者』になります。
 貴女にだって負けないぐらいの『勇者』に」
「――――――――!」

彼女は、ほんの少し、目を見開いたような気がする。

「貴様――っ!ア、アリスリーチェ様?」

僕の言葉に激昂した褐色肌のお付きの人をアリスリーチェさんは片手を挙げて制した。

「……そこまで仰るのなら、わたくしから申し上げることはありませんわ。
 ですが、口にした以上もう取り消すことは出来ませんわよ」
「ええ、取り消したりなんてしません。
 僕にも、信念がありますから」

アリスリーチェさんは、ふ――、と笑う。
馬鹿にした風ではない、やってみろ、とこちらを駆り立ててくるかのような笑みだった。

「では精々見せて貰いましょう。
 その小さな身体と、最低の『魔力値』で、一体どこまで往けるのかを」
「ええ、望むところです!」

僕は精一杯の力を込めて、答えた。

それにしても『魔力値』か……そういえばアリスリーチェさんとの会話に夢中でこの人達の『魔力値』をよく見てなかったな……
えっと……アリスリーチェさんの数値はお付きの人達に隠れてよく見えないな……
そのお付きの人達は………

「うおわっ!?」

ティーポットを持った小柄で色白の人が『16000』……
日傘を差し出してる東洋の人が『18000』……
椅子の後ろの高身長褐色肌の人に至っては……『25000』!!

ひええ……蟻とドラゴンだぁ………

「おやおや、急に情けないお顔になりましたわね?
 先程の威勢はどうしましたの?」

アリスリーチェさんの失笑の言葉に僕は「うぐ……」と声を出すしかなかった……

「いい機会ですわ。
 わたくしに負けない程の『勇者』というものが、一体どれだけ困難な道なのか……
 これを見て、しかと思い知っておきなさいな!」

そう言いながらアリスリーチェさんは用紙を目の前に突き出した。
そして浮かび上がってきた数値は…………



『500』!!!

す、凄い!!僕の5倍もの数値………!!




「……………………………………………………」




――――――――――ん?




「いやいやいやいやいやいやいや!!!!!
 これ貴女も相当な数値ですよね!!??
 『500』て!!『500』て!!!!!!
 そりゃ相対的に僕よりマシに見えますけど!!!
 普段必要な魔力『200』から『300』ですよ!?
 ギリッギリもいいとこじゃないですか!!!
 なんで!!??
 なんでコレであんな口叩けちゃったの!!??
 そしてなんでドヤ顔で見せびらかせたの!!??
 いやある意味凄いとは思いますよ!!!???」
「しっ、失礼なっ!!!
 折角わたくしよりも低い数値の方を見つけて嬉し……もとい憐れに思ったから声をかけてさしあげたというのに!!!」
「今『嬉しい』って言おうとしました!!??
 やっぱ自分でも自覚あるんですね!!??
 僕が言えた口じゃないですけど貴女コレ大丈夫なんですか!!!???」
「あっ、貴方なんかに心配される筋合いは―――!!!」

バン!とテーブルを叩きアリスリーチェさんが椅子から立ち上がる。

「「「あっ」」」

お付きの人達が一斉に声を上げた。

「――――――」
「アリスリーチェさん……?」

アリスリーチェさんは立ち上がった状態でビタッ!と止まると……

――――ふらぁ~……パタン

直立姿勢のまま真横に倒れた………

「アっ、アリスリーチェ様ああああああ!!!!」
「ああ、なんて無茶を……!!
 あんなにも勢いよく立ち上がられてしまうなんて……!!」
「きっ、貴様ぁっ!!
 よくもこのようなことをっ!!!
 このお方はおひとりで歩かれることすら命懸けなのだぞ!!!」
「ええ………」

お付きの人達がとんでもない慌てようでアリスリーチェさんを介抱し始める……

なんなんだこの人達は……………
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