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第1章
第4話 僕と魔力値
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「ぜぇ…ぜぇ……つ、着いた………!」
僕は息も絶え絶えになりながらその建物を見上げる。
結局あれから2時間ほどの時間をかけてようやくたどり着いたこの場所……
勇者養成学園『エクスエデン』
今日、ここから、僕の勇者への道が始まる……!
でもその前にちょっと休憩させてね……!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さて、辿り着いた、とはいっても建物自体はここからまだまだ先の方にある。
ここは建物を囲っている壁の前だ。
この街の城壁に負けず劣らずに大きい……
ただしこちらは壁の途中途中に柵が設けられており中の様子を伺うことができる構造となっている。
そして、僕の目の前には巨大な門がある。
こちらに関しては街に入る時に見た城門よりも遥かに大きかった。
街の城門もかなりの大きさだったがあちらは貨物馬車専用の入口だったからか精々馬車3,4台分が入れるぐらいの大きさだったのだが、こちらはその数倍の大きさだ。
何せ僕が見た大通りの6台分の馬車道がそのまま門を通って中に続いているのだからそれも当然だ。
今も何十台もの馬車が間断なく門の中へ入っては出ていき、入っては出ていき……
そんな様子を僕がぼーっと見ていると――
「あなた!入学希望者よね!早くこっち来て!」
と、門に入ってすぐの所にある長机の前に立っている眼鏡をかけた女の人に声をかけられた。
ブラウンのセミロングでとても整った顔立ち。
如何にも大人のお姉さんといった雰囲気だ。
あれは……もしかして受付かな?
僕は慌てて門をくぐり、お姉さんの前まで走った。
「もうあと数人で受付終了よ。
早く登録を済ませちゃって」
「あれ?人数制限があるんですか?
確かお触れには入学者数制限は無いって……」
「これはあくまで1次募集よ。
入学資格は19歳以下というだけ、入学試験なしに入学料なし。
当然大陸中から希望者が押し寄せてくるわよ。
ある程度の人数が集まったら一区切り入れないとまともに入学の挨拶も始められないわ。
先に登録済ませた人なんて1ヵ月単位で待ってもらうことになっちゃうわよ。
ちなみに次の募集は1週間後よ。
ちゃんとお触れにも書いてあったわよ?」
全然気づいてなかった……
この条件ならこんな僕でも入れる!って浮かれててよく読んでなかった……
もしここまで来て募集締め切りなんてことになってたら僕は泣き崩れていたことだろう……
そんなことを考えているとお姉さんは僕へいくつかの項目が書かれた紙とペンを差し出した。
「それじゃ、ここに名前と年齢……
それと『エクシードスキル』のことは流石にもう知っているわよね?
その力を持っている、あるいは持っているかもしれないというのならその詳細の記入もお願い」
「えっ!既に『エクシードスキル』に目覚めてる人もいるんですか!?」
「ええ、流石にそこまで多いわけではないけど……
何せ大陸中から人が集まってるからね。
今までの募集者の中にも何十人かは見られたわ」
「な、何十人……
そりゃ募集人数全体で比べりゃ多くないと言えるんでしょうけど……
ちなみに、『村のコンテストで優勝できるほどの料理の腕の持ち主』ってのは」
「全く持って関係ないわね」
「ですよね」
もちろん僕以外にも沢山の入学者がいて、その誰もが僕なんかよりずっと上の実力者である……
なんてことは覚悟してたけど……
まさかそこまでの人達がいるなんて……
僕は一体その人達に比べて何億歩遅れていることになるんだろう……
そんな打ちひしがれた気分になりつつも僕は用紙に記入し、お姉さんへと渡した。
「えっ!?15歳…!?」という呟きは無視した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それじゃあ最後に『魔力値』検査を行うわね」
「『魔力値』?」
初めて聞く言葉だった。
字面から魔力に関係するものだとは思うけど……
「簡単に言うとその人が持つ魔力の総量よ。
この世界には魔法という『力』が存在するけど、それは人間が持つ魔力にイメージの力を添加し、心の中で練り上げることで発生させる、っていうのは知ってるわよね?
人によって得意な魔法系統は変わってくるけど」
「はい、最初は話を聞いてもよく分かんなかったんですけど、
『魔力』っていう小麦粉と『イメージ力』っていう水を混ぜ合わせて練り上げることで『魔法』っていうパンが出来るようなものだ。
っていう説明を村長から聞いてなんとなく納得しました!」
「……なんかやたら家庭的な感じがするのは気になるけど……
まぁ、おおむねその通りよ」
つまりその人がどれだけの量の小麦粉を持っているか、ということか……
多ければ多いほど沢山の、大きなパンが作れる、というわけだ。
「そしてその人がどんな材料を持っているかで作れるパンの種類も変わる……
オーソドックスな小麦パンからサンドイッチ、クロワッサン、パンケーキ……
そういえばさっき街で見たクレープってお菓子もなんとなくパンケーキに似てたような……」
「うん、一旦パンから離れましょうか」
脱線しかけた話をお姉さんに戻された。
「ともかく、解析魔法を使ってその人の持つ魔力の量を調べるの。
素質を見るためにね」
「素質……それって……」
『勇者』の素質……ってことかな……
やっぱり『魔力値』が高い人ほど素質が……
「ああ、別に魔力値が低くても『勇者』になれない、ってわけじゃないわよ?
『勇者』の称号に必要なのは『エクシードスキル』の方だって話はお触れに書いてあったでしょ?
『魔力値』と『エクシードスキル』に特に関連性はないわ。
さっき言った募集者の中にいた『エクシードスキル』持ちの人達の中にも『魔力値』はそれ程でもない人はちらほらいたしね」
「それじゃあ素質っていうのは……」
「単純に『魔法師』としての素質ね。
『魔力値』が高い人ほど強力な魔法が使える。
そういう人には『魔法師』としての講習も用意しているの。
折角の才能を持て余すのはもったいないだろう、ってことでね。
もちろん強制じゃなくて本人の希望があればの話だけど、『魔法師』になることは結果的に『勇者』への近道になるわ。
『エクシードスキル』が大前提とはいえ単純な『強さ』も勿論『勇者』には必要な要素なんだから」
「な、なるほど……」
思えば僕は今までずっと自分の身体を鍛えることしか考えておらず、『魔法』に関しては全く意識すらしたことはなかった。
でももし、身体は貧弱な僕でも『魔法師』としての才能があったなら……
僕は俄然『魔法』に対してポジティブな感情を抱き始めた。
「それじゃあ、『魔力値』検査を始めさせてもらうけど、大丈夫?」
「はっ、はいっ!お願いします!!」
僕が思わず上擦った声で返事をするとお姉さんは左手に先程の用紙を持ち、右手を僕の額へと当てた。
そして、そのまま目を閉じると―――
「《ポテンシャル・エグザミネーション》」
その『魔法名』と共に僕の額に当てている手が熱を帯びた。
おそらく『魔力値』の検査、というものが行われているのだろう。
うおおお……なんかドキドキしてきた……!
しばらくするとお姉さんが左手に掴んでいる紙が赤く光りはじめた。
その数秒後、お姉さんの右手の熱が引き、それと同時に紙の発光も止む。
お姉さんが目を開けると先程まで光っていた紙へと目線を落とした。
おそらくそこに結果が記されているのだろう……
果たして僕には『魔法師』の素質が眠っているのかどうか……
僕がソワソワしながらお姉さんの言葉を待っていると―――。
「―――――――――えっ?」
お姉さんの驚倒の声が僕の耳を打った。
僕は息も絶え絶えになりながらその建物を見上げる。
結局あれから2時間ほどの時間をかけてようやくたどり着いたこの場所……
勇者養成学園『エクスエデン』
今日、ここから、僕の勇者への道が始まる……!
でもその前にちょっと休憩させてね……!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さて、辿り着いた、とはいっても建物自体はここからまだまだ先の方にある。
ここは建物を囲っている壁の前だ。
この街の城壁に負けず劣らずに大きい……
ただしこちらは壁の途中途中に柵が設けられており中の様子を伺うことができる構造となっている。
そして、僕の目の前には巨大な門がある。
こちらに関しては街に入る時に見た城門よりも遥かに大きかった。
街の城門もかなりの大きさだったがあちらは貨物馬車専用の入口だったからか精々馬車3,4台分が入れるぐらいの大きさだったのだが、こちらはその数倍の大きさだ。
何せ僕が見た大通りの6台分の馬車道がそのまま門を通って中に続いているのだからそれも当然だ。
今も何十台もの馬車が間断なく門の中へ入っては出ていき、入っては出ていき……
そんな様子を僕がぼーっと見ていると――
「あなた!入学希望者よね!早くこっち来て!」
と、門に入ってすぐの所にある長机の前に立っている眼鏡をかけた女の人に声をかけられた。
ブラウンのセミロングでとても整った顔立ち。
如何にも大人のお姉さんといった雰囲気だ。
あれは……もしかして受付かな?
僕は慌てて門をくぐり、お姉さんの前まで走った。
「もうあと数人で受付終了よ。
早く登録を済ませちゃって」
「あれ?人数制限があるんですか?
確かお触れには入学者数制限は無いって……」
「これはあくまで1次募集よ。
入学資格は19歳以下というだけ、入学試験なしに入学料なし。
当然大陸中から希望者が押し寄せてくるわよ。
ある程度の人数が集まったら一区切り入れないとまともに入学の挨拶も始められないわ。
先に登録済ませた人なんて1ヵ月単位で待ってもらうことになっちゃうわよ。
ちなみに次の募集は1週間後よ。
ちゃんとお触れにも書いてあったわよ?」
全然気づいてなかった……
この条件ならこんな僕でも入れる!って浮かれててよく読んでなかった……
もしここまで来て募集締め切りなんてことになってたら僕は泣き崩れていたことだろう……
そんなことを考えているとお姉さんは僕へいくつかの項目が書かれた紙とペンを差し出した。
「それじゃ、ここに名前と年齢……
それと『エクシードスキル』のことは流石にもう知っているわよね?
その力を持っている、あるいは持っているかもしれないというのならその詳細の記入もお願い」
「えっ!既に『エクシードスキル』に目覚めてる人もいるんですか!?」
「ええ、流石にそこまで多いわけではないけど……
何せ大陸中から人が集まってるからね。
今までの募集者の中にも何十人かは見られたわ」
「な、何十人……
そりゃ募集人数全体で比べりゃ多くないと言えるんでしょうけど……
ちなみに、『村のコンテストで優勝できるほどの料理の腕の持ち主』ってのは」
「全く持って関係ないわね」
「ですよね」
もちろん僕以外にも沢山の入学者がいて、その誰もが僕なんかよりずっと上の実力者である……
なんてことは覚悟してたけど……
まさかそこまでの人達がいるなんて……
僕は一体その人達に比べて何億歩遅れていることになるんだろう……
そんな打ちひしがれた気分になりつつも僕は用紙に記入し、お姉さんへと渡した。
「えっ!?15歳…!?」という呟きは無視した。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「それじゃあ最後に『魔力値』検査を行うわね」
「『魔力値』?」
初めて聞く言葉だった。
字面から魔力に関係するものだとは思うけど……
「簡単に言うとその人が持つ魔力の総量よ。
この世界には魔法という『力』が存在するけど、それは人間が持つ魔力にイメージの力を添加し、心の中で練り上げることで発生させる、っていうのは知ってるわよね?
人によって得意な魔法系統は変わってくるけど」
「はい、最初は話を聞いてもよく分かんなかったんですけど、
『魔力』っていう小麦粉と『イメージ力』っていう水を混ぜ合わせて練り上げることで『魔法』っていうパンが出来るようなものだ。
っていう説明を村長から聞いてなんとなく納得しました!」
「……なんかやたら家庭的な感じがするのは気になるけど……
まぁ、おおむねその通りよ」
つまりその人がどれだけの量の小麦粉を持っているか、ということか……
多ければ多いほど沢山の、大きなパンが作れる、というわけだ。
「そしてその人がどんな材料を持っているかで作れるパンの種類も変わる……
オーソドックスな小麦パンからサンドイッチ、クロワッサン、パンケーキ……
そういえばさっき街で見たクレープってお菓子もなんとなくパンケーキに似てたような……」
「うん、一旦パンから離れましょうか」
脱線しかけた話をお姉さんに戻された。
「ともかく、解析魔法を使ってその人の持つ魔力の量を調べるの。
素質を見るためにね」
「素質……それって……」
『勇者』の素質……ってことかな……
やっぱり『魔力値』が高い人ほど素質が……
「ああ、別に魔力値が低くても『勇者』になれない、ってわけじゃないわよ?
『勇者』の称号に必要なのは『エクシードスキル』の方だって話はお触れに書いてあったでしょ?
『魔力値』と『エクシードスキル』に特に関連性はないわ。
さっき言った募集者の中にいた『エクシードスキル』持ちの人達の中にも『魔力値』はそれ程でもない人はちらほらいたしね」
「それじゃあ素質っていうのは……」
「単純に『魔法師』としての素質ね。
『魔力値』が高い人ほど強力な魔法が使える。
そういう人には『魔法師』としての講習も用意しているの。
折角の才能を持て余すのはもったいないだろう、ってことでね。
もちろん強制じゃなくて本人の希望があればの話だけど、『魔法師』になることは結果的に『勇者』への近道になるわ。
『エクシードスキル』が大前提とはいえ単純な『強さ』も勿論『勇者』には必要な要素なんだから」
「な、なるほど……」
思えば僕は今までずっと自分の身体を鍛えることしか考えておらず、『魔法』に関しては全く意識すらしたことはなかった。
でももし、身体は貧弱な僕でも『魔法師』としての才能があったなら……
僕は俄然『魔法』に対してポジティブな感情を抱き始めた。
「それじゃあ、『魔力値』検査を始めさせてもらうけど、大丈夫?」
「はっ、はいっ!お願いします!!」
僕が思わず上擦った声で返事をするとお姉さんは左手に先程の用紙を持ち、右手を僕の額へと当てた。
そして、そのまま目を閉じると―――
「《ポテンシャル・エグザミネーション》」
その『魔法名』と共に僕の額に当てている手が熱を帯びた。
おそらく『魔力値』の検査、というものが行われているのだろう。
うおおお……なんかドキドキしてきた……!
しばらくするとお姉さんが左手に掴んでいる紙が赤く光りはじめた。
その数秒後、お姉さんの右手の熱が引き、それと同時に紙の発光も止む。
お姉さんが目を開けると先程まで光っていた紙へと目線を落とした。
おそらくそこに結果が記されているのだろう……
果たして僕には『魔法師』の素質が眠っているのかどうか……
僕がソワソワしながらお姉さんの言葉を待っていると―――。
「―――――――――えっ?」
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