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―― 天神様の御用人② ~南ちゃんの別荘~ ――
【004】ヒントをくれない烏天狗
しおりを挟む食後、スミレは部屋にもどって、スマホを手に取った。
そして龍樹にことのあらましを送る。するとすぐに返事があった。
『酒田に人形に心当たりがないか聞いて、別荘の中を探そう』
スミレも同じ意見だったので、そう返信する。
「南ちゃん、今から龍樹くんとね、別荘を見てまわりたいんだけどいいかな?」
「もちろんよ」
「案内してほしいな」
「まかせて!」
と、こうして十二月二十三日の本日は、スミレは人形探しをすることになった。二人で部屋を出て男子部屋へと向かうと、ちょうど龍樹が出てきたところだった。
「酒田」
「なに? 龍樹くん」
「一階の蝋人形がすごかったから、人形に興味がわいたんだ。ほかにもあるのか?」
「まぁね。私のおばあちゃんが、人形作家をしているのよ」
南が笑顔になる。
「この別荘は、普段はおばあちゃんしかいないから、アトリエにもなっているの。だからたくさん人形があるのよ」
人形があるのは素敵だが、これは難航しそうだなとスミレは思った。
「おばあちゃんはね、一体一体に魂をこめながら作っているといつも話ているわ」
「そうなの」
だとすれば、むしろ全ての人形が供養対象だったりするのだろうかと、スミレは首をかしげる。すると龍樹が、言った。
「特に思い出に残ってる人形はあるか?」
「どうかしら? おばあちゃんに聞いてみないと。おばあちゃん今日か明日には別荘にくると話していたわ」
「そうか、そうしたらぜひ話を聞かせてほしい」
「もちろん、いいわ」
南がうなずいた。だとすると、今日は本当に見てまわって探す以外にできることはなさそうだ。こういうとき、和成がいたら見えるのだろうかとスミレがばくぜんと考えたとき、龍樹のかたにのる鳥のぬいぐるみ――ではなく烏天狗が笑った。南には見えていないし、言葉も聞こえない様子だ。
『我には場所がわかるぞ。なるほどなるほど、供養や浄化は正しいかもしれぬが、せいかくには手助けせよというのが天神様のご指示じゃな』
それを聞いて龍樹とスミレはおどろいた。それから顔を見あわせる。
「どこにいるんだ?」
南には聞こえないくらいの小さな声で龍樹が言ったのを、スミレはそばにいたので聞き取った。
『それは、御用人がたしかめるのが仕事。これも御用人がなすべきことだ。我は龍樹の危機でなければ余計な口出しはせぬ』
烏天狗はそういうと、宙にとびあがり、ぱたぱたと羽をゆらして天井のあたりにいってしまった。ヒントは、烏天狗もくれないらしい。
「とりあえずおばあちゃんのアトリエ、見に行く?」
南の言葉でスミレはわれにかえった。
「うん。お願い」
こうして別荘での人形そうさくははじまった。
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