39 / 55
―― 天神様の御用人② ~南ちゃんの別荘~ ――
【001】南ちゃんの別荘
しおりを挟む
冬休みがおとずれた。
深珠市から二つ離れた北郷梓市の北郷梓スキー場で、和成がダブルコークというスノーボードのわざをきめた。
ゲレンデの宙を舞うすがたに、スミレは目を丸くする。
和成は昔から冬になれば深珠スキー場に入りびたってはいたが、兄がスノーボードをするすがたを見るのは久しぶりだった。
「すごい……カッコイイ」
となりで南がうっとりしたようにつぶやく。スミレと南は立っているのがやっとだ。
そこへ龍樹も上からすべってくる。龍樹は初めてスノーボードをするらしいのに、すでにリフトで中腹までいってすべりおりてくる。
「二人ともすごい……」
南が目をかがやかせているとなりで、スミレは必死に立っていた。
早くロッジに行きたい。なおすべることはできるらしいが、すでに昭人はロッジに行ってしまった。
どうしてこんなことになっているのか。それは、冬休み前にさかのぼる。
「スミレ、冬休みどうなった? 私の別荘、来られそう?」
「うん。お父さんとお母さんがいいよって」
「やったぁ」
南はうれしそうな顔をする。新聞部の部室で、ポーチを机においている。そこには黒いネコのキーホルダーがついている。
「ねぇねぇ、スミレ。一生のお願いがあるの!」
南はたびたび一生のお願いをする。何度お願いされたかわからないが、スミレはそんな南がかわいいと思う。
「なに?」
「和成先ぱいと龍樹くんのこともさそってくれない?」
「えっ、ええと……」
「推しがゲレンデにいるすがたを見たいの!」
「聞いてはみるけど」
スミレは押しに弱いわけではないが、南にはよわい。するとそれを聞いていた昭人が言った。
「俺も行きたい。別荘とかいったことがないから、ちょっと見てみたい」
「ええ、昭人先ぱいも来てもいいですよ」
「南……俺のついで感、なんとかならないのかな? ん? 俺だっていい線いってると思うんだけどね」
やれやれというように昭人が息をついた。実際、昭人も学校ではモテる部類の男子だ。ただちょっと軽いという評判があるだけで。昭人は付き合ってもすぐ別れて、また次の女子と付き合うのである。
「そうと決まればスミレ! 早速さそってきてね!」
「うん、わかった」
こうして、今どこにいるかと、まず龍樹にメッセージを送る。和成には家でも離せるからだ。
『神社横の公園にいる』
すると返事がかえってきたので、スミレは立ち上がった。
「誘いに行ってきまーす」
と、こうしてスミレは、久しぶりに深珠神社へと向かった。
「あれ? お兄ちゃん?」
するとそこには、和成の姿もあった。
「おう。さっきまで天神様がいて、俺も修行してたんだよ」
「修行?」
「ちょっとな。それよりどうしたんだよ、スミレこそ」
「え、えっとね……実は南ちゃんが、別荘にこないかって言ってて。龍樹くんとお兄ちゃんもどうかなと思って。近くにはスキー場もあるんだって」
そっちょくにスミレが言うと、龍樹が不思議そうな顔をした。
「酒田の別荘? 俺が行くのは悪いだろう」
「ううん。全然」
なにせさそって欲しいといったのは、南だ。
「俺は行く。冬休みはやっぱ遊ばないとな。龍樹も行こうぜ!」
すると和成がのり気だった。その上、龍樹のかたをバシバシとたたいてさそってくれた。
「……じゃあ、俺も良いんなら」
結果、龍樹も小さく頷いた。
ミッションに成功したスミレは、すぐに南に連絡を取った。
こうして、五人で南の家の別荘がある北郷市へと来ることになったのである。
深珠市から二つ離れた北郷梓市の北郷梓スキー場で、和成がダブルコークというスノーボードのわざをきめた。
ゲレンデの宙を舞うすがたに、スミレは目を丸くする。
和成は昔から冬になれば深珠スキー場に入りびたってはいたが、兄がスノーボードをするすがたを見るのは久しぶりだった。
「すごい……カッコイイ」
となりで南がうっとりしたようにつぶやく。スミレと南は立っているのがやっとだ。
そこへ龍樹も上からすべってくる。龍樹は初めてスノーボードをするらしいのに、すでにリフトで中腹までいってすべりおりてくる。
「二人ともすごい……」
南が目をかがやかせているとなりで、スミレは必死に立っていた。
早くロッジに行きたい。なおすべることはできるらしいが、すでに昭人はロッジに行ってしまった。
どうしてこんなことになっているのか。それは、冬休み前にさかのぼる。
「スミレ、冬休みどうなった? 私の別荘、来られそう?」
「うん。お父さんとお母さんがいいよって」
「やったぁ」
南はうれしそうな顔をする。新聞部の部室で、ポーチを机においている。そこには黒いネコのキーホルダーがついている。
「ねぇねぇ、スミレ。一生のお願いがあるの!」
南はたびたび一生のお願いをする。何度お願いされたかわからないが、スミレはそんな南がかわいいと思う。
「なに?」
「和成先ぱいと龍樹くんのこともさそってくれない?」
「えっ、ええと……」
「推しがゲレンデにいるすがたを見たいの!」
「聞いてはみるけど」
スミレは押しに弱いわけではないが、南にはよわい。するとそれを聞いていた昭人が言った。
「俺も行きたい。別荘とかいったことがないから、ちょっと見てみたい」
「ええ、昭人先ぱいも来てもいいですよ」
「南……俺のついで感、なんとかならないのかな? ん? 俺だっていい線いってると思うんだけどね」
やれやれというように昭人が息をついた。実際、昭人も学校ではモテる部類の男子だ。ただちょっと軽いという評判があるだけで。昭人は付き合ってもすぐ別れて、また次の女子と付き合うのである。
「そうと決まればスミレ! 早速さそってきてね!」
「うん、わかった」
こうして、今どこにいるかと、まず龍樹にメッセージを送る。和成には家でも離せるからだ。
『神社横の公園にいる』
すると返事がかえってきたので、スミレは立ち上がった。
「誘いに行ってきまーす」
と、こうしてスミレは、久しぶりに深珠神社へと向かった。
「あれ? お兄ちゃん?」
するとそこには、和成の姿もあった。
「おう。さっきまで天神様がいて、俺も修行してたんだよ」
「修行?」
「ちょっとな。それよりどうしたんだよ、スミレこそ」
「え、えっとね……実は南ちゃんが、別荘にこないかって言ってて。龍樹くんとお兄ちゃんもどうかなと思って。近くにはスキー場もあるんだって」
そっちょくにスミレが言うと、龍樹が不思議そうな顔をした。
「酒田の別荘? 俺が行くのは悪いだろう」
「ううん。全然」
なにせさそって欲しいといったのは、南だ。
「俺は行く。冬休みはやっぱ遊ばないとな。龍樹も行こうぜ!」
すると和成がのり気だった。その上、龍樹のかたをバシバシとたたいてさそってくれた。
「……じゃあ、俺も良いんなら」
結果、龍樹も小さく頷いた。
ミッションに成功したスミレは、すぐに南に連絡を取った。
こうして、五人で南の家の別荘がある北郷市へと来ることになったのである。
20
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
転校生はおんみょうじ!
咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。
ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。
花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。
なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
【完結】月夜のお茶会
佐倉穂波
児童書・童話
数年に一度開催される「太陽と月の式典」。太陽の国のお姫様ルルは、招待状をもらい月の国で開かれる式典に赴きました。
第2回きずな児童書大賞にエントリーしました。宜しくお願いします。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP
じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】
悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。
「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。
いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――
クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる