天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~

水鳴諒

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―― 天神様の御用人② ~南ちゃんの別荘~ ――

【001】南ちゃんの別荘

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 冬休みがおとずれた。
 深珠市から二つ離れた北郷梓市きたざとあずさしの北郷梓スキー場で、和成がダブルコークというスノーボードのわざをきめた。

 ゲレンデの宙を舞うすがたに、スミレは目を丸くする。
 和成は昔から冬になれば深珠スキー場に入りびたってはいたが、兄がスノーボードをするすがたを見るのは久しぶりだった。

「すごい……カッコイイ」

 となりで南がうっとりしたようにつぶやく。スミレと南は立っているのがやっとだ。
 そこへ龍樹も上からすべってくる。龍樹は初めてスノーボードをするらしいのに、すでにリフトで中腹までいってすべりおりてくる。

「二人ともすごい……」

 南が目をかがやかせているとなりで、スミレは必死に立っていた。
 早くロッジに行きたい。なおすべることはできるらしいが、すでに昭人はロッジに行ってしまった。

 どうしてこんなことになっているのか。それは、冬休み前にさかのぼる。



「スミレ、冬休みどうなった? 私の別荘、来られそう?」
「うん。お父さんとお母さんがいいよって」
「やったぁ」

 南はうれしそうな顔をする。新聞部の部室で、ポーチを机においている。そこには黒いネコのキーホルダーがついている。

「ねぇねぇ、スミレ。一生のお願いがあるの!」

 南はたびたび一生のお願いをする。何度お願いされたかわからないが、スミレはそんな南がかわいいと思う。

「なに?」
「和成先ぱいと龍樹くんのこともさそってくれない?」
「えっ、ええと……」
「推しがゲレンデにいるすがたを見たいの!」
「聞いてはみるけど」

 スミレは押しに弱いわけではないが、南にはよわい。するとそれを聞いていた昭人が言った。

「俺も行きたい。別荘とかいったことがないから、ちょっと見てみたい」
「ええ、昭人先ぱいも来てもいいですよ」
「南……俺のついで感、なんとかならないのかな? ん? 俺だっていい線いってると思うんだけどね」

 やれやれというように昭人が息をついた。実際、昭人も学校ではモテる部類の男子だ。ただちょっと軽いという評判があるだけで。昭人は付き合ってもすぐ別れて、また次の女子と付き合うのである。

「そうと決まればスミレ! 早速さそってきてね!」
「うん、わかった」

 こうして、今どこにいるかと、まず龍樹にメッセージを送る。和成には家でも離せるからだ。

『神社横の公園にいる』

 すると返事がかえってきたので、スミレは立ち上がった。

「誘いに行ってきまーす」

 と、こうしてスミレは、久しぶりに深珠神社へと向かった。

「あれ? お兄ちゃん?」

 するとそこには、和成の姿もあった。

「おう。さっきまで天神様がいて、俺も修行してたんだよ」
「修行?」
「ちょっとな。それよりどうしたんだよ、スミレこそ」
「え、えっとね……実は南ちゃんが、別荘にこないかって言ってて。龍樹くんとお兄ちゃんもどうかなと思って。近くにはスキー場もあるんだって」

 そっちょくにスミレが言うと、龍樹が不思議そうな顔をした。

「酒田の別荘? 俺が行くのは悪いだろう」
「ううん。全然」

 なにせさそって欲しいといったのは、南だ。

「俺は行く。冬休みはやっぱ遊ばないとな。龍樹も行こうぜ!」

 すると和成がのり気だった。その上、龍樹のかたをバシバシとたたいてさそってくれた。

「……じゃあ、俺も良いんなら」

 結果、龍樹も小さく頷いた。
 ミッションに成功したスミレは、すぐに南に連絡を取った。

 こうして、五人で南の家の別荘がある北郷市へと来ることになったのである。


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