天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~

水鳴諒

文字の大きさ
上 下
38 / 55
―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――

【038】天神様の御用人

しおりを挟む
 本日の放課後は、天神様から話があるという伝言を龍樹が持ってきたため、スミレと和成は、龍樹とともに深珠神社へと向かった。

 すると天神様は、本殿の前に立っていた。

「よく来たな」
「お話ってなんですか?」

 スミレが問いかけると、天神様が糸のように細い目をさらに細めて笑う。

「うむ。改めていうが、今回逃げ出した六体の人形の回収、ご苦労だった。それでこそ、私の御用人だ」

 天神様はそう言って一歩前へと出ると、ポンポンとスミレの頭をやさしくたたくようになでた。

「術士から鬼をはらったのもみごとだった。修行の成果が出てきたな。スミレはこれで浄化のぎほうの力があがったといえる。今後、もっともっと力はのびていくだろう」

 ほめられてスミレはてれくさくなった。

「ただ今後も人形が逃げ出すこともあるだろう。また人がつかれることもあるだろう。そんなときは、スミレには私の御用人としてかつやくしてもらうこととなる」

 それを聞くと和成が言った。

「つまりこれで終わりじゃないってことか?」
「そのとおり。御用人にはやってもらうことが多数ある。和成も、そして龍樹も、御用人の助けとなることを期待する」
「言われなくてもな」

 和成がそう言うと、龍樹もまた大きくうなずいた。

「俺も俺に出来ることをします」
「我もついているからな。龍樹を守るついで・・・に、スミレの前の御用人だった時の知識をいつでもさずけよう」

 スミレには、みんなの言葉が心強かった。

「それとな、スミレが最初につれてきたクマのぬいぐるみであるが、無事に供養を終えた。今後もしっかりと見守っておく。そのクマから伝言だ。『ママがあげたぬいぐるみを、こんなに大切にしてくれてありがとう。深珠神社でよくしてもらっているの。だから安心してね』だとのことだが」

 それを聞くと和成が驚いた顔をした。

「お前、水紀さんの思い出を供養に出したのか?」
「うん、その……私も中学生になって、もう二学期だから。まだどこかで立ち止まっていたから、前に進もうって決めて、なんとなくお願いすることにしたんだよ、あの日。まさか人形が逃げ出すところに遭遇するとは思ってなかったけどね」

 苦笑したスミレを見ると、和成が何度かうなずいた。
 すると龍樹がいう。

「供養しても思い出が消えるわけじゃない。ここでしっかりと、あずかる。人形は、本来は悪いものではないんだ。だから、この深珠神社は人形を大切に供養する。スミレの思い出がつまったぬいぐるみも」

 それを聞くと、自然とスミレには笑顔が浮かんできた。

「ありがとう。よーし! これからも私は御用人のお仕事、がんばります!」

 このようにして、偶発的ぐうはつてきに天神様の御用人になったスミレだったが、今では大切な仲間とともに、自分の意思でやることに決め、自分の足で立っている。勿論龍樹や和成、烏天狗に支えてもらうこともあるが、きっとどんな困難が今後まちうけていても、きっと乗り越えられるだろう。少なくとも、スミレはそう思っている。

 夕暮れ時の空、だいだい色とこん色が混じっている。

「さ、帰ろうか」
「おう」
「二人とも、また」

 こうして、スミレは神社の鳥居をくぐって外へと出る。それは、新しい毎日への第一歩のようだった。



 ―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ 【終】――


しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

転校生はおんみょうじ!

咲間 咲良
児童書・童話
森崎花菜(もりさきはな)は、ちょっぴり人見知りで怖がりな小学五年生。 ある日、親友の友美とともに向かった公園で木の根に食べられそうになってしまう。助けてくれたのは見知らぬ少年、黒住アキト。 花菜のクラスの転校生だったアキトは赤茶色の猫・赤ニャンを従える「おんみょうじ」だという。 なりゆきでアキトとともに「鬼退治」をすることになる花菜だったが──。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

【完結】月夜のお茶会

佐倉穂波
児童書・童話
 数年に一度開催される「太陽と月の式典」。太陽の国のお姫様ルルは、招待状をもらい月の国で開かれる式典に赴きました。 第2回きずな児童書大賞にエントリーしました。宜しくお願いします。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

処理中です...