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―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――
【022】六芒星
しおりを挟む図書館に行くと、すぐに龍樹がスミレに気がついた。
「龍樹くん、あのね、新しい心霊スポットの話なんだけど」
スミレは連絡帳のコピーを一枚龍樹にわたす。そして旧深珠トンネルの件と、昭人の祖父の家の蔵について話した。すると龍樹がじっと紙を見てから、そばのペンケースから定規と赤ペンを取り出す。
「心霊スポットには規則性があるかもしれない」
「え?」
「旧深珠トンネルと昭人先輩の蔵は、線を引くとななめの直線になるだろう?」
「うん」
「それでこれまでの、深珠ロッジとビルの地下、縁切り地蔵は、結ぶと三角形になる」
「本当だ」
「これを重ねると、右上にもう一カ所あれば、六芒星が完成する」
コピー用紙を見て、スミレは目を丸くする。
そして最後の、まだ聞いていない丸印がありそうな場所には、昔から心霊スポットだと言われている、深珠ハイランドパークの花園迷路が位置している。
「もしこの仮説が当たっているなら、残りは三体かもしれないし、六芒星にもなにか意味があるのかもしれない」
「六芒星の意味……」
うーんとスミレはうなってみる。
「そういえば、六芒星を書いて、真ん中に好きな人の名前を書くと、願いが叶うっていうおまじないがあるよね」
「そうなのか?」
「前に二年生の先ぱい、あ、優香先ぱいに聞いたって、南ちゃんから教わったことがあるよ」
「関係があるのかないのかはわからないが覚えておく」
龍樹がうなずいたのを見てから、スミレは手をあわせる。
「それでね? 昭人先輩が日曜日に、確かめに来てほしいっていうの」
「俺はかまわない。スミレと和成先ぱいは?」
「お兄ちゃんは多分今日も公園でスケボしてるから、今から話しに行こうかと思って。いなかったら家で話しておくよ」
「俺も言っていいか? 連絡は密な方が良い」
「うん」
こうして二人で図書館を出ることにした。
スミレは、龍樹が歩くのが速いので、いつもより早足だ。これを考えると、いつもゆっくり歩く和成は、歩くのがおそいのだろうかとスミレは考える。和成と歩いていると、早足になることはないからだ。
いつもは別れるT字路で、龍樹がスミレの家の方角についてくる。
すぐに公園にとうちゃくすると、やはり和成の姿があった。
「お兄ちゃん」
スミレが声をかけると、気づいた和成が歩みよってくる。
「ん。なにかあったのか?」
和成は、スミレと龍樹を交互に見た。
「心霊スポットの話」
「おー。それなら向こうのベンチで話そう」
和成がしせんでしめした方角には、四人がけのベンチがあった。テーブルを挟んで二人ずつ座れ、やねがある。そこに龍樹が、赤丸をつけた心霊スポット連絡帳の最新版のコピーを置いて、ことのあらましを説明した。
「なるほどな。いいんじゃないか? 日曜日。ただ、人形集めは急いだほうがいいだろうし、俺は明日も明後日も空いてるから、先に旧深珠トンネルに行かないか?」
「俺も空いてます。スミレは?」
二人の声に、スミレは頭の中で予定を思い出す。
「明日は放課後に、保健委員会の月一の集まりがあるから、あさってがいいな」
「じゃ、あさってで決まりだな」
和成がまとめた。こうして三人の次の人形探しの予定が決まった。
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