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―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――
【019】天神様の考え
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急ぎ足で深珠神社へと向かうと、本日も公園の四番目のブランコに、天神様が座っていた。こいでいるわけではなく、ゆったりと座っている。糸目の天神様は、スミレに気がつくと顔を向けて、口元に笑みをうかべた。
「一人か?」
「うん。天神様に聞きたいことがあってきたの」
スミレはそう言うと、一度大きく深呼吸をした。それからまじまじと天神様の目を見る。
「私は天神様の御用人なんだよね?」
「いかにも」
「それはお兄ちゃんでもいいの?」
率直にスミレがたずねると、天神様がころころと笑った。
「よくはない。だが、和成が代わるというくらいに、スミレは愛されているということだ。危険な目にあわせたくないのだろう。別に私はその気持ちを無碍にはしないぞ?」
それを聞き、スミレはくちびるをぎゅっと引きむすぶ。
「どうするスミレよ。和成に任せるか?」
「私がやります! 私だってお兄ちゃんを危険な目にあわせたくないです!」
すると天神様がふっと笑った。
「和成には、『スミレが任せると言ったら、それでもよい』とつげたのだ。スミレがそう言うとは、私は思っていなかったからな」
「えっ」
スミレがおどろいたとき、天神様が公園の入り口の方を見た。
「だそうだ。スミレの気持ちが分かったか?」
その言葉にスミレが顔を向けると、そこには和成と龍樹が立っていた。
いつの間に来たのだろうかと考えていると、天神様が龍樹を見た。
「龍樹はどう思う?」
「俺は……」
龍樹は一度言葉をくぎると、うでを組んだ。
「スミレがいいと思います。これまでをふりかえると、スミレは俺のことも和成先ぱいのことも、窮地に見捨てようとはしなかった。そういうスミレだからこそ、天神様の御用人――使いにふさわしいと俺は思います」
龍樹にそんな風に思われていたのかと感じ、スミレは思わず照れてしまった。
天神様が続けて和成を見る。
「和成。まだなっとくできぬか?」
それを聞くと和成が、はぁっと大きく息をはいた。
「仕方ないから、俺は手伝いの方を頑張りますよ。いやぁ、絶対俺が御用人の方が役に立つと思うけどな!」
実際それは事実だろうと思い、スミレが瞳を不安そうに揺らすと、和成が歩みよってきて、ぽんっとスミレの頭を叩くようになでた。
「俺がついてるから安心しろ。龍樹もいる」
「ありがとう」
スミレがうなずいたときだった。天神様が言う。
「しかし、御用人としてはたしかに修行が必要なのは事実であるな。私が今宵からスミレを直接きたえよう。そうすれば、力も自然と身につく」
「修行って、どんな風にすれば?」
首をかしげてスミレが天神様を見ると、天神様は優しい顔で笑っていた。
「スミレはいつも通りにしておればいい。すぐにわかる」
「あんまり無理させないでくれよ」
和成が呆れたような声を出す。すると龍樹が言う。
「和成先ぱいはちょっと過保護すぎないか?」
「うるさい」
そんなやりとりをしてから、二人が顔を見合わせでどちらともなく笑った。和やかにかわった空気に、自然とスミレもりょうほほを持ち上げる。その時、パンと天神様が手を叩いた。
「みな、頑張るように」
こうして改めて、三人でがんばることに決まった夕暮れだった。
「一人か?」
「うん。天神様に聞きたいことがあってきたの」
スミレはそう言うと、一度大きく深呼吸をした。それからまじまじと天神様の目を見る。
「私は天神様の御用人なんだよね?」
「いかにも」
「それはお兄ちゃんでもいいの?」
率直にスミレがたずねると、天神様がころころと笑った。
「よくはない。だが、和成が代わるというくらいに、スミレは愛されているということだ。危険な目にあわせたくないのだろう。別に私はその気持ちを無碍にはしないぞ?」
それを聞き、スミレはくちびるをぎゅっと引きむすぶ。
「どうするスミレよ。和成に任せるか?」
「私がやります! 私だってお兄ちゃんを危険な目にあわせたくないです!」
すると天神様がふっと笑った。
「和成には、『スミレが任せると言ったら、それでもよい』とつげたのだ。スミレがそう言うとは、私は思っていなかったからな」
「えっ」
スミレがおどろいたとき、天神様が公園の入り口の方を見た。
「だそうだ。スミレの気持ちが分かったか?」
その言葉にスミレが顔を向けると、そこには和成と龍樹が立っていた。
いつの間に来たのだろうかと考えていると、天神様が龍樹を見た。
「龍樹はどう思う?」
「俺は……」
龍樹は一度言葉をくぎると、うでを組んだ。
「スミレがいいと思います。これまでをふりかえると、スミレは俺のことも和成先ぱいのことも、窮地に見捨てようとはしなかった。そういうスミレだからこそ、天神様の御用人――使いにふさわしいと俺は思います」
龍樹にそんな風に思われていたのかと感じ、スミレは思わず照れてしまった。
天神様が続けて和成を見る。
「和成。まだなっとくできぬか?」
それを聞くと和成が、はぁっと大きく息をはいた。
「仕方ないから、俺は手伝いの方を頑張りますよ。いやぁ、絶対俺が御用人の方が役に立つと思うけどな!」
実際それは事実だろうと思い、スミレが瞳を不安そうに揺らすと、和成が歩みよってきて、ぽんっとスミレの頭を叩くようになでた。
「俺がついてるから安心しろ。龍樹もいる」
「ありがとう」
スミレがうなずいたときだった。天神様が言う。
「しかし、御用人としてはたしかに修行が必要なのは事実であるな。私が今宵からスミレを直接きたえよう。そうすれば、力も自然と身につく」
「修行って、どんな風にすれば?」
首をかしげてスミレが天神様を見ると、天神様は優しい顔で笑っていた。
「スミレはいつも通りにしておればいい。すぐにわかる」
「あんまり無理させないでくれよ」
和成が呆れたような声を出す。すると龍樹が言う。
「和成先ぱいはちょっと過保護すぎないか?」
「うるさい」
そんなやりとりをしてから、二人が顔を見合わせでどちらともなく笑った。和やかにかわった空気に、自然とスミレもりょうほほを持ち上げる。その時、パンと天神様が手を叩いた。
「みな、頑張るように」
こうして改めて、三人でがんばることに決まった夕暮れだった。
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