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―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――
【013】連絡先の交換
しおりを挟む外はすでにうす暗かった。龍樹がタクシーをよんだので、三人でそれにのりこんで、深珠神社を目指した。タクシーからおりるとまっすぐに龍樹が公園へと向かったので、スミレもそのあとについていく。それは和成も同じだった。
本日も四番目のブランコに、天神様が座っている。
「天神様、この子みたいです」
スミレが人形をわたすと、天神様が受け取った。細い目をさらに細めて笑った天神様はまんぞくそうにうなずいている。
「よくやってくれた」
片手でにぎれるサイズの人形は、長いかみところどころほつれていて、ドレスもボロボロだ。
「どうやらそこの者が助力してくれたようだな」
天神様が和成を見る。和成は天神様をまじまじと見ている。それから考えこむような顔をしたあと、首をふった。
「妹を変なことにまきこまないで下さい」
「変なことというが、お前も見えている様子だな」
そう言われた和成がぐっと言葉に詰まっている。それを見て、スミレは思わず聞いた。
「お兄ちゃんこそ、どういうことなの?」
「うむ。私が見るかぎり、スミレの兄は過去に――」
天神様がなにかを言いかけたときだった。
「言うな!」
けわしい声を和成があげた。その剣幕にスミレはおどろく。
「まぁよい。これもなにかの縁だ。縁は大切にしなければならない。和成、か。お前も龍樹とともに、私の御用人であるスミレの手助けをするように」
天神様の声に、和成がまゆの間にしわをきざむ。
「言われなくたって、スミレがあぶないことをしたり、龍樹が、一年があぶないことをするっていうんなら、俺は二年だからな。とうぜん連れて行ってもらう」
それを聞くと、ふっと笑ってから天神様の姿が消えた。それを見てから、和成が二人に顔を向ける。
「しょーがねぇから手伝ってやるよ。とりあえず龍樹、連絡先を教えてくれ。ねんのため」
はぁっとため息をついた和成を見ると、龍樹がうなずいた。
「よろしくおねがいします」
龍樹がスマホを取り出す。その場で龍樹と和成が連絡先を交換した。
「スミレも」
龍樹に言われて、まだ交換していなかったと思い出したスミレも交換する。学校のグループメッセージがあるからいいかと思っていたが、きちんと交換した。『スミレ』と名前で呼ばれたのがなんとなくくすぐったい。
「なにかあったら連絡します。今日は助かりました、和成先ぱい」
「まったくだよ」
龍樹にうなずいてから、和成がスミレを見る。
「とりあえず今日は帰るぞ、スミレ」
こうして龍樹と別れて、スミレは和成とともに帰ることにした。
星がかがやきはじめた空の下を二人で歩く。
最初は二人とも無言だったのだけれど、少しすると和成が言った。
「スミレ」
「なに?」
「とにかくあぶないことをする時は、俺を連れていけ」
いつもは意地悪なところがある兄だけれど、いいところもあるじゃないかとスミレは感じた。今日だって助けてくれた。龍樹と二人だけでは無理だった。
「ありがとう、お兄ちゃん」
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