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―― 天神様の御用人 ~心霊スポット連絡帳~ ――
【010】ケンカするほど仲が良い?
しおりを挟む帰り道を進んでいくと、深珠中央公園が見えてきた。
市内では最大規模の公園だ。
歩きながらちらりと中を見れば、スケートボードをしている人々が見える。スミレはその中に、和成の姿をみつけた。
和成は運動神経が万能だ。
ただ、帰宅部でいずれの運動部にも所ぞくしていない。放課後はこうしてスケートボードをしたり、時にはバスケをしたりしている様子だ。冬はスノーボードが好きらしく、毎日深珠スキー場に出かけている。
「あ、スミレ」
すると和成が、スミレに気がついた。和成はそばにいた友達になにごとか話してから、スミレの方へと歩いてきた。
「帰るか」
「うん。お兄ちゃんはもういいの?」
「おう。俺もちょうど帰ろうと思ってたんだよ」
こうして二人で帰ることになった。
スミレは決して運動神経が良い方ではないし、勉強の成せきも平凡だ。
家に帰ると、母が帰っていて、二人に声をかけた。
「ただいま」
声を返したスミレは、リビングのソファに座って、改めて連絡帳のコピーを見た。
赤丸の上に、取り出したボールペンで、金曜日の放課後と付けくわえた。
次に行く地下室でこそ、きちんとアラームの時間内に外に出なければと考える。
「なに見てんだよ?」
するとひょいっと和成が、スミレの手からコピー用紙を取り上げた。
「ちょっと、返して! 勝手に見ないで!」
「なんだこれは……」
「関係ないでしょ!?」
「これ……心霊スポット連絡帳……?」
和成はまゆの間にしわをきざむと、じっと紙を見た。その表情はこわい。
「行くなよ」
「へ?」
「あぶな――い……その、くらだない」
「い、行かないよ!」
「そんなので喜んでるのは子供だけだからな。まぁ、スミレはお子様だからな?」
「うるさいな! 返して! 新聞部のネタなの!」
スミレはなんとか心霊スポット連絡帳のコピーをうばい返した。
「あらあら二人とも、仲が良いのね、あいかわらず。今夜はコロッケよ」
そこへ顔を出した母が、くすくすと笑った。
「べつに? 仲なんかよくないぞ?」
「お兄ちゃん……それ、私のセリフ!」
二人が言い合うと、水紀がりょうほほを持ち上げた。
「ケンカするほど仲が良いっていうじゃない」
そんなものだろうかと、スミレはなやんだ。
この日食べた、母のコロッケもひじょうにおいしかった。
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