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第五話 親友候補

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「水波さん、ウチはなにしたらええ?」

 プレイヤー歴は長いが、サポーター歴のない柚子は小春の後を追って体育倉庫にやってきたものの、やはり、人との会話には緊張する(武留以外)。

「んふふ~。まずは私を『小春』と呼んでくたさいまし!」

「ええんか?」

「私も柚子ちゃんって呼びたいから!!」

「わかった」

 すると小春は、「青春の第一歩!!」と満足気だった。

「基礎トレ筋トレ中はここでボール磨きします!!」

「ボール磨きは得意やで」

「そうなの?! んふふ~頼もしい!!」

 男たちが基礎トレ筋トレをしている間、柚子と小春はボール磨きをしながら会話を弾ませ、どんどん打ち解けていった。

「監督は中二病なん?」

「ん? お姉ちゃんの眼帯の話?」

「そう」

「あれは、名誉の負傷だよ」

 そして、妹はかつて現役だったころの姉の勇姿を語り始めた。

 姉は、女子バレー部強豪高校のエースだった。
 そして、キャプテンでもあった。
 姉は、高校最後の試合、最終局面。
 後一点で優勝。という時に、ボールをレシーブした反動で顔面から支柱に衝突。
 右目を負傷し、失明。
 チームは勝利したものの、選手の大切な将来は失われてしまった。

「というわけです」

「全然見えへんの?」

「うん。右目は全然。最近はそれに合わせるように左目も見えづらくなってるみたい」

「……でも、バレーは諦めきれんかったんやな」

 柚子自身も、そうだったように。

「私たち三兄弟はバレーの魅力に見せられし三兄弟だから!」

「はは、なんやそら」

 柚子が久しぶりに自然に笑った。
 その笑顔を見て、小春はんふふ!!と笑った。

「なんや」

「柚子ちゃんって、可愛いね」

「は? 可愛いんはあんたやろ」

「私は普通だよ」

 そして、小春は「は~ぁ」とため息を吐いた。

「私、柚子ちゃんと親友になりたいな」

「親友ってなろうと思ってなるもんでもないやろ」

「じゃあ、なれるように誘惑していくからね!!」

「いや、なんで誘惑?」

 小春との時間は、暖かく、穏やかだった。
 でも、武留との騒がしい時間も、なんだか嫌いではない柚子だった。


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みんなの感想(1件)

坂巻佐奈
2024.03.14 坂巻佐奈

文化部から運動部への転身!
わたしが学生時代に挫折したことだったので、素直にすごいなと思います。

夜鮫恋次
2024.03.14 夜鮫恋次

文化系から運動系は難しいですよね。
私も挫折→文化系に逆戻りパターンでした笑笑
さて、たけるくんはどう成長するんでしょうね!

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