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第十六話

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キャンプ当日。
宿題は、なんとか昨夜全部終わらせることができた。
エリーの宿題については、やはり難しい様でなんとか3分の1くらいまで終わらせたようだ。

とりあえず、今日の昼飯は各自弁当持参という事なのでキャンプ場で作る必要はない。
後の食材は昨日買っておいた。
今夜はバーベキューをする予定だ。
後は何か適当に買っといた。

買い出しした食材なんかを蒼ネエの車に積み込んで、いざ出発しようと車に乗り込んだ。

「ちゅーかさ…なんでその格好な訳?」
「いや…動きやすい格好でって言ったじゃないか…野営だし…。」
エリーは、こっちの世界に来た時の格好で車に乗っていた。
「その格好で皆の前に出るつもりか?それにちいさいのじゃなくて、デッカい杖まで持って来てるし…。」
「ダメなのか?」
「いや…まさか魔導士だとバレる事は無いだろうけど…完全に厨二扱いされるぞ…。」
「あの…この前から聞きたかったんだが…厨二とはなんなのだ?」
キャンプ場に向かう車の中で、厨二病について話してやった。

「な…な…私は…断じて妄想癖など無いぞ!」
「解ってるよ。解ってるけど、お前の素性を知らないヤツには厨二にしか見えないって言ってるんだ。」
「………てもこの服の方が動きやすいんだが…やはりだめか?」
「いや、無理にとは言わないけど…。」
結局そのままの格好でキャンプ場に到着した。

俺たちが着いてすぐ、佐波井の母親が残りの皆を連れて到着。
帰りはまた迎えに来てくれるそうだ。

「エリーちゃん可愛いぃ~!」
佐波井がエリーに纏わりはじめた。
「なになに?なんのコス?」
「コス?」
ほらツッこまれた。
「ほっといてやれよ、好きでやってんだから(笑)」
「やっぱりヨーロッパって日本のアニメとか流行ってるの?」
「???」
ヤバイ…フォローしないと…。
「流行ってるらしいぞ。それもきっと何かのキャラなんだろ。」
「そっかぁエリーちゃんはそーゆーの好きなんだねぇ。」
夏休み明けには、オタクキャラで定着してそうだな。

「クレアも好きだよね?」
「ん?あぁアニメは好きだよ。最近は深夜アニメが粒ぞろいだ!」
クレアってそーだったんだ。
特撮とかも好きなのかな?
後で話してみよう。

「保田も隠れオタだよね?」
「別に隠してるわけじゃないけど…まぁ俺もそっち寄りだな。」
なんだ皆、結構そーゆーの好きなんだな。
この歳でアニメとか特撮にハマってるのって俺くらいかと思ってた。

そんな話しで盛り上がってると蒼ネエが声を掛けてきた。
「えっと…とりあえず紹介してくらないかな?私だけ皆の事、知らないし…。」
「あぁそうだな、えーっと…。」
とりあえず青ネエを紹介して、皆もそれぞれ自己紹介をしていった。


§


キャンプ道具は成瀬と佐波井があらかた持っていた。
テントにバーベキューセットにその他諸々結構本格的なヤツまで持って来てるし…。
この二人って、さっき聞いたけど幼稚園からの幼馴染なんだそうだ。
家も近所らしい。

昼食の後、男3人はテントを張り…いや…変な意味じゃ無いぞ(汗)
女4人は夕食の下準備をする事になった。

テントはスゴく簡単に張れる様になっていて、あっという間に2張り出来上がった。
夕食の下準備も早々に終わった様で、材料なんかを日陰になったテント脇に持ってきた。
リクライニング式の折りたたみ椅子も人数分あったので、テントの前に適当に並べてた。

「あんた達、晩御飯までまだ時間あるから鍾乳洞にでも行ってきたら?私はここで留守番してるから。」
蒼ネエはリクライニング式の折りたたみ椅子の一つを陣取り、クーラーボックスからビールを出して飲みはじめてた。

「飲みたいだけやん。」
「いいじゃ無い。今日はもう運転しないんだから。それに、折角平尾台に来てるんだから、鍾乳洞くらい入ってこなきゃでしょ。」
「蒼葉さんは行かなくていいんですか?」
佐波井が申し訳なさそうに聞いた。
「いーのいーの、どうせ留守番もいるでしょう?それに私は疲れるのイヤだもん。」
「じゃ遠慮なく。」

よく考えたら蒼ネエを外せば丁度3組のペアになる訳だな。
自然と俺とエリー、成瀬と佐波井の幼馴染ペア、保田と八尋のペアになっていた。
それはそうと…。
「エリー…結局その格好のままなんだな。」
「いーじゃないか。似合ってるんだから。ねぇエリーちゃーん。」
成瀬はエリーに会えたのが嬉しいのか、それともキャンプで浮かれてるのか、妙にテンションが高い。

八尋と保田はなんとかってアニメの話しで盛り上がってる。
学校では一緒に居るところなんて見た事ないけど、この2人なかなかお似合いなんじゃないのかな?

キャンプ場のある平尾台。
山口県の秋吉台は有名だけど、同じカルスト台地なのにマイナーなんだよな。
ここにも当然、鍾乳洞が幾つかある。
キャンプ場から1キロくらい下った所に千仏鍾乳洞ってのがあって、鍾乳洞の途中からは地下水に浸りながら進めてアドベンチャー感満載なのだ。

鍾乳洞に入ると真夏とは思えない程の冷気が纏わり付いてくる。
「さ…寒いな…。」

奥へ進めば進む程、どんどん寒くなっていく。
そして途中から地下水の小川の中を進むんだけど…足が冷たいのなんのって…。
「サ…サトル…そんなに早く進まないでくれ…。あ…足場が悪くて…あっ…。」
入り口の係員に『これは預かっとくね。』と杖を奪われたエリーは最初のうちはブツブツと文句を言いながらついて来てたんだけど、途中から楽しくなって来たのか、変なテンションではしゃいでいた。
まぁ皆んな凄く楽しそうになってるしてるのは話し声で解る。
「わっちょ…!」
突然エリーが騒いだかと思った瞬間…。
バシャーン

俺を巻き込んでコケた…。
「うわぁ~!!冷てぇ~!!」
「す…す…すまない(汗)」
「何してくれてんだバカヤロー!」
「ごめん…本当にごめん。」
「ぅう…寒い…。もう出るぞ。」
4人に爆笑されながら、慌てて外に出た。


§


鍾乳洞の中を流れる水の冷たさはハンパなかった。
空気の冷たさなんて比べものにならない。
まるで氷水でも浴びせられた様に冷たい。
ずぶ濡れの状態で鍾乳洞から出て来た俺とエリーを見て、入り口のオッチャンがタオルを投げてくれた。
「早よ陽の当たる所に行っといで。」
「すいません。タオル後で返します。」
「えーよ、持っていきな。」
「あざーっす。」

「サトル大丈夫か?」
「早く戻って着替えないと風邪ひくぞ。」
成瀬と保田が半笑いで言ってくる。

「速水さんも早く着替えないと。」
「エリーちゃん、テントまで走ろうか?よーいドン!」
八尋は心配そうにエリーに声を掛けてるのに、佐波井は突然競争を持ちかけて走り出した。
でもここ…鍾乳洞の入り口辺りはとんでもない角度の坂になっている。
それも普通に歩くのも大変な角度だ。
それをやり過ごしても、キャンプ場まではずっと上り坂。
こんな坂走って登るなんで無理だ。
俺は早々に諦めて日向を選びながら歩いた。
意外にもエリーは佐波井について行っている。
ちょっと離れて保田も坂道を駆け上がっていた…流石スポーツ万能男だ。
走って行った3人を見送って、俺たちもゆっくりと徒歩でキャンプ場へ向かった。

「成瀬はさ、佐波井と付き合ってはないのか?」
「いやいや、ただの幼馴染だから。」
「ホントかなぁ?向こうはそう思って無いかもよ?」
俺の問いに八尋クレアも乗ってきた。

「そう言う八尋ちゃんも保田と良い雰囲気だったじゃん。」
「え?いや…ま…まともに話したの今日が初めてなんだけど…。」

まぁこのメンバー…いままでなんの接点もなかったもんな。
俺は成瀬と友達。
その成瀬は佐波井と幼馴染。
佐波井とクレアは友達同士…じゃなんで保田?
あいつだけ特に繋がりがないけど…まぁ佐波井が多分繋がってるんだろうな。
でもなんとなく、保田と八尋をくっつけるつもりでメンバー選んだのかな?って気がする。
多分クレアが保田のコト気になってんだろうな。
さっきの反応がそれを物語ってる。

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