12 / 21
第十一話
しおりを挟む
しばらく力が入らなくて、立ち上がることもできなかった。
ブレスレットが眩しく光った後、辺りの空気は一変した。
ミヨがブレスレットから出てた神力を解放するのに成功したみたいだ。
館内で倒れてた観光客も自体を飲み込めずに動転していた。
そりゃそうだ、多分この人たちにとっては、ただ謎の現象で気を失ってた感じなんだろう。
『おい…大丈夫か?』
床に落ちているスマホからミヨの声が聞こえる。
慌てて拾い上げて耳に当てた。
「大丈夫だ、ちょっと気圧されただけだ。」
『そのブレスレット…大事に展示されてるんだな…。』
「あぁ、なんかココの目玉みたいだぞ。」
『そうか…仕方ないな。そのブレスレットは諦めるとしよう。』
「いいのか?」
『いいんだ、お気に入りだったが、大事にしてくれているなら、そのままで構わん。』
「ってかさ、結果的にだけどこんな物騒なモノ忘れて帰るなよな。」
『物騒とはなんだ!私の力が宿った神聖な宝具だぞ!』
「自分で神聖な…とか言ってんじゃねぇよ!他には無いだろうな。」
『大丈夫だ……と思う。』
「自信ないのかよ!」
『まぁなんかあった時はまた頼む。』
「あー!あー!聞こえない!聞こえないぞ!次は頼まれても何もしないからな!」
ミヨの言葉を遮るように大きな声で断った。
「とりあえずお前の頼みごとってのは、これで終わりだよな?」
『そうだな。』
「後はエリーの件、早いとこなんとかしてくれよ…。」
『あぁ…その事なんだが…。』
「ん?」
『また後で詳細を伝える。』
「今言えばいいだろ?」
『まぁまぁ、そう急かすな。こちらからまた連絡を入れるから待っておれ。』
「気ぃ持たせやがって…。なる早で頼むぞ。」
例えランクが低くても相手は神様なんだよな…大丈夫か?俺…?
通話を切って辺りを見渡した。
すぐ横にエリーが立ち尽くしていた。
「サトル…なんか身体が変だ………なんかこう…体の底から力が湧いて来る様な…。」
言われてみれば、妙に元気になった気がする。
コレって神力を浴びた影響なのかな?
「サトルー!エリーちゃーん」
入り口でへたり込んでた蒼ネエも元気になって駆け寄ってきた。
『どーしたんだろ?なんかさっきまでダルかったのに急に身体が軽くなった感じがするのよねぇ。」
やっぱりこの辺に居た人達には少なからず神力が影響している様だった。
とりあえず、俺の…と言うよりはミヨの用事は済んだから、この後やる事が無くなった訳だけど…どっかで昼飯でも食べるか…。
「蒼ネエ!飯行こ飯!」
§
昼飯は近所の定食屋で済ませて、周辺を散策する事にした。
「ねぇサトル。」
不意に蒼ネエが声を掛けてきた。
「あのさ、せっかくこんな所まで来たんだから温泉とか入って行かない?」
「温泉?このクソ暑いのに?」
「うん、実はね、この近くに友達の家があるのよ。しかも温泉宿。」
「今から行っても無理なんじゃね?」
「大丈夫!もう部屋押さえてもらってるから。」
「早っ!なに?付いて来た理由ってそれ?」
「吉野ヶ里行くって言うからさ、久しぶりに会いたいなぁって…。」
「だったら早く言えば良いのに…。まぁ明日もやる事ないけどさ…。てもおれ着替えとか持って来てないから買いに行かなきゃ…。」
「大丈夫…とりあえず適当に持って来てるから。」
妙に荷物がデカイと思ったらそれだったのか…用意周到すぎるだろ…。
「ところで、やっぱりさっきの出来事って…。」
「いい加減信じろよ。エリーは元々別世界の住人だし、ミヨって云うあの世の番人みたいな神様もホントに存在してるんだから。」
「うん、確かにあんな体験しちゃったらねぇ…。また後でゆっくり聞かせてよ。エリーちゃんの事も改めてちゃんと知りたいし。」
「やっと信じてくれる気になったか…。」
蒼ネエと話している間、エリーはお土産屋さんの中で色々と物色していた。
「コレはなんなのだ?」
エリーにとってはお菓子よりも置物とかストラップみたいなお土産の方が気になるようだ。
「コレはキーホルダーだ。ほらココに家の鍵とかをぶら下げるんだ。」
「ほー。ではコレは?」
次から次に気になるモノを持って来ては、説明を求めて来る。
好奇心旺盛なのはいいけど、ほっとくと店にあるモノを全部解説させられそうで怖い。
散々物色した後、結局カタカナで『エリー』と焼印が押してある名前入りの木札と勾玉の付いた首飾りを蒼ネエに買ってもらって大喜びしてる。
蒼ネエも甘いよなぁ。
「そろそろ宿に行こうか?」
「そうだな、晩飯にはまだ時間はあるけど歩き回ってちょっと疲れたし。」
「ん?何処かに泊まるのか?」
あぁ、コイツは聞いてなかったんだ。
「近所に蒼ネエの友達の家がやってる温泉宿があるんだってさ。今日はそこに泊まるぞ。」
§
話によると温泉宿まで10分も歩けば着くって事だった。
なのに既に30分は歩き回ってる。
蒼ネエ…絶対道に迷ってるな。
「なぁ、宿ってどこなんだよ?」
「うーん…この辺の筈なんだけどなぁ…。」
「住所とか分かんないのかよ?」
「分かんない。ついでに宿の名前も分かんない。」
「なんだよそれ…その友達に電話してみたらいいじゃん。」
「あぁ!」
まさか思いつかなかったのか?
結局、蒼ネエの友達に迎えにきてもらって、やっと宿に辿り着いたのは夕方と言うより夜7じを回ってた。
「改めて紹介するね。短大時代の友達の茜ちゃん。この旅館の若女将。」
「どもども。蒼ちゃんとは学校ではアカアオコンビって呼ばれてたよ(笑)今日はゆっくりしていってね。」
なんか凄い気さくな人でよかった。
「とりあえず、お部屋に晩御飯用意しといたから、先に食べちゃってね。」
「茜ちゃんありがとー!」
「まぁウチは流行ってない温泉宿だから、今日もあんた達以外に二組みしか泊まってないから。温泉はロビーの右手に有るから晩御飯食べたら入っといで。」
豪華な夕食を食べながら改めて蒼ネエにコレまでの経緯を話した。
「え?って事は、サトルは気絶してただけなのに、死後の世界に行っちゃってたって事?」
「そう…で、ミヨって番人に追い帰されたんだよ。」
「エリーちゃんは別の世界で死んじゃったのよね?」
「そうだ、私の場合はその死後の世界からこっちの世界に迷い込んで来たんだけどな。」
「死んじゃったのに明るいのね…。」
「なんか死ぬ前のベストな状態で再生されたらしいよ。」
「で?吉野ヶ里まで来た理由って言うのがお昼にあった不思議な出来事な訳ね。」
「まぁそんなトコだな。で、このアプリでミヨと連絡が取れるって訳だ。」
「ふーん…あの世の番人と連絡が取れるんだぁ。神様って凄いね。」
他人事だと思って…。
「そういえばエリーの事、また後で連絡するって言ってたな。行き先が決まったのかな?」
「私は別にこのままでも良いんだけどな…。」
「そうもいかないんじゃないか?お前ってこの世界じゃかなりイレギュラーな存在だからな。」
そんな話をしているとミヨから着信がきた。
「はいはーい。」
『エリーの処遇が決まったぞ。』
「やっとか…。」
『おい!ちょっと待て!私はお前の頭のドアップなんか見たくないぞ。』
「ん?」
『ビデオ通話だ!馬鹿者!察しろよ!』
慌てて耳からスマホを離し、テーブルに置いた。
「こんな機能もあったのか…。」
「わぁ!貴女がミヨちゃん?はじめましてぇ蒼葉でーす。」
『誰だお前は?』
「従姉妹の姉ちゃんだよ。」
『なんでそんなヤツがココに居るんだ。』
「お前が所構わず連絡してくるからだろーが!」
『ま…まぁ仕方ない…他には知られるなよ…。』
薄暗い画面にバツの悪そうな顔をしているミヨが映る。
『それは良いとして、エリーの事だが…。』
そうだった、エリーの行き先が決まったって話だった。
『協議の結果、そのまま其方の世界に居てもらうことになった。』
「え?え??なんで?」
『まぁあれだ、他の世界に行くためには、また死ななきゃ生まれ変われないからな。』
「はぁ?じゃどーすんだよコイツ。戸籍も何も無いんだぞ。」
『その辺は問題ない。お前の帰国子女の従姉妹と云う設定で其方の世界の記録を改ざんしておいた。』
「帰国子女の従姉妹って…まさかあの話し聞いてたのか?」
ミヨのヤツ絶対この前、学校で成瀬についた嘘を聞いてたな…。
「でも住むところとか、年齢的に学校行くか働かなきゃだろ…。」
『住む所ならお前の家があるじゃないか。学校も同じところに通えるようにしといてやったぞ。』
「な…なんでウチなんだよ。しかも学校もって…。」
『従姉妹なんだろ?』
ミヨは、してやったりな感じでニヤリと笑ってる。
『とりあえず生活費も必要だろ?明日、帰りに宝くじを一枚買ってみろ。当ててやるから。』
「当ててやるって…なんだよそれ…。」
ホントに当たるのか?
『ところで蒼葉と言ったか?』
「はいはい。」
『私とエリーの事は他言無用で頼むぞ。』
「はい…まぁ言っても誰も信じてくれないでしょうけど。」
『エリー、お前もそっちの世界で頑張れよ。』
「なんか良くわかんないけど、ありがとうございます。」
『それとサトル。』
「ついでみたいに言うな。」
『今後なにかあった時の保険としてこのアプリはそのままにしておく。何かと便利だしな。』
「えーもう用事とか無いだろ?」
『まぁいいじゃないか。保険だ保険。』
「なんか引っかかるなぁ…。」
『じゃぁな。また…。』
「あーちょっと待て!」
『なんだ?』
「エリーの魔法とか持ち込んだ魔道具って使っても問題ないのか?」
『…うーん問題ありだな。』
「どーすんだよ?」
『考えておく。じゃぁまた後で連絡する。』
そう言い残してビデオ通話は切れた。
ミヨってやっぱり自己中だよな…。
「ねえねえ、ミヨちゃんってアンタの話だと軽く1800年は生きてるって事でしょ?凄く若くない?」
「そこじゃないだろ…。」
「あのぉ…私はどおすれば…。」
「とりあえず今のままで良いんじゃない?ね!サトル。」
「えー…。」
最悪だ…両親の居ない間の気ままな独り暮らしの予定が台無しだ…。
結局、エリーを押し付けられてしまったじゃないか…。
「じゃエリーちゃん、お風呂行こっ。」
ふて腐れてる俺を余所に二人は部屋を出て行った。
ブレスレットが眩しく光った後、辺りの空気は一変した。
ミヨがブレスレットから出てた神力を解放するのに成功したみたいだ。
館内で倒れてた観光客も自体を飲み込めずに動転していた。
そりゃそうだ、多分この人たちにとっては、ただ謎の現象で気を失ってた感じなんだろう。
『おい…大丈夫か?』
床に落ちているスマホからミヨの声が聞こえる。
慌てて拾い上げて耳に当てた。
「大丈夫だ、ちょっと気圧されただけだ。」
『そのブレスレット…大事に展示されてるんだな…。』
「あぁ、なんかココの目玉みたいだぞ。」
『そうか…仕方ないな。そのブレスレットは諦めるとしよう。』
「いいのか?」
『いいんだ、お気に入りだったが、大事にしてくれているなら、そのままで構わん。』
「ってかさ、結果的にだけどこんな物騒なモノ忘れて帰るなよな。」
『物騒とはなんだ!私の力が宿った神聖な宝具だぞ!』
「自分で神聖な…とか言ってんじゃねぇよ!他には無いだろうな。」
『大丈夫だ……と思う。』
「自信ないのかよ!」
『まぁなんかあった時はまた頼む。』
「あー!あー!聞こえない!聞こえないぞ!次は頼まれても何もしないからな!」
ミヨの言葉を遮るように大きな声で断った。
「とりあえずお前の頼みごとってのは、これで終わりだよな?」
『そうだな。』
「後はエリーの件、早いとこなんとかしてくれよ…。」
『あぁ…その事なんだが…。』
「ん?」
『また後で詳細を伝える。』
「今言えばいいだろ?」
『まぁまぁ、そう急かすな。こちらからまた連絡を入れるから待っておれ。』
「気ぃ持たせやがって…。なる早で頼むぞ。」
例えランクが低くても相手は神様なんだよな…大丈夫か?俺…?
通話を切って辺りを見渡した。
すぐ横にエリーが立ち尽くしていた。
「サトル…なんか身体が変だ………なんかこう…体の底から力が湧いて来る様な…。」
言われてみれば、妙に元気になった気がする。
コレって神力を浴びた影響なのかな?
「サトルー!エリーちゃーん」
入り口でへたり込んでた蒼ネエも元気になって駆け寄ってきた。
『どーしたんだろ?なんかさっきまでダルかったのに急に身体が軽くなった感じがするのよねぇ。」
やっぱりこの辺に居た人達には少なからず神力が影響している様だった。
とりあえず、俺の…と言うよりはミヨの用事は済んだから、この後やる事が無くなった訳だけど…どっかで昼飯でも食べるか…。
「蒼ネエ!飯行こ飯!」
§
昼飯は近所の定食屋で済ませて、周辺を散策する事にした。
「ねぇサトル。」
不意に蒼ネエが声を掛けてきた。
「あのさ、せっかくこんな所まで来たんだから温泉とか入って行かない?」
「温泉?このクソ暑いのに?」
「うん、実はね、この近くに友達の家があるのよ。しかも温泉宿。」
「今から行っても無理なんじゃね?」
「大丈夫!もう部屋押さえてもらってるから。」
「早っ!なに?付いて来た理由ってそれ?」
「吉野ヶ里行くって言うからさ、久しぶりに会いたいなぁって…。」
「だったら早く言えば良いのに…。まぁ明日もやる事ないけどさ…。てもおれ着替えとか持って来てないから買いに行かなきゃ…。」
「大丈夫…とりあえず適当に持って来てるから。」
妙に荷物がデカイと思ったらそれだったのか…用意周到すぎるだろ…。
「ところで、やっぱりさっきの出来事って…。」
「いい加減信じろよ。エリーは元々別世界の住人だし、ミヨって云うあの世の番人みたいな神様もホントに存在してるんだから。」
「うん、確かにあんな体験しちゃったらねぇ…。また後でゆっくり聞かせてよ。エリーちゃんの事も改めてちゃんと知りたいし。」
「やっと信じてくれる気になったか…。」
蒼ネエと話している間、エリーはお土産屋さんの中で色々と物色していた。
「コレはなんなのだ?」
エリーにとってはお菓子よりも置物とかストラップみたいなお土産の方が気になるようだ。
「コレはキーホルダーだ。ほらココに家の鍵とかをぶら下げるんだ。」
「ほー。ではコレは?」
次から次に気になるモノを持って来ては、説明を求めて来る。
好奇心旺盛なのはいいけど、ほっとくと店にあるモノを全部解説させられそうで怖い。
散々物色した後、結局カタカナで『エリー』と焼印が押してある名前入りの木札と勾玉の付いた首飾りを蒼ネエに買ってもらって大喜びしてる。
蒼ネエも甘いよなぁ。
「そろそろ宿に行こうか?」
「そうだな、晩飯にはまだ時間はあるけど歩き回ってちょっと疲れたし。」
「ん?何処かに泊まるのか?」
あぁ、コイツは聞いてなかったんだ。
「近所に蒼ネエの友達の家がやってる温泉宿があるんだってさ。今日はそこに泊まるぞ。」
§
話によると温泉宿まで10分も歩けば着くって事だった。
なのに既に30分は歩き回ってる。
蒼ネエ…絶対道に迷ってるな。
「なぁ、宿ってどこなんだよ?」
「うーん…この辺の筈なんだけどなぁ…。」
「住所とか分かんないのかよ?」
「分かんない。ついでに宿の名前も分かんない。」
「なんだよそれ…その友達に電話してみたらいいじゃん。」
「あぁ!」
まさか思いつかなかったのか?
結局、蒼ネエの友達に迎えにきてもらって、やっと宿に辿り着いたのは夕方と言うより夜7じを回ってた。
「改めて紹介するね。短大時代の友達の茜ちゃん。この旅館の若女将。」
「どもども。蒼ちゃんとは学校ではアカアオコンビって呼ばれてたよ(笑)今日はゆっくりしていってね。」
なんか凄い気さくな人でよかった。
「とりあえず、お部屋に晩御飯用意しといたから、先に食べちゃってね。」
「茜ちゃんありがとー!」
「まぁウチは流行ってない温泉宿だから、今日もあんた達以外に二組みしか泊まってないから。温泉はロビーの右手に有るから晩御飯食べたら入っといで。」
豪華な夕食を食べながら改めて蒼ネエにコレまでの経緯を話した。
「え?って事は、サトルは気絶してただけなのに、死後の世界に行っちゃってたって事?」
「そう…で、ミヨって番人に追い帰されたんだよ。」
「エリーちゃんは別の世界で死んじゃったのよね?」
「そうだ、私の場合はその死後の世界からこっちの世界に迷い込んで来たんだけどな。」
「死んじゃったのに明るいのね…。」
「なんか死ぬ前のベストな状態で再生されたらしいよ。」
「で?吉野ヶ里まで来た理由って言うのがお昼にあった不思議な出来事な訳ね。」
「まぁそんなトコだな。で、このアプリでミヨと連絡が取れるって訳だ。」
「ふーん…あの世の番人と連絡が取れるんだぁ。神様って凄いね。」
他人事だと思って…。
「そういえばエリーの事、また後で連絡するって言ってたな。行き先が決まったのかな?」
「私は別にこのままでも良いんだけどな…。」
「そうもいかないんじゃないか?お前ってこの世界じゃかなりイレギュラーな存在だからな。」
そんな話をしているとミヨから着信がきた。
「はいはーい。」
『エリーの処遇が決まったぞ。』
「やっとか…。」
『おい!ちょっと待て!私はお前の頭のドアップなんか見たくないぞ。』
「ん?」
『ビデオ通話だ!馬鹿者!察しろよ!』
慌てて耳からスマホを離し、テーブルに置いた。
「こんな機能もあったのか…。」
「わぁ!貴女がミヨちゃん?はじめましてぇ蒼葉でーす。」
『誰だお前は?』
「従姉妹の姉ちゃんだよ。」
『なんでそんなヤツがココに居るんだ。』
「お前が所構わず連絡してくるからだろーが!」
『ま…まぁ仕方ない…他には知られるなよ…。』
薄暗い画面にバツの悪そうな顔をしているミヨが映る。
『それは良いとして、エリーの事だが…。』
そうだった、エリーの行き先が決まったって話だった。
『協議の結果、そのまま其方の世界に居てもらうことになった。』
「え?え??なんで?」
『まぁあれだ、他の世界に行くためには、また死ななきゃ生まれ変われないからな。』
「はぁ?じゃどーすんだよコイツ。戸籍も何も無いんだぞ。」
『その辺は問題ない。お前の帰国子女の従姉妹と云う設定で其方の世界の記録を改ざんしておいた。』
「帰国子女の従姉妹って…まさかあの話し聞いてたのか?」
ミヨのヤツ絶対この前、学校で成瀬についた嘘を聞いてたな…。
「でも住むところとか、年齢的に学校行くか働かなきゃだろ…。」
『住む所ならお前の家があるじゃないか。学校も同じところに通えるようにしといてやったぞ。』
「な…なんでウチなんだよ。しかも学校もって…。」
『従姉妹なんだろ?』
ミヨは、してやったりな感じでニヤリと笑ってる。
『とりあえず生活費も必要だろ?明日、帰りに宝くじを一枚買ってみろ。当ててやるから。』
「当ててやるって…なんだよそれ…。」
ホントに当たるのか?
『ところで蒼葉と言ったか?』
「はいはい。」
『私とエリーの事は他言無用で頼むぞ。』
「はい…まぁ言っても誰も信じてくれないでしょうけど。」
『エリー、お前もそっちの世界で頑張れよ。』
「なんか良くわかんないけど、ありがとうございます。」
『それとサトル。』
「ついでみたいに言うな。」
『今後なにかあった時の保険としてこのアプリはそのままにしておく。何かと便利だしな。』
「えーもう用事とか無いだろ?」
『まぁいいじゃないか。保険だ保険。』
「なんか引っかかるなぁ…。」
『じゃぁな。また…。』
「あーちょっと待て!」
『なんだ?』
「エリーの魔法とか持ち込んだ魔道具って使っても問題ないのか?」
『…うーん問題ありだな。』
「どーすんだよ?」
『考えておく。じゃぁまた後で連絡する。』
そう言い残してビデオ通話は切れた。
ミヨってやっぱり自己中だよな…。
「ねえねえ、ミヨちゃんってアンタの話だと軽く1800年は生きてるって事でしょ?凄く若くない?」
「そこじゃないだろ…。」
「あのぉ…私はどおすれば…。」
「とりあえず今のままで良いんじゃない?ね!サトル。」
「えー…。」
最悪だ…両親の居ない間の気ままな独り暮らしの予定が台無しだ…。
結局、エリーを押し付けられてしまったじゃないか…。
「じゃエリーちゃん、お風呂行こっ。」
ふて腐れてる俺を余所に二人は部屋を出て行った。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
気づいたら隠しルートのバッドエンドだった
かぜかおる
ファンタジー
前世でハマった乙女ゲームのヒロインに転生したので、
お気に入りのサポートキャラを攻略します!
ザマァされないように気をつけて気をつけて、両思いっぽくなったし
ライバル令嬢かつ悪役である異母姉を断罪しようとしたけれど・・・
本編完結済順次投稿します。
1話ごとは短め
あと、番外編も投稿予定なのでまだ連載中のままにします。
ざまあはあるけど好き嫌いある結末だと思います。
タグなどもしオススメあったら教えて欲しいです_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!
感想もくれるとうれしいな・・・|ョ・ω・`)チロッ・・・
R15保険(ちょっと汚い言葉遣い有りです)
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
忠犬ポチは、異世界でもお手伝いを頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
私はポチ。前世は豆柴の女の子。
前世でご主人様のりっちゃんを悪い大きな犬から守ったんだけど、その時に犬に噛まれて死んじゃったんだ。
でもとってもいい事をしたって言うから、神様が新しい世界で生まれ変わらせてくれるんだって。
新しい世界では、ポチは犬人間になっちゃって孤児院って所でみんなと一緒に暮らすんだけど、孤児院は将来の為にみんな色々なお手伝いをするんだって。
ポチ、色々な人のお手伝いをするのが大好きだから、頑張ってお手伝いをしてみんなの役に立つんだ。
りっちゃんに会えないのは寂しいけど、頑張って新しい世界でご主人様を見つけるよ。
……でも、いつかはりっちゃんに会いたいなあ。
※カクヨム様、アルファポリス様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる