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「光一!!」



ミーティングルームを出た後、天野さんから呼ばれた。
天野さんに振り返ると、天野さんがニッと笑いながら俺を見詰めてくる。



「人事部長の佐竹、板東社長の派閥だからな?」



「はい。」



「あの人から情報引き出せ。
日下部は秘書課に常駐させてるから、第一秘書2人から情報を引き出させてるところだ。」



「佐竹、ですか・・・。」



「・・・お前、呼び捨てにすんなよ?」



「ああ、はい、大丈夫です。」



人事部の佐竹部長。
50代の男性で、渋い感じのシュッとした格好良い人だった。
転職をしてきた板東社長。
その板東社長と同じ日に転職をしてきた佐竹部長。



一時期は、板東社長は佐竹部長の部下になっていた時期もあった。



それなのに、じいちゃんは板東社長をダブル代表の1人にした。



須崎社長だけではなく、犬猿の仲である板東社長をダブル代表の1人に選んだ。



口の固そうな佐竹部長から、どう情報を引き出そうか考えながら歩いていると・・・



廊下の向こうから須崎社長が歩いてきた。



ずんぐりむっくりした須崎社長が、歩いてきた。



そして、俺と天野さんのことを見て嬉しそうに笑ってきた。
それに俺も笑い返すと・・・



「今日からか!!
いずれこっちに入ってきなって!!
本当だったら、松居の血縁の奴が社長の方がいいだろうしさ!!
鮫島だったと思うぞ?今頃社長は。」



須崎社長がそう言ってきて、俺は回りを見渡す。



「須崎社長、そういうことはもっと小さな声でお願いします。」



「何で秘密にしてるんだよ?
公表したらみんなもっと快く対応してくれるのに。」



そう言われ、それは確かにそう思うので天野さんの方を見た。
秘密にすると決めたのは天野さんだったから。



天野さんは須崎社長と俺に、面白そうな顔で笑い掛ける。



「タイミングを見計らうのも楽しみの1つですから。」



そんなことを言って、俺のことを見てきた。



「じゃあ、お前も楽しんでこい。
“鮫島”として、楽しんでこいよ?」



「はい。」



企んでいるような笑顔の天野さんに、俺も似たような笑顔になるよう笑い返した。
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