【完】死神にウェディングドレスを

6

6-15

そんな中、妙子が笑った。
思いっきり・・・
失くなった前歯なんてやっぱり気にすることなく、笑った。



「気にしないでください！！
私、女でも男でもなくて猿なんで！！
前歯だけじゃなくて髪の毛もまばらだし！！」



そう言って、自分でテキトーに切っていると言っていた猿みたいな頭を触って笑っている。
そんな妙子のことを母ちゃんがまたマジマジと見て・・・



「お顔は凄く可愛いお顔してるよね？
私は化粧品会社に勤めててイメージモデルの女優さん達ともお会いしてるけど・・・将来が楽しみなお顔してるよ。」



そんなことを言ってから、妙子の頬を指先で少しだけ触れた。



「それなのにうちのバカ息子がこんな前歯に・・・。
一生償わないといけないよ、本当に・・・。」



妙子の態度と言葉に救われる思いになりながら、俺は口を開く。



「こいつ強すぎて手加減出来ないんだよな。
マジで強いんだよ。」



俺がそう言うと、妙子がめちゃくちゃ嬉しそうに笑った。



「謝罪よりも、私がサメをぶっ飛ばして終わりなので！！！
お母さんには言っておきますけど、むしろ謝られると思います！！！
私、こんな感じなので！！！」



妙子がそう言いながら笑うと、母ちゃんが急にニヤニヤと笑い出した。
そして、俺の方を見てきて・・・



「良い女の子だね～！！
こんな女の子、嫁に連れておいで！！」



と・・・。



そんなことを言った・・・。



死んだあの女みたいな・・・



そんなことを、言った・・・。



苦しくなった・・・。



また、苦しくなった・・・。



でも、口を開いて言葉を出した・・・。



「母ちゃん・・・気持ち悪いことマジで言うなよ・・・。
妙子は女の子だとは分かってるけど、本当の意味でこいつを女として見たことはねーよ・・・。」



そう言葉を出した俺に、妙子が爆笑し・・・



「私だってサメのこと男として見たことないから！！！
私、好きな人いるし！！！」



そうサラッと言った妙子の言葉が、何故だか気持ち良く俺の心に、精神に入ってきた。



良い奴だなと、素直に思う。



こいつは凄く良い奴で・・・



凄く、好きだなと思った・・・。



素直に、そう思った・・・。



「明日絶対前歯治しておけよ！！！」



そう言って、妙子に笑い掛けた。