【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
153 / 168
8

8-9

しおりを挟む
結婚式前夜



今晩も女達が私の部屋の鍵を開けに来て、“可哀想なステル殿下”の話を長々と聞かされた。
それに何か言いたくなる気持ちはあったけれど、私の口からは何も出てこなかった。



何も何も出てくることはなかった。



この半月、ステル殿下とは何度か会った。
ミランダがその場を設けてくれたから。



それなのにステル殿下は私の顔もろくに見ることはなく、必要最低限の話しかせず、インソルドの話もせず、チチの話もドン爺の話もヨークの話もミーナの話もサラの話もしなかった。



私がインソルド出身だと言ったのに。



私が“ルル”だとは分からないだろうけど・・・



私が“ルル”だとは分からないはずなのに・・・



“ルル”の話もしなかった。



“ルル”のことも聞いてくれなかった。



ソソは何も言ってくれなかった。



私が目を覚ましたとチチが報告書を出した時も。
私に“月のモノ”が来ていないとチチが報告書を出した時も。
ソソからは“何もない”とチチが言っていた。



私が聖女になり“迎えに来て”とエリーに伝えて貰った時も、ソソからは何もなかった。
迎えに来てくれないだけではなく、言伝ても何もなかった。



でも、エリーが伝えることが出来なかったのだと分かってもいた。
あんなに難しい言伝てをエリーは伝えられるはずがないから。



でも・・・



“ソソ、ルル、好き、大好き、愛している。”



私にソソの気持ちを伝えてくれたように、私の気持ちもソソに伝えてくれれば。
そんなことを考えていた。
そんな期待をしてしまっていた。



それなのにソソは迎えに来てくれることはなかった。



私に“月のモノ”が来ていないなら、私はソソと子作りが出来ない。
皇子であるソソは子どもを作ることも仕事。
ソソの16歳の誕生日の日、チチは私に“月のモノ”のことを聞いてきた。
そしてソソに報告書を出した。



だからソソが迎えに来てくれることはなかったのだと思う。



だからソソは“ルル”のことを忘れることにしたのだと思う。



強く強く強く、どこまでも強く生き抜く為に・・・。
最善を尽くす為に・・・。
“ルル”を忘れ、子作りが出来る他の女を好きになったのだと思う。



そんなことを考えながら、今日も城壁の最上部、月明かりの光りに照らされているソソが、大きな剣で素振りをしている姿を眺める。



インソルドを忘れ、“ルル”を忘れ、王宮の男となり生き抜いてきた“ソソ”の・・・“ステル殿下”の姿を眺める。



胸の真ん中に浮かび上がったヒヒンソウの花の刻印、まるで血のような赤い光りを指先で今日も触れながら。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

処理中です...