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カチャ・・・カチャ──────────...
夜もすっかり遅くなった時、私の部屋として与えられている部屋の扉の鍵が開いた音が聞こえた。
それにはナイフを握りたくなったけれど、ナイフはミランダから没収されている。
ミランダの代わりに鍵を開けに来た者だとは分かるけれど、この身体に力を込め神経を研ぎ澄ませる。
そんな中、扉はサッと開き、1人の若い侍女が入ってきた。
そして私のことをパッと見てきたかと思ったら・・・
「ふ~ん・・・見た目は良いね。
没落貴族の娘とかいうからどんな酷い女なのかと思ってた。
ミランダ侍女長が慎重過ぎるほど隠してきたのは、逆に見た目が良すぎるからだっだんだ。
これじゃあステル殿下じゃない他の男が先に奪いたくなりそうだし。」
「・・・ねぇ、どれ?そんなに綺麗なの?」
開いた扉から今度は2人の女が入ってきた。
侍女とは違う服を着て、ナイトドレスとも違う少し豪華なドレスを着ている。
その女2人が私のことを見て、物凄く不機嫌な顔になりながら腕を組んだ。
「23歳にもなって結婚出来ていない出来損ないの女でしょ?」
「そうそう、噂では“月のモノ”が来ていなかったって聞いたし、出来損ないの女よ。」
「可哀想なステル殿下。」
女達がステル殿下のことを“可哀想”と言い、早口で会話を進めていく。
「没落貴族でインソルド出身、それもヒヒンソウの花の刻印が浮かび上がった聖女と結婚することになったなんて、本当に可哀想なステル皇太子殿下。」
「本当よねぇ、黒髪持ちだけどやっと皇子として認められたのに。」
「これなら私が相手の方が箔がついたのに。」
「私達、正真正銘の伯爵令嬢だしね?」
何が面白いのか女達が高い声で笑い合い、私のことをバカにしたような顔で見てきた。
これまで生きてきた人生でこんな出来事は初めてで、どう対応したら良いのかが分からず何も判断出来ずにいると、女達は続けた。
「ステル殿下って好きな女がいるのよ?
知ってた?」
それには首を横に振ると、女達がまた楽しそうに笑う。
「可哀想なステル殿下。
可哀想な生い立ちなうえに好きな女とも結ばれないなんて。」
「貴女が現れなければステル殿下は好きな女と結婚出来たかもしれないのに。」
「皇子として認められたのは良かったけれど、その代償にこんな出来損ないの女をねぇ?」
「ヒヒンソウの花の刻印だって!!」
女達が楽しそうに笑い続けながら、一緒になって笑っている侍女の方を見た。
「ステル殿下の好きな女を見たことがあるんでしょ?」
「はい!見たことがあります!!
いつも女性には素っ気ないステル殿下が、すがるような顔でその女性を見詰めながら口説いていました~!!」
侍女が視線を上げながら答えると、2人の女も上を見上げながら表情を緩めた。
「明日また訓練を見に行きましょうか。」
「そうですね、また話し掛けてくれるかもしれませんし。」
「私もお供します~!!」
「侍女達も訓練に集まりすぎよ!?」
女達が笑いながら扉から出ていこうとし、それから最後にまた私のことを見てきた。
「ヒヒンソウの花の刻印を持って来たなんて必死で笑っちゃう。
そんな恥ずかしい花でよくここに来られたわね?」
「これだから没落貴族は。」
「文字も分からず食事マナーもない没落貴族の娘を誰もお世話したくなかったので、ミランダ侍女長が全てやっていて大変そうですよ?」
「何も出来ない没落貴族の女、それもインソルド出身だなんて。」
「せめて美しい花ならまだ良かったのに、ヒヒンソウの花の刻印。
可哀想なステル殿下・・・。」
何をしに来たのかは分からなかったけれど、良くないモノではあったはずの女達が楽しそうに笑いながら部屋から出ていった。
こんなことは人生で初めての経験で、どう対応するのが最善なのか私には分からなかった。
インソルドの女である私には分からなかった。
夜もすっかり遅くなった時、私の部屋として与えられている部屋の扉の鍵が開いた音が聞こえた。
それにはナイフを握りたくなったけれど、ナイフはミランダから没収されている。
ミランダの代わりに鍵を開けに来た者だとは分かるけれど、この身体に力を込め神経を研ぎ澄ませる。
そんな中、扉はサッと開き、1人の若い侍女が入ってきた。
そして私のことをパッと見てきたかと思ったら・・・
「ふ~ん・・・見た目は良いね。
没落貴族の娘とかいうからどんな酷い女なのかと思ってた。
ミランダ侍女長が慎重過ぎるほど隠してきたのは、逆に見た目が良すぎるからだっだんだ。
これじゃあステル殿下じゃない他の男が先に奪いたくなりそうだし。」
「・・・ねぇ、どれ?そんなに綺麗なの?」
開いた扉から今度は2人の女が入ってきた。
侍女とは違う服を着て、ナイトドレスとも違う少し豪華なドレスを着ている。
その女2人が私のことを見て、物凄く不機嫌な顔になりながら腕を組んだ。
「23歳にもなって結婚出来ていない出来損ないの女でしょ?」
「そうそう、噂では“月のモノ”が来ていなかったって聞いたし、出来損ないの女よ。」
「可哀想なステル殿下。」
女達がステル殿下のことを“可哀想”と言い、早口で会話を進めていく。
「没落貴族でインソルド出身、それもヒヒンソウの花の刻印が浮かび上がった聖女と結婚することになったなんて、本当に可哀想なステル皇太子殿下。」
「本当よねぇ、黒髪持ちだけどやっと皇子として認められたのに。」
「これなら私が相手の方が箔がついたのに。」
「私達、正真正銘の伯爵令嬢だしね?」
何が面白いのか女達が高い声で笑い合い、私のことをバカにしたような顔で見てきた。
これまで生きてきた人生でこんな出来事は初めてで、どう対応したら良いのかが分からず何も判断出来ずにいると、女達は続けた。
「ステル殿下って好きな女がいるのよ?
知ってた?」
それには首を横に振ると、女達がまた楽しそうに笑う。
「可哀想なステル殿下。
可哀想な生い立ちなうえに好きな女とも結ばれないなんて。」
「貴女が現れなければステル殿下は好きな女と結婚出来たかもしれないのに。」
「皇子として認められたのは良かったけれど、その代償にこんな出来損ないの女をねぇ?」
「ヒヒンソウの花の刻印だって!!」
女達が楽しそうに笑い続けながら、一緒になって笑っている侍女の方を見た。
「ステル殿下の好きな女を見たことがあるんでしょ?」
「はい!見たことがあります!!
いつも女性には素っ気ないステル殿下が、すがるような顔でその女性を見詰めながら口説いていました~!!」
侍女が視線を上げながら答えると、2人の女も上を見上げながら表情を緩めた。
「明日また訓練を見に行きましょうか。」
「そうですね、また話し掛けてくれるかもしれませんし。」
「私もお供します~!!」
「侍女達も訓練に集まりすぎよ!?」
女達が笑いながら扉から出ていこうとし、それから最後にまた私のことを見てきた。
「ヒヒンソウの花の刻印を持って来たなんて必死で笑っちゃう。
そんな恥ずかしい花でよくここに来られたわね?」
「これだから没落貴族は。」
「文字も分からず食事マナーもない没落貴族の娘を誰もお世話したくなかったので、ミランダ侍女長が全てやっていて大変そうですよ?」
「何も出来ない没落貴族の女、それもインソルド出身だなんて。」
「せめて美しい花ならまだ良かったのに、ヒヒンソウの花の刻印。
可哀想なステル殿下・・・。」
何をしに来たのかは分からなかったけれど、良くないモノではあったはずの女達が楽しそうに笑いながら部屋から出ていった。
こんなことは人生で初めての経験で、どう対応するのが最善なのか私には分からなかった。
インソルドの女である私には分からなかった。
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