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その日の夜
「ミランダ、夜中でいいから少し散歩をしたらダメ?」
ミランダから食事のマナーのチェックをされている中、そう聞いた。
「ダメです。
ステル殿下との結婚前に、カルティーヌ様の姿を誰にも見られるわけにはいきませんから。」
「そんな決まりまであるんだね、王族に嫁ぐのは大変。」
「そんな決まりはありませんが、ステル殿下以外の男性と通じていると疑われる可能性もあります。
ステル殿下は只でさえ黒髪持ち。
そのうえ結婚する聖女様は没落貴族の娘。
良くない噂が回るのを避ける為です。」
「王宮は噂話がよく回るらしいからね。」
そう言ってからまた静かに食事を進めていく。
静かに静かにゆっくりと、食事を進めていく。
贅沢過ぎるくらい贅沢な料理を食べていく。
これまでの人生で食べたこともない贅沢過ぎる料理を。
ソソもこんな料理を食べているのかなと、そう思いながら。
そう思いながら・・・
静かに食事を食べ切った。
そしたら・・・
「夜中、今日ステル殿下とお会いした城壁の上になら出てもいいです。」
ミランダからそう言われ、それには驚きながらミランダを見上げた。
相変わらず無表情のミランダが私のことを見ることなく、食器を片付けながら口も動かした。
「私は来ることは出来ませんが、別の者に部屋の鍵を開けさせます。
騎士の見張りも今晩はいらないと伝えておきます。
なので・・・」
ミランダが鋭い目で私のことを見詰めてきた。
「絶対に城壁の上以外の場所には行かないようお願いします。
そして、他の者には姿を見せないことも約束してください。」
ミランダのその言葉に私は何度も頷いた。
それから入浴と夜の手入れをミランダがしてくれ、今日は黒いナイトドレスを着せられた。
これで夜の黒に紛れられる。
そう思いながら、大きな鏡が付いているドレッサーという物の前でミランダから髪の毛を櫛でとかされている自分を見る。
軟弱そうな自分の姿を。
驚くほど軟弱そうで、この前来た時に王宮で少しだけ見た貴族の女とよく似ていた。
そんな女から私は急いで視線を逸らす。
目を逸らした先にはミランダが映っていて・・・
少しだけ嬉しそうな顔で私の髪の毛をとかしていた。
「インソルドに・・・」
インソルドの話をしようとしていたミランダが慌てたように口を閉じ、櫛をドレッサーの上に置いた。
「申し訳ありません、何でもございません。
夜中に別の者が鍵を開けに参りますので、それまでは大人しくお待ちください。」
いつもの無表情な顔でそう言って、部屋から出ていった。
「ミランダ、夜中でいいから少し散歩をしたらダメ?」
ミランダから食事のマナーのチェックをされている中、そう聞いた。
「ダメです。
ステル殿下との結婚前に、カルティーヌ様の姿を誰にも見られるわけにはいきませんから。」
「そんな決まりまであるんだね、王族に嫁ぐのは大変。」
「そんな決まりはありませんが、ステル殿下以外の男性と通じていると疑われる可能性もあります。
ステル殿下は只でさえ黒髪持ち。
そのうえ結婚する聖女様は没落貴族の娘。
良くない噂が回るのを避ける為です。」
「王宮は噂話がよく回るらしいからね。」
そう言ってからまた静かに食事を進めていく。
静かに静かにゆっくりと、食事を進めていく。
贅沢過ぎるくらい贅沢な料理を食べていく。
これまでの人生で食べたこともない贅沢過ぎる料理を。
ソソもこんな料理を食べているのかなと、そう思いながら。
そう思いながら・・・
静かに食事を食べ切った。
そしたら・・・
「夜中、今日ステル殿下とお会いした城壁の上になら出てもいいです。」
ミランダからそう言われ、それには驚きながらミランダを見上げた。
相変わらず無表情のミランダが私のことを見ることなく、食器を片付けながら口も動かした。
「私は来ることは出来ませんが、別の者に部屋の鍵を開けさせます。
騎士の見張りも今晩はいらないと伝えておきます。
なので・・・」
ミランダが鋭い目で私のことを見詰めてきた。
「絶対に城壁の上以外の場所には行かないようお願いします。
そして、他の者には姿を見せないことも約束してください。」
ミランダのその言葉に私は何度も頷いた。
それから入浴と夜の手入れをミランダがしてくれ、今日は黒いナイトドレスを着せられた。
これで夜の黒に紛れられる。
そう思いながら、大きな鏡が付いているドレッサーという物の前でミランダから髪の毛を櫛でとかされている自分を見る。
軟弱そうな自分の姿を。
驚くほど軟弱そうで、この前来た時に王宮で少しだけ見た貴族の女とよく似ていた。
そんな女から私は急いで視線を逸らす。
目を逸らした先にはミランダが映っていて・・・
少しだけ嬉しそうな顔で私の髪の毛をとかしていた。
「インソルドに・・・」
インソルドの話をしようとしていたミランダが慌てたように口を閉じ、櫛をドレッサーの上に置いた。
「申し訳ありません、何でもございません。
夜中に別の者が鍵を開けに参りますので、それまでは大人しくお待ちください。」
いつもの無表情な顔でそう言って、部屋から出ていった。
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