【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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月明かりの光りが差し込む教会。
魔獣の大群が押し寄せたにも関わらずこの教会だけは不思議と無事だった。
そんな教会の前までドン爺が送ってくれ、ここで10歳のソソと結婚式を挙げるように言った。



ドン爺も正式な結婚式ではない結婚式を挙げたらしい。
目がほとんど見えなくなった後、好きな女と・・・ずっと恋をしていた女と2人だけの結婚式を挙げたらしい。
その女は数ヶ月後に強い子種を持つであろうドン爺よりも強い男と結婚をした。



それでもドン爺が強く生き抜けているのは、好きな女と、恋をしていた女と2人だけの結婚式を挙げることが出来たからだと、そう言っていた。



ドン爺からの言葉を思い出しながら、10歳のソソから貰ったヒヒンソウの花を両手で持ちながら教会の真ん中の道をゆっくりと歩いていく。



記憶の中の10歳のソソを思い浮かべながら。
いつも私の隣にいた10歳のソソのことを思い浮かべながら。



ゆっくりとゆっくりと“ソソ”と歩き、そして教会の1番奥まで歩いた。
インソルドでもインラドルでも結婚式を挙げる時、何故か毎回司祭という人間が現れて2人の結婚を証明してくれる。



正式な結婚式ではないからそんな人間は来ないけれど、私は私の記憶の中のソソと司祭が立っていた場所の前に向かい合って立った。



そして・・・



記憶の中のソソを見て思わず笑ってしまった。



だって・・・



「血塗れだよ・・・?」



ソソは血塗れだったから。



ソソが16歳になった日から、私の記憶の中のソソはいつも血塗れだった。



“死の森”の白い霧の中、いつも血塗れだった。



それなのに、強く強く強く・・・



どこまでも強い目で私のことを見詰めていて・・・



そして・・・



そして・・・



“俺と結婚して、ルル。”



いつもいつもいつも、いつも私にそう言う。



そう言ってくれる。



それだけがいつも強く浮かんでくる。



それが最後に見たソソの姿だったから。



それが最後に聞いたソソの言葉だったから。



記憶の中のソソから受け取ったヒヒンソウの花。
それを両手で持ちながら頷いた。



今日はちゃんと頷けた。



ソソから渡されたヒヒンソウの花を両手で受け取り、頷くことが出来た。



「私は聖女になる。
聖女になってソソではない男と結婚する。
この人生でソソ以外の男と結婚をした私でソソが大丈夫なら、次の人生でも求婚しに来て。
ソソが迎えに来るまで、他の男の花は受け取らないで待ってるから。
だから次の人生では必ず迎えに来て。」



この人生では迎えに来てくれることはなかったソソに言う。



最後に文句を言う。



「こんなになるまで女を待たせるなんて酷い男・・・。
記憶の中でももう二度と思い出さないんだから・・・。
次に会うのは次の人生になるんだから・・・。」



そう言ってこの目から涙が流れた時・・・



その瞬間・・・



この身体を抱き締められた。



驚きその姿を確認したら・・・



「エリー・・・。」



エリーが私のことを抱き締めに来てくれた。



温かい温もりをエリーから感じながら、私は泣きながら笑った。



「嫉妬深い男だったから、次の人生でも私のことを迎えに来ないでしょ・・・!!
期待しないで待ってるよ・・・!!」



今日も血の匂いがするエリーに抱き付きながら、叫んだ。



記憶の中でソソと2人で挙げた結婚式。
突然ソソの魔獣であるエリーが現れ、私のことを抱き締めてくれて。



心だけでも結ばれような気がした。



ソソが私に心だけでもくれにきてくれたような気がした。



「ありがとう、エリー・・・。」
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