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その日の夜
湖のほとりに座り、月明かりの光りで浮かび上がる自分の顔を、クレドから借りている鏡で眺め続けていた。
随分と長い時間眺めていたら・・・
「ルル、こんな所にいたんだ。」
いつものような柔和なクレドが現れ、私の隣に座ってきた。
「ごめんごめん、俺が過剰に反応し過ぎたね。
女の子にはよくあることだからそんなに気にしなくて大丈夫だから。
物凄く俺の好みだったから煩く反応し過ぎた。」
クレドがそんなことを言いながら、いつもの距離ではなくてグッと私に近付いてきた。
それには何故か反射的に身体が反応し、クレドに距離を取る。
なのに・・・クレドはその距離をもっと詰めてきた。
「ソソのこと、俺が忘れさせてあげようか?」
「ソソのことを忘れられるわけないよ。」
「ソソはルルのことをもう忘れてるかもしれないよ?
ルルが死にそうになってた時に求婚したみたいだけど、ソソはその時まだ10歳だった。」
「それはそうだけど・・・。」
“あの時”のことを思い出しながら、私の身体に触れるように座るクレドを見る。
「アイツは忘れてないと思う。
あんなに本気の顔を見たのはアイツが生まれて初めてなくらい、本気の顔をしてた。」
「“ソソ”には見えないくらい、“男”に見えた?」
「うん、そんな感じかな。」
何故だか恥ずかしい気持ちにもなりながら答えると、クレドは少しだけ困ったように笑う。
「でも、ソソはまだ10歳だったしね。
王宮でも色んな出会いがあるだろうし、家族としての愛じゃなくて、女の子に恋をしてるかも。」
そう言われ・・・
そう言われてしまって・・・
ソソが王宮に戻ったと知った時よりもずっと、虚無感が押し寄せてきた。
でも・・・
「だから、私に文字を教えて欲しい・・・。
私に恋をして欲しいとかそういうことじゃなくて・・・。
ソソが大丈夫なら私を側室として迎えて欲しいって。
そしたら私はソソの傍でソソをずっと守れる。」
クレドから借りた鏡を握り締めながら言うと、クレドは真剣な顔で私のことを見詰めてきた。
「あれから8年も経つ。
今のソソはルルの思い出の中のソソとは違うかもしれないよ?」
「私だってこんなに変わっちゃった。
ソソは私のことを見て私だって気付かないよ。」
握り締めていた鏡で自分の顔をまた映した。
そこにはやっぱり軟弱そうな女がいる。
何だか泣きそうになりながらそう言うと、鏡を持つ私の手をクレドが優しく握ってきた。
そして・・・
何故か私の顔にゆっくりと顔を近付けてくる。
「全然変わってないよ。
村のみんなもルルの姿のことを何も言ってないでしょ?
1年ぶりに会って、俺がルルのことを見る目が変わったんだろうね。」
「そうなの?」
クレドから距離を取りながら聞くと、クレドはまた距離を詰めてくる。
「俺はルルの父親よりも年下だからまだ30代後半だし、女の子は若くして結婚して出産するのが一般的だけど、男は年上なんてことは珍しくないからね。」
「うん、お母様からも言われてた。
だから私は男として育てられてた。」
「うん、だからダンドリーよりも更に恋心とかが理解出来ない子になっちゃったんだろうね。」
クレドがそう言って、空いていた手をゆっくりと伸ばしてきた。
悪いモノではないとは分かるけれど、思わずその手を掴む。
でもクレドの手は私よりも強くて・・・。
「なに・・・?」
私の服の首元に指先を掛け、クイッと下に下げてきた。
「ルルの父親からは、ソソではなくて俺がルルを嫁に貰っていいってさっき言われたよ?」
「チチが・・・?」
「うん、だってソソは16歳になってもルルのことを迎えに来なかったでしょ?
ソソは皇子だからね、子どもを作るのも王族の仕事だから。
子作りが出来ないルルのことをソソは迎えに来ることはない。」
そう言われ、それには反論しようとしたけれど・・・
「・・・・・っ」
クレドの顔が私の顔にぶつかるくらい近付いてきたので後ろに距離を取った。
そしたらそのタイミングでクレドから身体を押され、私の背中は地面を感じた。
「ルルのことを側室に迎えに来ることもないよ。
子作りも出来ない女の子が側室に入っただなんて、正室の女の子が耐えられるわけがないからね。
ソソの心はルルにあるんじゃないかって不安になる。
大抵の女の子はそういう軟弱な子だから。
だからルルはソソに会えないまま、この村で一生を終える。」
湖のほとりに座り、月明かりの光りで浮かび上がる自分の顔を、クレドから借りている鏡で眺め続けていた。
随分と長い時間眺めていたら・・・
「ルル、こんな所にいたんだ。」
いつものような柔和なクレドが現れ、私の隣に座ってきた。
「ごめんごめん、俺が過剰に反応し過ぎたね。
女の子にはよくあることだからそんなに気にしなくて大丈夫だから。
物凄く俺の好みだったから煩く反応し過ぎた。」
クレドがそんなことを言いながら、いつもの距離ではなくてグッと私に近付いてきた。
それには何故か反射的に身体が反応し、クレドに距離を取る。
なのに・・・クレドはその距離をもっと詰めてきた。
「ソソのこと、俺が忘れさせてあげようか?」
「ソソのことを忘れられるわけないよ。」
「ソソはルルのことをもう忘れてるかもしれないよ?
ルルが死にそうになってた時に求婚したみたいだけど、ソソはその時まだ10歳だった。」
「それはそうだけど・・・。」
“あの時”のことを思い出しながら、私の身体に触れるように座るクレドを見る。
「アイツは忘れてないと思う。
あんなに本気の顔を見たのはアイツが生まれて初めてなくらい、本気の顔をしてた。」
「“ソソ”には見えないくらい、“男”に見えた?」
「うん、そんな感じかな。」
何故だか恥ずかしい気持ちにもなりながら答えると、クレドは少しだけ困ったように笑う。
「でも、ソソはまだ10歳だったしね。
王宮でも色んな出会いがあるだろうし、家族としての愛じゃなくて、女の子に恋をしてるかも。」
そう言われ・・・
そう言われてしまって・・・
ソソが王宮に戻ったと知った時よりもずっと、虚無感が押し寄せてきた。
でも・・・
「だから、私に文字を教えて欲しい・・・。
私に恋をして欲しいとかそういうことじゃなくて・・・。
ソソが大丈夫なら私を側室として迎えて欲しいって。
そしたら私はソソの傍でソソをずっと守れる。」
クレドから借りた鏡を握り締めながら言うと、クレドは真剣な顔で私のことを見詰めてきた。
「あれから8年も経つ。
今のソソはルルの思い出の中のソソとは違うかもしれないよ?」
「私だってこんなに変わっちゃった。
ソソは私のことを見て私だって気付かないよ。」
握り締めていた鏡で自分の顔をまた映した。
そこにはやっぱり軟弱そうな女がいる。
何だか泣きそうになりながらそう言うと、鏡を持つ私の手をクレドが優しく握ってきた。
そして・・・
何故か私の顔にゆっくりと顔を近付けてくる。
「全然変わってないよ。
村のみんなもルルの姿のことを何も言ってないでしょ?
1年ぶりに会って、俺がルルのことを見る目が変わったんだろうね。」
「そうなの?」
クレドから距離を取りながら聞くと、クレドはまた距離を詰めてくる。
「俺はルルの父親よりも年下だからまだ30代後半だし、女の子は若くして結婚して出産するのが一般的だけど、男は年上なんてことは珍しくないからね。」
「うん、お母様からも言われてた。
だから私は男として育てられてた。」
「うん、だからダンドリーよりも更に恋心とかが理解出来ない子になっちゃったんだろうね。」
クレドがそう言って、空いていた手をゆっくりと伸ばしてきた。
悪いモノではないとは分かるけれど、思わずその手を掴む。
でもクレドの手は私よりも強くて・・・。
「なに・・・?」
私の服の首元に指先を掛け、クイッと下に下げてきた。
「ルルの父親からは、ソソではなくて俺がルルを嫁に貰っていいってさっき言われたよ?」
「チチが・・・?」
「うん、だってソソは16歳になってもルルのことを迎えに来なかったでしょ?
ソソは皇子だからね、子どもを作るのも王族の仕事だから。
子作りが出来ないルルのことをソソは迎えに来ることはない。」
そう言われ、それには反論しようとしたけれど・・・
「・・・・・っ」
クレドの顔が私の顔にぶつかるくらい近付いてきたので後ろに距離を取った。
そしたらそのタイミングでクレドから身体を押され、私の背中は地面を感じた。
「ルルのことを側室に迎えに来ることもないよ。
子作りも出来ない女の子が側室に入っただなんて、正室の女の子が耐えられるわけがないからね。
ソソの心はルルにあるんじゃないかって不安になる。
大抵の女の子はそういう軟弱な子だから。
だからルルはソソに会えないまま、この村で一生を終える。」
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