【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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21歳  冬




「ルル、少しいいか?」



太陽の光りが地上に届くよりずっと前、家の前で戦う訓練をしていたらチチが珍しく声を掛けてきた。



「何?」



身体からは汗が流れているけれど、私の口からは白い空気が出ていく。
動きを止めながらチチを見上げた私に、チチは珍しく気まずそうな顔で見下ろしてきた。



「その・・・“月のモノ”は来たか?」



「あ~・・・そういえば来てない。」



「ルルが目覚めた時、“月のモノ”が来たら俺に知らせるようにと言ったが、あの後1度も来ていないということか?」



「ん~・・・言われてみればそうだと思う。
目が覚めてから誰からも求婚されてないし、“月のモノ”を気にしてなかった。」



「ソソがいた時よりも魔獣の出現が年々増え、気にする時間もなかったか。
そんな時間があれば1人でも訓練をしているくらいだしな。」



「うん、ソソと約束してるから。
ソソが迎えに来るまで他の男よりも強くいるって。」



今日で16歳になったソソ。
私が目覚めたとチチが報告をしてくれたそうだけど、それについての返事はなかったそう。
チチからは「手紙ではないからな」と言われたけれど、寂しい気持ちにもなっていた。



「他の男がお前よりも強くなったとしても、お前は誰からも求婚されることはない。」



チチがそんなことを言い出し、それには首を傾げた。
10代後半は過ぎたけれど相変わらずモテる私にチチがそんなことを言い出したから。



「インソルドでは子作りが出来ない人間は結婚出来ない。」



それを言われ・・・



「あぁ、そういえばそうだった。」



ソソが迎えに来てくれるのを待っている私は、魔獣が頻繁に現れるようになってきたこの村で生き抜くこと、そしてソソが迎えに来るまでは他の男よりも強くあること、それしか考えていなかった。



チチから改めてそれを言われ、少しだけ考えてからチチに伝えた。



「私に“月のモノ”が来てないってソソに報告して?」



そう伝えた私にチチは少しだけ悩んだ様子になった。
でも、少しだけ。
すぐに私に大きな背中を向けて答えた。



「分かった。」



それだけ答えたチチ。



それだけだった。



それだけで終わってしまって。



ソソからの返事はいつも「ない」と言っていた。
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