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───────────
─────
16歳
─────────────・・・・
この目にゆっくりと光りが入ってきた。
何故か頭が回らない。
だからこそ枕元のナイフを探そうとするけれど、右手が動かない。
右手だけではない、身体全てが動かない。
それに慌てていると・・・
「ぇ、りー・・・」
掠れた声が私の口から出て来て、私を覗き込んでいるエリーが嬉しそうな顔で笑い私の頭を優しく撫でてくれた。
母性本能があるエリー。
それが半獣の姿になれるようになってからよく分かった。
たまに急に現れてソソのことを抱き締めてきて、ソソはいつも恥ずかしがっていた。
そんなソソの姿を思い出していたら・・・
「ソソ、は・・・!?」
思い出した。
全てを思い出した。
“あの日”あった全てのことを思い出した。
「ソソ・・・!!!ソソ!!!!」
動かない身体で声だけを必死に出した。
掠れた声しか出なかったけれど、さっきよりも大きな声が出た。
そしたら・・・
「ルル・・・!!!」
「良かった・・・良かった!!!」
先代のチチの2人の娘、ミーナとサラが慌てた様子で私の視界の中に入ってきた。
「ソソは・・・!?ソソは!?」
聞きたいことが沢山あったけれど、出て来たのはソソの名前だけで。
聞いた私にミーナとサラは力強く頷いた。
「肩に大きめの怪我をしてたけど、生きてるよ。」
「知能の高いユンスと戦って生き延びて、王宮へと戻ったよ。」
「よく守ったね、ルル。
そして・・・よくあそこからここまで回復したね、信じられない。」
ミーナとサラが目に少しだけ涙を溜めながら言ってきて、私は自分のことよりもソソが生きていたこと、そして王宮へと戻ったことの方に深く安堵した。
「ソソ、戻ったか・・・。
自分の命が終わる時よりも凄い虚無感。
今までソソの為だけに生きてきたからな。」
“あの時”、私は死んでしまうと分かっていた。
だからこそ最後まで笑っていた。
笑えていたかは分からないけれど、ソソが強く生き抜けるよう、最後の最後まで笑顔を見せていた。
ソソにとって私は姉であり母のような存在だったはずだから。
「チチでさえ、ルルは死んだと判断してたからね?
“死の森”からインソルドに戻る途中、チチが“まだ息をしている”と言い出した時は全員ビックリしたよね!?」
「そうそう!!
チチが“埋葬する前に嫁に会わせたいが”、なんて言ってたくらいだったから!!」
「私も自分が死んだなと分かったくらいだったけどね?
その時は虚無感も何もなく、身体は凍えるくらい寒くなっていったけど心は温かくて。
ソソが抱き締めてくれてたし、それに・・・」
言葉を切った後に小さく笑うと、ミーナとサラがニヤニヤと笑い出した。
「ソソから求婚されてたでしょ~!!!」
「いいな~!!
10歳だったけどソソってヨークの次に強い男だったし!!」
「黒髪なんて何も気にならないくらい良い男だったし、もう少し長くインソルドにいたらルルじゃなくてうちらにもチャンスがあったかも~!!」
「10歳じゃ大抵の男は母さんが大好きだからね!!」
そう言われ、私は右手を少しだけ動かしてみた。
そしたらゆっくりとだけど右手が動いて。
その右手を自分の胸の真ん中に置いた。
受け取ろうとしたヒヒンソウの花、でも“あの時”、身体はもう何も動かせなくなっていた。
そしたらソソが私の胸の真ん中にヒヒンソウの花を置き、私の右手を取りヒヒンソウの花の上に重ねてくれた。
「次の人生は、ソソの姉や母としてじゃなく会いたいな。」
「今の人生だって本当の姉でも母でもないけどね。」
「ソソ、ルルが生きてたって知ったら喜ぶよ?
ソソはルルのことが大好きだったもんね~。」
「ソソが取る距離はきょうだいの距離感ではなかったよね?
あつ~い目でいっつもルルのことを見て!!」
「チチがたまに報告書をエリーに持たせてるみたいだから、その時にルルが目を覚ましたことを書いて貰いな!!」
「今チチを呼んでくる!!」
ミーナとサラがそう言って立ち上がり、部屋から出ていこうとした。
そんな2人の背中を見送ろうとしていたらミーナが何かを思い出したかのように私の方をまた振り向いた。
そして、私の枕元の方を指差して・・・
「ソソが求婚の時にルルに渡したヒヒンソウの花、そこに飾ってるからね!!
半年も枯れずに咲き続けてるんだけど!!」
そう言われ、顔を少しだけ動かし枕元を見た。
そしたらそこにはナイフではなくグラスが置いてあって。
赤い小さな花が咲いているヒヒンソウが飾ってあった。
ソソがくれたヒヒンソウの花。
半年も経つというのにまだ咲いているらしい。
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16歳
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この目にゆっくりと光りが入ってきた。
何故か頭が回らない。
だからこそ枕元のナイフを探そうとするけれど、右手が動かない。
右手だけではない、身体全てが動かない。
それに慌てていると・・・
「ぇ、りー・・・」
掠れた声が私の口から出て来て、私を覗き込んでいるエリーが嬉しそうな顔で笑い私の頭を優しく撫でてくれた。
母性本能があるエリー。
それが半獣の姿になれるようになってからよく分かった。
たまに急に現れてソソのことを抱き締めてきて、ソソはいつも恥ずかしがっていた。
そんなソソの姿を思い出していたら・・・
「ソソ、は・・・!?」
思い出した。
全てを思い出した。
“あの日”あった全てのことを思い出した。
「ソソ・・・!!!ソソ!!!!」
動かない身体で声だけを必死に出した。
掠れた声しか出なかったけれど、さっきよりも大きな声が出た。
そしたら・・・
「ルル・・・!!!」
「良かった・・・良かった!!!」
先代のチチの2人の娘、ミーナとサラが慌てた様子で私の視界の中に入ってきた。
「ソソは・・・!?ソソは!?」
聞きたいことが沢山あったけれど、出て来たのはソソの名前だけで。
聞いた私にミーナとサラは力強く頷いた。
「肩に大きめの怪我をしてたけど、生きてるよ。」
「知能の高いユンスと戦って生き延びて、王宮へと戻ったよ。」
「よく守ったね、ルル。
そして・・・よくあそこからここまで回復したね、信じられない。」
ミーナとサラが目に少しだけ涙を溜めながら言ってきて、私は自分のことよりもソソが生きていたこと、そして王宮へと戻ったことの方に深く安堵した。
「ソソ、戻ったか・・・。
自分の命が終わる時よりも凄い虚無感。
今までソソの為だけに生きてきたからな。」
“あの時”、私は死んでしまうと分かっていた。
だからこそ最後まで笑っていた。
笑えていたかは分からないけれど、ソソが強く生き抜けるよう、最後の最後まで笑顔を見せていた。
ソソにとって私は姉であり母のような存在だったはずだから。
「チチでさえ、ルルは死んだと判断してたからね?
“死の森”からインソルドに戻る途中、チチが“まだ息をしている”と言い出した時は全員ビックリしたよね!?」
「そうそう!!
チチが“埋葬する前に嫁に会わせたいが”、なんて言ってたくらいだったから!!」
「私も自分が死んだなと分かったくらいだったけどね?
その時は虚無感も何もなく、身体は凍えるくらい寒くなっていったけど心は温かくて。
ソソが抱き締めてくれてたし、それに・・・」
言葉を切った後に小さく笑うと、ミーナとサラがニヤニヤと笑い出した。
「ソソから求婚されてたでしょ~!!!」
「いいな~!!
10歳だったけどソソってヨークの次に強い男だったし!!」
「黒髪なんて何も気にならないくらい良い男だったし、もう少し長くインソルドにいたらルルじゃなくてうちらにもチャンスがあったかも~!!」
「10歳じゃ大抵の男は母さんが大好きだからね!!」
そう言われ、私は右手を少しだけ動かしてみた。
そしたらゆっくりとだけど右手が動いて。
その右手を自分の胸の真ん中に置いた。
受け取ろうとしたヒヒンソウの花、でも“あの時”、身体はもう何も動かせなくなっていた。
そしたらソソが私の胸の真ん中にヒヒンソウの花を置き、私の右手を取りヒヒンソウの花の上に重ねてくれた。
「次の人生は、ソソの姉や母としてじゃなく会いたいな。」
「今の人生だって本当の姉でも母でもないけどね。」
「ソソ、ルルが生きてたって知ったら喜ぶよ?
ソソはルルのことが大好きだったもんね~。」
「ソソが取る距離はきょうだいの距離感ではなかったよね?
あつ~い目でいっつもルルのことを見て!!」
「チチがたまに報告書をエリーに持たせてるみたいだから、その時にルルが目を覚ましたことを書いて貰いな!!」
「今チチを呼んでくる!!」
ミーナとサラがそう言って立ち上がり、部屋から出ていこうとした。
そんな2人の背中を見送ろうとしていたらミーナが何かを思い出したかのように私の方をまた振り向いた。
そして、私の枕元の方を指差して・・・
「ソソが求婚の時にルルに渡したヒヒンソウの花、そこに飾ってるからね!!
半年も枯れずに咲き続けてるんだけど!!」
そう言われ、顔を少しだけ動かし枕元を見た。
そしたらそこにはナイフではなくグラスが置いてあって。
赤い小さな花が咲いているヒヒンソウが飾ってあった。
ソソがくれたヒヒンソウの花。
半年も経つというのにまだ咲いているらしい。
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