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カルティーヌside........
ミランダから腕を掴まれたまま、私はステル殿下から出てくる言葉にこの身体が固まっていた。
まるで自分の身体ではないかのようにコントロールが出来なくなる。
早くステル殿下を止めなければいけないのに、この身体が動かなくなる。
「私への想い、ずっと持ち続けてくれてたの・・・?」
ステル殿下の言葉を聞いてそう呟いた時、ステル殿下の身体に力が込められたのが分かった。
「先に向こうに行って待ってる。
次の人生では最初から“ルル”よりも強い男でいられるよう、向こうで先に訓練してる。」
それを聞き終わる前に、私の腕を掴むミランダの手を振り切った。
さっきまでは信じられないくらい強い力で私の腕を掴んでいたミランダの手は、呆気なく振りきれた。
ミランダも手を離したタイミングなのだと分かり、それには小さく笑いながらステル殿下の元へと・・・ソソの元へと翔た。
そして・・・
「・・・ルル・・・っ!!」
ソソが出した悲痛な声が私の名前を呼んだ。
インソルドで呼ばれていた私の名前を。
ずっとソソに呼んで貰いたかった名前を。
ジルゴバートの喉に突き刺すはずだったソソの剣の刃を、私は両手で握り締めながら止めた。
そんな私を見下ろし、ソソの顔は大きく歪んでいる。
「私は大丈夫、聖女だから数分もあればこの傷は綺麗に再生する。」
私の言葉なんて何も耳に入っていないかのように、ソソの瞳は大きく揺れ、大きく動揺していることが分かる。
「その身体には傷を付けさせないと・・・俺が守ると、そう俺自身が言ったのに・・・。」
ソソの目はどんどん怒りの感情で満ち溢れてきた。
結婚式の時と同じようなソソの目。
あの時は「ごめんなさい」と言ってしまったけれど、今は違う。
「ありがとう。」
“ありがとう”と伝えた私にソソの瞳はまた揺れた。
「私を・・・“ルル”を忘れないでいてくれて。
ルルへの想いを持ち続けていてくれて。」
「そんなの当たり前だろ・・・。
俺にはルル以外見えないって言っただろ?」
「うん、10歳の時にね・・・。」
「インソルドの10歳はそこまでガキではない。」
「それはそうだけど・・・。
でも、迎えに来てくれなかったから。」
そう言ってから、この王宮にいる10歳のカルベルのことをチラッと確認した。
初めて見たであろうクレハの大群を見ながらも私に逃げるよう背中を押し、その後も私からの指示を守りこの場に王族の血を持つ人間を集めた強い男であるカルベルのことを。
「王宮にいる10歳もそこまで子どもじゃない。」
私も5歳まで王都で育った。
5歳の私でも私はそこまで子どもではなかった。
チチだけではなくお母様からも強く強く強く、どこまでも強く生き抜ける人間に育てられていたから。
とっくに顔も思い出せないお母様からの教育だけは思い出しながら、顔から大量の汗を流しながらも目をギラギラとさせながら私を見詰め続けているジルゴバートを真っ直ぐと見て、言った。
「俺の本当の名前は、カルベル・ヒールズ。
ステル皇子を拐った大罪人、元近衛騎士団長ダンドリー・ヒールズの息子。」
目も口も大きく開き驚いているジルゴバートに笑い掛けながら、続ける。
「男として生まれ男として育ったが、この度聖女となり女になった。
心は男のままだが、お前はそれでもいいか?」
ミランダから腕を掴まれたまま、私はステル殿下から出てくる言葉にこの身体が固まっていた。
まるで自分の身体ではないかのようにコントロールが出来なくなる。
早くステル殿下を止めなければいけないのに、この身体が動かなくなる。
「私への想い、ずっと持ち続けてくれてたの・・・?」
ステル殿下の言葉を聞いてそう呟いた時、ステル殿下の身体に力が込められたのが分かった。
「先に向こうに行って待ってる。
次の人生では最初から“ルル”よりも強い男でいられるよう、向こうで先に訓練してる。」
それを聞き終わる前に、私の腕を掴むミランダの手を振り切った。
さっきまでは信じられないくらい強い力で私の腕を掴んでいたミランダの手は、呆気なく振りきれた。
ミランダも手を離したタイミングなのだと分かり、それには小さく笑いながらステル殿下の元へと・・・ソソの元へと翔た。
そして・・・
「・・・ルル・・・っ!!」
ソソが出した悲痛な声が私の名前を呼んだ。
インソルドで呼ばれていた私の名前を。
ずっとソソに呼んで貰いたかった名前を。
ジルゴバートの喉に突き刺すはずだったソソの剣の刃を、私は両手で握り締めながら止めた。
そんな私を見下ろし、ソソの顔は大きく歪んでいる。
「私は大丈夫、聖女だから数分もあればこの傷は綺麗に再生する。」
私の言葉なんて何も耳に入っていないかのように、ソソの瞳は大きく揺れ、大きく動揺していることが分かる。
「その身体には傷を付けさせないと・・・俺が守ると、そう俺自身が言ったのに・・・。」
ソソの目はどんどん怒りの感情で満ち溢れてきた。
結婚式の時と同じようなソソの目。
あの時は「ごめんなさい」と言ってしまったけれど、今は違う。
「ありがとう。」
“ありがとう”と伝えた私にソソの瞳はまた揺れた。
「私を・・・“ルル”を忘れないでいてくれて。
ルルへの想いを持ち続けていてくれて。」
「そんなの当たり前だろ・・・。
俺にはルル以外見えないって言っただろ?」
「うん、10歳の時にね・・・。」
「インソルドの10歳はそこまでガキではない。」
「それはそうだけど・・・。
でも、迎えに来てくれなかったから。」
そう言ってから、この王宮にいる10歳のカルベルのことをチラッと確認した。
初めて見たであろうクレハの大群を見ながらも私に逃げるよう背中を押し、その後も私からの指示を守りこの場に王族の血を持つ人間を集めた強い男であるカルベルのことを。
「王宮にいる10歳もそこまで子どもじゃない。」
私も5歳まで王都で育った。
5歳の私でも私はそこまで子どもではなかった。
チチだけではなくお母様からも強く強く強く、どこまでも強く生き抜ける人間に育てられていたから。
とっくに顔も思い出せないお母様からの教育だけは思い出しながら、顔から大量の汗を流しながらも目をギラギラとさせながら私を見詰め続けているジルゴバートを真っ直ぐと見て、言った。
「俺の本当の名前は、カルベル・ヒールズ。
ステル皇子を拐った大罪人、元近衛騎士団長ダンドリー・ヒールズの息子。」
目も口も大きく開き驚いているジルゴバートに笑い掛けながら、続ける。
「男として生まれ男として育ったが、この度聖女となり女になった。
心は男のままだが、お前はそれでもいいか?」
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