【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
119 / 168
6

6-22

しおりを挟む
「ソソ。」



しばらくしてから俺の背中にチチの低い声が聞こえた。



それに俺は振り向くことが出来ず、ルルを抱き締め続けたままでいた。



そんな俺の目の前にチチが膝をつきルルを優しい顔で見下ろしている。



「今度は間に合ったのか。
最善を尽くしたな、よくやった。」



娘が死んでしまったのにそう言って、ルルの頭を優しく撫でたチチ。



「でも、父親として言っておく。
それは懸命な判断ではなかったぞ?」



そう言って・・・



チチはその目から少しだけ涙を流した。



「強く強く強く、どこまでも強く生きたな。
でも向こうで待ってろ。
次の人生ではもっと長く生き抜けるように俺が訓練してやる。」



魔獣との戦いで死んでいった人間達にチチは必ずそう伝える。



本当だったら王都で暮らしていたはずの娘がこんな場所で死んでしまったのに、チチはそんな言葉を掛けている。



「俺が厄災を呼んだ・・・俺のせいだ・・・。
ルルが死んだのは俺のせいだ・・・。
普通のユンスではなかった・・・。
統率を取り指揮を取っているユンスがいた。
まるで騎士のようだった。
第1騎士団のアルデの砦の騎士のようなユンスに見えた。
そんなユンスが現れ、そして俺を守ったルルが死んだのは俺のせいだ。」



カラカラに乾く口の中。
それでも一気に喋った俺にチチは妖しく笑った。



「どんな厄災よりも強くなれ、ソソ。
そうすればその黒髪なんて何も恐れることはない。」



チチがそんなことを言った時、俺達の周りに多くの人間達が・・・インソルドの村の人間達が武器を持ち集まってきた。



ルルが死んでしまっているのに誰1人泣くことはなく、その全員が力強い目で俺達のことを見詰めている。



インソルドでは誰が死んでも誰も泣かない。
死ぬことは悲しいことではないから。
次の人生でも必ず会えると、昔からそう教育されてきているから。



でも、俺の黒髪持ちのせいで王都を離れこんな場所で死んでしまったルル。
皇子とはいえ黒髪持ちの俺を守る為に死んでしまったルル。



俺は許せなかった。



俺は俺を許せなかった。



俺は俺の存在を許せない・・・。



許すことなんて出来ない・・・。



そう強く思い、地面に転がっていたルルのナイフを手に持ち・・・



そして、自分に向かって突き刺した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

処理中です...