【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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その日の夜



森の湖のほとりに座り、湖に浮かぶ月の光りが揺れているのを眺め続ける。
長い長い時間そうしているのに、俺の少し離れた隣にはルルがずっと座っている。



ルルはいつも俺の傍にいる。



いつもいつも、俺の傍にいる。



いつもいつもいつも、俺の傍にいた。



こんなにも眩しいくらいに光りながら。



そんなルルに視線を移すと、俺の視線に気付いたルルが俺のことを見た。



優しい優しい顔で見てきた。



その顔を見て、俺の目からは自然と涙が流れてしまった。



「俺に国王の血が流れてるから・・・皇子だからいつも俺の傍にいたの?」



「うん、そうだよ。」



ルルが当たり前かのように即答した。
それにはこの目から涙が大量に流れてきて、俺は俯きながら泣いた。



「俺をずっと恨んでた・・・っ?
俺が生まれなければルルもチチも王宮にいられて・・・っ母親と離れずに済んだのに・・・!!」



「ソソのことを恨んでないよ。
私はずっとチチの背中を見て育った。
だから国王をお守りするのが、国王の為に存在するのが私にとっても当たり前だった。
それに・・・」



ルルが言葉を切った後に嬉しそうに笑った。



「人前で身体を隠したり、性別は女なのに男だと嘘をついたりしなくて済んだ。
女のままなのに私がこんなにも強い女になれたのは、インソルドに来られてソソを守り続けてたから。
だからソソを恨む気持ちなんて何もないよ。」



きっと本心であろう言葉をルルが言ってくれる。
その言葉には少しだけ安心したけれど、嬉しくなかった。
俺は何も嬉しくはなかった。



「どんな気持ちで俺の傍にいたの・・・?
国にはいられないくらいの俺の傍に・・・。
国を滅ぼして、国に厄災を呼ぶような存在の俺の傍に・・・。
怖かった・・・?本当はずっと嫌だと思ってた・・・?
俺のことを良くないモノだとずっと思ってた・・・?
俺のこの髪の毛を触る時、ルルはどんな気持ちだった・・・?」



優しい優しい顔で俺の髪の毛をいつも触っていたルルの顔を思い浮かべながら、言った。



「俺のことを可哀想だと思ってた・・・?」



俯きながら、大量に涙を流しながら聞いた俺に、ルルが小さく笑った声が聞こえた。



「ソソは可哀想な人間じゃないのにそんなことを思うわけない。
黒髪持ちで生まれ“死の森”まで逃げてきて、魔獣に襲われそうになったけれど生き抜き、魔獣の返り血で血塗れになっていたけれど生き抜く為に泣いていたソソを。
魔獣持ちであった為にインソルドの村へ行くことが出来ることになったソソを。
白い霧の世界の中で真っ赤な血で濡れ、生き抜く為に大きな大きな口を開けて泣いていたソソのことを、私は可哀想だなんて1度も思ったことなんてない。」



それを聞き、俺は泣きながらも呼吸を整えて聞いた。



俯きながらだけど、聞いた。



「俺が16になるまで待っていてくれるって答えてくれたのは、俺が皇子だから・・・?
皇子の俺がそう頼んだから・・・?」



泣きながら、震えてきた声のまま、聞いた。



「俺のことを好きとかそういうのじゃないのに待ってるって答えたの・・・?
16になった時の俺と子作り出来るくらい好きとかそういうのじゃないのに・・・。」



この前の夜に見た、きょうだいの男と女がスキンシップをしていた光景を思い浮かべながら、聞いた。



「ルルにとって俺は、弟でもなく男でもなく、皇子だったの・・・?
黒髪持ちの俺が16まで王宮で生き抜けるようにする為に、俺からの求婚を待ってるって・・・っそう答えたの・・・っ?」



「うん、そうだよ。」
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