【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
110 / 168
6

6-13

しおりを挟む
ルルのそんな言葉には首を傾げた。
チチもルルも俺のことを見ることなく、お互いに真剣な目で見詰め合っている。



そして、先に口を開いたのはチチ。



「ソソ。」



俺の名前を呼び、鋭い視線で俺のことを見詰めてくる。
チチはよくこんな目で俺や村の人間達に教育や訓練や指揮を取る。
そんなチチの大きな大きな背中は村の人間達にとって絶対的な存在だった。



でも、俺にとってはそれだけではなくて。



いつか越えるべき存在でもあった。



そんなチチが俺を真っ直ぐと見詰めながら続けた。



「お前に調査を任せたい。」



この流れからそんな話になったのには少し驚きながら、「はい。」と返事をした。



「サンクリア王国の実情と内情を俺に報告してこい。」



「サンクリア王国の実情と内情を?」



てっきり“死の森”やアデルの砦のことかと思っていたら、国自体の話でそれには驚いた。



「王宮へ行き、そこで実情と内情を調査してこい。」



「王宮・・・?」



俺が聞くとチチは鋭い目で深く頷き、続けた。



「王宮で16歳まで生き抜き、その時までルルに求婚したいという想いがあれば、その時はルルを迎えにこい。」



「王宮で・・・16まで・・・。」



「王宮で文字も覚えて定期的に俺に報告書を上げてこい。
報告書はエリーに持たせて俺に届ける手段を取りたい。
俺からも何かがあればアデルの砦の人間にグースで届けさせるが、読んだらすぐに処分をするように。」



「国や王宮のことなどは第1騎士団では把握しないのが昔からの決まりですよね?
知ってしまうことによってサンクリア王国に生きる民を最前線で守ることが出来なくなることもあると。」



「そうだ、第1騎士団ではな。
だが俺は第1騎士団であって第1騎士団の人間ではないような奴だから。」



よく分からない話に首を少しだけ傾げると、チチが鋭く光る目で口を開いた。



「俺は近衛騎士団の団長だった人間。
王宮に戻ると嫁に約束し、陛下とはお前に国王に必要な教育をさせるようにと命令された。」



予想もしていなかったいくつもの言葉が飛び出し固まってしまう。



「そろそろ王宮に戻ってもいい頃だな、ソソ。
ルルの言う通り、10歳であれば良くないモノには見えないギリギリの年齢だろう。
それ以上になってくると男としての認識に変わっていくからな。
まだまだガキだと思われる年齢なはずだ、王宮や王都の人間からしてみると。」



チチの言葉が耳に入っているはずなのに頭には何も入っていかない。
呆然としながらチチを眺めていることしか出来ない。



「ここで俺が教えられる国王としての教育には限界がある。
王宮に戻ってサンクリア王国の実情と内情を調査し、そして最善を尽くしてこい。」



何かを言おうとはするけれど、口が開いたり閉じたりしているだけでこの口からは何も音が出てこない。



チチの声がやけに遠くから聞こえるような気がする。



やけに遠くから聞こえるような気がするのに、こんなにもハッキリと聞こえた。



ハッキリと聞こえてしまった。

























「この世界では王族の人間に黒髪が生まれると国を滅ぼすと、厄災が降りかかると言われている。
だからお前が生まれて数日経った頃、陛下からお前を匿うよう、そして国王に必要な教育をさせるよう命を受けた。
ソソ、お前には国王陛下の血が流れている。
お前はサンクリア王国の第2皇子だ。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

【完結】シロツメ草の花冠

彩華(あやはな)
恋愛
夏休みを開けにあったミリアは別人となって「聖女」の隣に立っていた・・・。  彼女の身に何があったのか・・・。  *ミリア視点は最初のみ、主に聖女サシャ、婚約者アルト視点侍女マヤ視点で書かれています。  後半・・・切ない・・・。タオルまたはティッシュをご用意ください。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

処理中です...