【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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ルルの真っ白な髪の毛を強く強く握り締めながら言うと、ルルも力強い目で俺のことを見詰め返してくる。
ルルのこんな目を見るのも初めてだった。
魔獣と戦う時とも訓練の時とも違う目に見える。



「分かった、待ってる。」



ルルのその返事に心から安心した瞬間、ルルが両手をゆっくりと伸ばしてきた。
そしていつものように俺の髪の毛を触ってくる。
この時のルルの顔はいつも優しい顔をしている。
姉でも母でもないような顔で俺の髪の毛に触れる。



「待ってるから、絶対に求婚しに来てよ?」



「うん、絶対に求婚する。」



そう答えてからルルの真っ白な髪の毛にもう1度口付けをした。



そんな俺にルルは照れたように笑っていて。



そして・・・



チチの所に、ルルの実の父親で俺の育ての父親の所に帰ったというか、連れていかれた。



「10歳か。」



アデルの森の向こう側にある村よりももっと簡素な家、今日もガタガタと揺れるテーブル、俺の目の前に座っているチチがルルと同じ言葉を呟いた。



「俺は10だけど・・・」



俺が喋り始めると、俺の隣に座るルルが右手で制止のポーズをしてきた。
それを確認して俺は口を結ぶ。



「ソソは私以外見えないらしいよ。
これから先のことは分からないけど、今は本気でそう思ってくれてる。
そう強く強く強く想ってくれてる。」



「そうか。」



チチが難しそうな顔をしながらも俺に視線を移してきた。



「まだ10歳だからこそルル以外見えないということもあるだろうがな。」



困った顔にも見える顔で、チチが俺のことをバカにしたように笑ってきた。



「俺だって嫁のことを意識したのはアイツが15くらいになってからだしな~。」



「お母様はチチのことが昔からずっと好きじゃなかったって言ってたけどね。」



「そうだな、最後まで好きになることはなかっただろうな。
あの日アイツを残すことを俺は最善の選択と判断したから。
俺達は好きとかそういう感情で夫婦になったわけじゃないからそんなものだろ。」



「“最後”ではないでしょ。
チチは戻るんでしょ、必ず。」



チチが“嫁”、ルルが“お母様”と言いながら2人でそんな会話をしていく。
2人が“嫁”と“母”の話をこんなにするのは初めてだった。
親や子やきょうだいが死んでしまっていることも当たり前のようにこの村ではある。
だからチチの“嫁”もルルの“母”もそうなのだと思い込んでいた。



少し驚いている俺をチチは真っ直ぐと見詰めてきた。



「10歳か。」



またそのことを言われた。
それにまた反論しようとした時、ルルが素早く頷いたのが視界の端に入った。



「良くないモノには見えないギリギリの年齢とも判断出来る。」
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