【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
107 / 168
6

6-10

しおりを挟む
夕方



「何不貞腐れてるの?」



森の湖のほとり、焚き火の近くでルルが俺の背中を布で拭きながら聞いてきた。



「不貞腐れてない。」



「そう?」



ルルがそう返事をした瞬間・・・



「・・・・っ・・・!!!」



俺の脇を思いっきりくすぐってきた。



「・・・まっ・・・やめ・・・っ!!」



ルルの両手から逃れようとするけれどルルは俺を逃がさない。
やっぱり俺とは比べ物にならない力で、ルルと訓練はしたことがないけれど、たまにやられるコレで力の差を実感する。



「・・・・・っ、わかっ・・・たから・・・っ!!」



「ねぇねぇ、どうしたの~?」



「はなす・・・っはなすから・・・っ!!」



「なになに?どうしたの~?」



「やめ・・・っ、いったん、やめ・・・っ」



必死に抵抗している俺にルルは大笑いしながら両手で追い込んでくる。



大笑いしながら追い込み、追い込み、追い込んできて・・・



「負けました・・・っ!!
俺の負けです・・・!!!」



必死に叫ぶと、仰向けになっている俺の上に跨がりながらルルが笑った。



「私の勝ち!!
それで、どうしたの?」



ルルから聞かれ、ルルから目を逸らしながら答えた。



「今俺がルルに求婚しても、良くない返事なんだろうなと思って・・・。」



俺の言葉にルルが少しだけ驚いた顔をした。
でも、少しだけ。
照れたよう笑い、上半身が裸の俺の上に跨がっているルル。



「ソソは私のことが好きだからね。」



「うん、好き。」



「ありがとう。」



たまになる流れ、今日もこの“ありがとう”で終わってしまう。
それに今日も苦しくなりながら、上半身を起こしてルルと向き合う。



それから頭の後ろで1つに束ねられているルルの真っ白な長い髪の毛、それにゆっくりと手を伸ばし1束右手でソッと握った。



不思議そうな顔をしているルルを見詰めながら、その髪の毛に俺は口付けをする。



この前の夜に他の男達と見た、きょうだいの女と裸でスキンシップをしていた男がしていた仕草を真似た。



不思議そうな顔で俺を見詰めているルルに聞く。



「最近何でルルは裸にならないの?
少し前まで一緒に水浴びしてたのに。
俺に裸を見られるのは嫌になった?
俺が好きだって言うから・・・。」



「そういうわけじゃないけど、チチから“ソソも10歳になったから”ってこの前言われて。
私も15歳だし。」



「15だから何?
ルルは来年16になって結婚だって出来るようになるから?
弟の俺ではない男に見せることになるから、俺には見せなくなったの?」



「私よりも強い男がいないから、私はまだ結婚しないよ。」



「でも大人の女が男より強くなることはほぼないって聞いた。
今はその小さくて軽い身体を利用した戦い方でルルは強いけど、もっと大人になって太い筋肉がついた時に俊敏さもなくなる。
でも力の強さでは男に勝てなくて、ルルはきっと2番目に強い人間じゃなくなる。」



「もっと大人になったらそうなるかもね。
でも今はチチの次に強い人間は私。
ソソが大人の男になる頃くらいまでは頑張るよ。」



その言葉を聞き、ルルの真っ白な髪の毛の束を少しだけ強く握りながら聞いた。



「それじゃあ、俺が大人になるまでルルは誰の求婚も受けないで、俺が16になるのを待っててくれる?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

処理中です...