【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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俺がそう言うとヨークがゆっくりと俺に振り向いてきた。
その目は魔獣と戦う時や森で狩りをする時、そして俺と訓練する時の目とも違う目に見える。



でも真剣な目で俺を見下ろしながらヨークが口を開いた。



「まだ10歳だろ?
好きな女とか求婚とかには数年早い。
俺がルルより強くなるにはもう少し時間が掛かる。
だからソソも焦るな。」



真剣な顔でそう言われたけれど、俺はすぐに口を開く。



「俺はルルがいい。
ルル以外俺には見えない。」



「そこまで言うか・・・っ」



ヨークが吹き出して笑い、困った顔で笑いながら小さく何度も頷いた。



「そこまで言うならルルに求婚したいっていうその気持ちを伝えてみろよ。
俺は後はルルの判断に任せる。」



「今伝えても良くない答えなのは分かってる。
俺はまだルルより強くなれていない。」



「ルルは自分より強い男と結婚するんだもんな。
昔からそう言い続けている。
何度も何度も、しつこいくらいに言い続けてる。」



ヨークがそう言って、俺のことを怖いくらい真剣な顔で見てくる。



「その言葉があったからお前は10歳でインソルドで3番目に強い男になれた。
お前は赤ちゃんの頃からずっとルルが好きだったからな。」



その言葉に深く頷くと、ヨークが少しだけ怒った顔で笑った。



「どうせ母親が好き、くらいの心だろ!? 
俺だって10歳くらいの頃は母さんが女の中で1番好きだったぞ!!!
ルルに気持ちを伝えて思いっきり断られてこい!!!
それでまた俺が訓練してやるからいつでも来い!!!」



「その方が今よりももっと強くなれるかな?」



「ルルよりも強くなる為に訓練してるうちに、母親よりも好きな女が出来るもんだぞ!!」



「俺にはルル以外見えない。」



「俺だって10歳の頃は母さん以外の女は好きじゃなかったからな!?」



「好きとかそういうことじゃない。」



俺の返事にヨークが不思議そうな顔で首を傾げた。
そんなヨークに俺はもう1度言う。



「俺にはルル以外見えない。
ルル以外は見えないんだ。」



俺が断言した時・・・



「私が何?」



俺の後ろからルルの声が聞こえた。
俺をヨークの元まで送り、俺の訓練中は見える範囲でインラドルを見て回っていたルル。
そろそろインソルドに帰る為にいつものように俺を迎えに来たのだと分かる。
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