【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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ステルside........




10歳、冬




「・・・・・っ」



地面に力強く背中を打ち付けられ、受け身を取ったけれど数秒呼吸が出来なくなった。
俺の上に乗り木の枝を俺の喉ギリギリに突き付けているヨーク。



「わざわざインラドルにまで来て戦いを挑んで来るなよ。
お前はインソルドの戦士だろ?」



サンクリア王国の民を最前線で守る第1騎士団。
そして第1騎士団の中でも更に最前線、“死の森”の番人をしているインソルドとインラドルの戦士達。



俺達は“騎士”ではなく“戦士”だと教育されている。
“死の森”の番人を任されたこの領地の領主、伯爵であるマフィオス家は剣王のロンタス王に“騎士”ではなく“戦士”になるよう命令された。



“騎士”としての規律や規則より何よりも、民を1番に考え民の為だけに戦う“戦士”。
アデルの砦とは別に、インソルドとインラドルは“騎士”よりも更に最前線、“戦士”であるように命令されていた。



集中していた神経を緩めていき、俺は地面の上で大の字になる。



「インソルドでは俺が3番目に強いから。
インラドルで2番目に強いヨークと訓練したい。」



「インソルドで2番目に強いルルに訓練して貰えよ。」



木の枝をクルクルと投げ片手でキャッチしていくヨークが俺の身体の上からゆっくりと退いた。



「剣でも木の枝でもソソは相手を殺すつもりで本気で訓練してくるからな。
ルルを傷付けるのが怖いか?」



その言葉には黙っていると、ヨークがニヤニヤとしながら俺を見下ろしてきた。



「血は繋がってないけどお前達は本当の姉弟だ!!
それにルルは俺よりも強いからな、安心して訓練して貰えよ!!」



今日もそう言われ、俺は無言のまま上半身だけを起こした。
それからヨークを見上げ続けたままゆっくりと口を開く。



「ルルは来年16になる。」



「そうだな。」



ヨークは俺に背中を向け屈伸をしたり身体を伸ばしたりしている。



「俺が16になるまであと6年。
その時にルルは21になってる。」



「そうだな。」



「ルルよりも強くなったら、ヨークはルルに求婚する?」



「そのつもり。
アイツ以上に強い女は今のところいないからな。
この村では強い女に惹かれる。」



「クレドが言うにはここを出ると違うらしいね。」



「そうらしいな。」



ヨークの返事を聞き、俺はゆっくりと立ち上がりヨークの大きくなってきた背中を見る。



「俺が16になるまでルルに求婚するのは保留にして欲しい。
俺が16になった時に俺とヨーク、どっちがルルに求婚出来るかの勝負をして欲しい。」



「お前はルルの弟だろ!!
きょうだいで結婚するのは認められてないから諦めろ!!
それにお前にとってルルは姉っていうよりも母だぞ!?
棄てられてたお前の名前を付けたのはルルだからな!!」



それを今日も言われ、俺は両手を強く握り締める。



「認められてないのは本当に血の繋がりがある男と女でしょ?
親が魔獣に殺されることもあるからきょうだいになることもあって、結婚してる男と女もいる。
この前はインソルドのそういう2人が夜にスキンシップしてたよ?
俺が指摘したら苦笑いしながらそうハッキリ教えてくれた。
だから俺もルルに求婚出来るよね?」



「夜に何そんな所覗いてるんだよ!!」



「素振りしてたら男達が誘ってきたからついていったらそんなことをしてた。」



「アイツらな~!!!
インラドルの男よりも何故かやること言うことがガキなんだよな~!!!」



ヨークの大きくなってきた背中が笑っていて、その背中を眺めながら聞く。



「俺がルルに求婚するのはそんなにいけないの?
俺がルルに求婚する話をすると、みんな俺から目を逸らす。」
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