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ステル殿下と一緒にモルダン近衛騎士団長の後ろに続きながら王座の間へと向かう。
王宮の中はテキパキと動く者達で行き交っていて、それには首を傾げながら歩く。
私が王宮に来て4ヶ月、その間に見たことがない男や女が多く王宮の中にいるから。
その全員がステル殿下を見て大きく驚き、深く深く頭を下げていた。
「知ってる人?」
「いや、知らない。
・・・といっても、カルティーヌと結婚するまでは騎士団以外に目を向けたことがなかったのもあるが。」
「この混乱に乗じて門の管理も混乱するよう俺が指示を出しておいた。」
急にモルダン騎士団長が振り向きながらそう言ってきて、私の父親によく似た笑顔で笑っている。
「太陽の光りが差し込む空の中で魔獣と戦う黒髪持ちのお前の姿を見た元宮廷勤めの者達が戻ってきている。」
モルダン騎士団長が妖しく笑いながらそう言った時、王座の間の立派な扉の前に着いた。
モルダン騎士団長は鋭い目でその扉を見詰めている。
「ジルゴバートに宮廷を追い出された多くの者達を、この混乱に乗じて宮廷の中に戻した。
このタイミングなのだと俺は判断した。」
モルダン騎士団長がその目だけで人間や魔獣を殺せるくらいの目でステル殿下のことを見てきた。
「これから俺は王族に謀反を起こす。
太陽の刻印をクラスト陛下から奪った偽王だと、ジルゴバートを討つ。」
近衛騎士団長がそんな強行手段を取ろうとしていることに驚いていると、モルダン近衛騎士団長は続けた。
「その為には次に王の座に座れる者が必要だった。
クラスト陛下から明言されたわけでもカンザル教会の教皇から選ばれたわけでもないが、クラスト陛下が戻られるまで、偽王だとしてもクラスト陛下の代理として王の座に座れる者が必要だった。」
王座の間の立派な扉に鋭い目を戻していたモルダン近衛騎士団長がまたステル殿下のことを真剣な目で見詰めた。
「療養中のクラスト陛下の代理としてジルゴバートが王の座を預かることは自国だけでなく他国へもすぐに知らされた。
あまりにも早すぎる動きで、ジルゴバートの重鎮や側近が何処かのタイミングでそれを準備していたとしか思えなかった。
あまりにもあっという間にクラスト陛下の王国は陥落された。」
モルダン近衛騎士団長が苦しそうに顔を歪め、それからステル殿下に騎士のポーズを取った。
「クレド副団長からは、クラスト陛下が戻られるまでに王の座に座れる皇子が育った時、そのタイミングでジルゴバートを討つように命令されました。」
「「クレド副団長?」」
ステル殿下と私の声が重なった。
「はい、近衛騎士団の副団長、クレド・アラモエル。
衰弱し切ったクラスト陛下を連れてサンクリア王国を発ちました。
あのままの状態でクラスト陛下を生かし続けるのがジルゴバートや重鎮、側近達の思惑だったので。」
「「クレド・アラモエル・・・。」」
またステル殿下と声が重なり、お互いに視線を合わせた。
「ステル皇太子殿下はこれまで騎士団以外に興味はない皇子なのだと判断していました。
けれど、聖女様が現れてから変わられた。
如何なる理由でも王族に謀反を起こしてはならないこの国で私は謀反を起こします。
自分の命に代えてまで王の座に座らせる皇子が育った時、そのタイミングで謀反を起こすようクレド副団長からは命令されました。」
ステル殿下からまたモルダン近衛騎士団長に視線を移すと、その目は本気の目をしていた。
「王座の間にはミランダ侍女長とその息子が集めた王族の血を引く者の他に、多くのジルゴバートの重鎮や側近が集まっています。
ジルゴバートの側が1番安全だと逃げ込んで来ました。
今ならジルゴバートだけでなくその側近達も討つことが出来ます。」
モルダン近衛騎士団長が腰に差した剣の柄を握り締めながら、私のことを嬉しそうに笑いながら見下ろした。
「自分に王族の血が流れていなかったのを後悔するくらいの良い女だな、お前。
この黒髪持ちの男のこと、後は任せたぞ。」
王宮の中はテキパキと動く者達で行き交っていて、それには首を傾げながら歩く。
私が王宮に来て4ヶ月、その間に見たことがない男や女が多く王宮の中にいるから。
その全員がステル殿下を見て大きく驚き、深く深く頭を下げていた。
「知ってる人?」
「いや、知らない。
・・・といっても、カルティーヌと結婚するまでは騎士団以外に目を向けたことがなかったのもあるが。」
「この混乱に乗じて門の管理も混乱するよう俺が指示を出しておいた。」
急にモルダン騎士団長が振り向きながらそう言ってきて、私の父親によく似た笑顔で笑っている。
「太陽の光りが差し込む空の中で魔獣と戦う黒髪持ちのお前の姿を見た元宮廷勤めの者達が戻ってきている。」
モルダン騎士団長が妖しく笑いながらそう言った時、王座の間の立派な扉の前に着いた。
モルダン騎士団長は鋭い目でその扉を見詰めている。
「ジルゴバートに宮廷を追い出された多くの者達を、この混乱に乗じて宮廷の中に戻した。
このタイミングなのだと俺は判断した。」
モルダン騎士団長がその目だけで人間や魔獣を殺せるくらいの目でステル殿下のことを見てきた。
「これから俺は王族に謀反を起こす。
太陽の刻印をクラスト陛下から奪った偽王だと、ジルゴバートを討つ。」
近衛騎士団長がそんな強行手段を取ろうとしていることに驚いていると、モルダン近衛騎士団長は続けた。
「その為には次に王の座に座れる者が必要だった。
クラスト陛下から明言されたわけでもカンザル教会の教皇から選ばれたわけでもないが、クラスト陛下が戻られるまで、偽王だとしてもクラスト陛下の代理として王の座に座れる者が必要だった。」
王座の間の立派な扉に鋭い目を戻していたモルダン近衛騎士団長がまたステル殿下のことを真剣な目で見詰めた。
「療養中のクラスト陛下の代理としてジルゴバートが王の座を預かることは自国だけでなく他国へもすぐに知らされた。
あまりにも早すぎる動きで、ジルゴバートの重鎮や側近が何処かのタイミングでそれを準備していたとしか思えなかった。
あまりにもあっという間にクラスト陛下の王国は陥落された。」
モルダン近衛騎士団長が苦しそうに顔を歪め、それからステル殿下に騎士のポーズを取った。
「クレド副団長からは、クラスト陛下が戻られるまでに王の座に座れる皇子が育った時、そのタイミングでジルゴバートを討つように命令されました。」
「「クレド副団長?」」
ステル殿下と私の声が重なった。
「はい、近衛騎士団の副団長、クレド・アラモエル。
衰弱し切ったクラスト陛下を連れてサンクリア王国を発ちました。
あのままの状態でクラスト陛下を生かし続けるのがジルゴバートや重鎮、側近達の思惑だったので。」
「「クレド・アラモエル・・・。」」
またステル殿下と声が重なり、お互いに視線を合わせた。
「ステル皇太子殿下はこれまで騎士団以外に興味はない皇子なのだと判断していました。
けれど、聖女様が現れてから変わられた。
如何なる理由でも王族に謀反を起こしてはならないこの国で私は謀反を起こします。
自分の命に代えてまで王の座に座らせる皇子が育った時、そのタイミングで謀反を起こすようクレド副団長からは命令されました。」
ステル殿下からまたモルダン近衛騎士団長に視線を移すと、その目は本気の目をしていた。
「王座の間にはミランダ侍女長とその息子が集めた王族の血を引く者の他に、多くのジルゴバートの重鎮や側近が集まっています。
ジルゴバートの側が1番安全だと逃げ込んで来ました。
今ならジルゴバートだけでなくその側近達も討つことが出来ます。」
モルダン近衛騎士団長が腰に差した剣の柄を握り締めながら、私のことを嬉しそうに笑いながら見下ろした。
「自分に王族の血が流れていなかったのを後悔するくらいの良い女だな、お前。
この黒髪持ちの男のこと、後は任せたぞ。」
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