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“ソソ”と呼んだ私のことをステル殿下が瞬間的に確認したのを見た。
ステル殿下はきっと気付いたはず。
私が腕を伸ばして空を指差しているのが。
「上へ!!!!」
聞こえているかは分からないけれど叫んだ。
叫んだその瞬間、クレハ達の一瞬の隙をつき、僅かな隙間からグースに乗ったステル殿下が勢い良く私の方に翔け上がってきた。
私は小さく笑いながらその光景を見下ろす。
翔け上がってきたステル殿下の後を追うクレハの群れを。
良い感じに細く伸びていくクレハの行列を。
そして、私はステル殿下の元へとグースで翔け下りた。
空の上でステル殿下と真っ直ぐと向き合う。
漆黒の髪が太陽の光りで輝いているステル殿下の姿を見詰めながら、私は小さく笑った。
「その身体、傷付けるなよ!!」
そんなことを聖女になった私に言ってきて、それにはすれ違い様に大笑いしながら叫んだ。
「私の身体にはもう二度と傷が付かない!!!」
そう叫びながら、突っ込んだ。
クレハの行列へと突っ込んだ。
狂ったようにステル殿下だけを追っているクレハの行列へ。
すれ違い様にステル殿下の腰から抜かれ渡された、もう1本の長い剣も左手で持ち、突っ込んだ。
この身体なら長い剣でも振るえる。
民を守る為。
そして、国王陛下になるステル殿下を守る為。
クレハをこの両手で倒していく。
空で何度もステル殿下とすれ違いながら、倒していく。
いつからか私の後ろには第2騎士団の騎士達が集まり、私が倒し損ねているクレハ達を倒していく。
それを何度も繰り返し・・・
何度も何度も繰り返し・・・
そして・・・
雲が割れ続ける空にクレハは1体もいなくなっていた。
空の上でグースに乗りながらステル殿下と向かい合う。
“チチ”が乗っていたグースよりも一回りも大きなグースに乗っているステル殿下と。
お互いに小さく笑い合った後、同じタイミングで下を見下ろした。
そしたら、王都には多くの兵達が落ちているクレハの処理や民達を避難させ続けている。
「お前ら!!見事に王都を滅茶苦茶にしてくれたもんだな!!」
そんな声が聞こえて声の主を見てみると、モルダン近衛団長が困ったように笑いながらグースに乗って近付いてきた。
「聖女様が第2騎士団を率いていて、どっちが騎士団長が分からなかったぞ!?」
「私は第1騎士団の団長、カルティーヌ・マフィオス。
“死の森”の番人として最前線で戦う騎士団、第1騎士団の団長をしている女。
第2騎士団長、ステル殿下より第2騎士団を預かっていた。」
ステル殿下はきっと気付いたはず。
私が腕を伸ばして空を指差しているのが。
「上へ!!!!」
聞こえているかは分からないけれど叫んだ。
叫んだその瞬間、クレハ達の一瞬の隙をつき、僅かな隙間からグースに乗ったステル殿下が勢い良く私の方に翔け上がってきた。
私は小さく笑いながらその光景を見下ろす。
翔け上がってきたステル殿下の後を追うクレハの群れを。
良い感じに細く伸びていくクレハの行列を。
そして、私はステル殿下の元へとグースで翔け下りた。
空の上でステル殿下と真っ直ぐと向き合う。
漆黒の髪が太陽の光りで輝いているステル殿下の姿を見詰めながら、私は小さく笑った。
「その身体、傷付けるなよ!!」
そんなことを聖女になった私に言ってきて、それにはすれ違い様に大笑いしながら叫んだ。
「私の身体にはもう二度と傷が付かない!!!」
そう叫びながら、突っ込んだ。
クレハの行列へと突っ込んだ。
狂ったようにステル殿下だけを追っているクレハの行列へ。
すれ違い様にステル殿下の腰から抜かれ渡された、もう1本の長い剣も左手で持ち、突っ込んだ。
この身体なら長い剣でも振るえる。
民を守る為。
そして、国王陛下になるステル殿下を守る為。
クレハをこの両手で倒していく。
空で何度もステル殿下とすれ違いながら、倒していく。
いつからか私の後ろには第2騎士団の騎士達が集まり、私が倒し損ねているクレハ達を倒していく。
それを何度も繰り返し・・・
何度も何度も繰り返し・・・
そして・・・
雲が割れ続ける空にクレハは1体もいなくなっていた。
空の上でグースに乗りながらステル殿下と向かい合う。
“チチ”が乗っていたグースよりも一回りも大きなグースに乗っているステル殿下と。
お互いに小さく笑い合った後、同じタイミングで下を見下ろした。
そしたら、王都には多くの兵達が落ちているクレハの処理や民達を避難させ続けている。
「お前ら!!見事に王都を滅茶苦茶にしてくれたもんだな!!」
そんな声が聞こえて声の主を見てみると、モルダン近衛団長が困ったように笑いながらグースに乗って近付いてきた。
「聖女様が第2騎士団を率いていて、どっちが騎士団長が分からなかったぞ!?」
「私は第1騎士団の団長、カルティーヌ・マフィオス。
“死の森”の番人として最前線で戦う騎士団、第1騎士団の団長をしている女。
第2騎士団長、ステル殿下より第2騎士団を預かっていた。」
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