【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
上 下
89 / 168
5

5-11

しおりを挟む
「そうなんだ・・・。凄いね、ソソは。
まだ13歳だった頃からそんな感じだったんだ。
とんでもない男に育っちゃったね。」



そう言って大きく笑った時、見えた。



3つの小屋の向こう側に赤いヒヒンソウの花が咲いているのが。



そのヒヒンソウの花を眺めながら無意識に立ち上がり、そこまでゆっくりと歩いた。



そしてヒヒンソウの花を1本手に取る。



そこには小さな小さな赤い花が咲いている。



どんな場所でも強く咲くことが出来る花、ヒヒンソウの花を見詰めながら呟いた。



「やっぱり、私のことを迎えに来るつもりはなかったか・・・。」



“月のモノ”が来なくなっていた私のことを、5歳も年上の私のことを、この王宮にいる女のように軟弱な見た目ではない私のことを、ソソはとっくに忘れていた。



インソルドを経つ最後の日に求婚してくれていたのに・・・。
次の人生で結婚しようと、そう求婚してくれていたのに・・・。
“死の森”に咲いているヒヒンソウの花を渡して、私に求婚してくれていたのに・・・。



あの時に受け取ることが出来なかったヒヒンソウの花。
その花をずっと大切に持ち続けていたのは私だけだった。



聖女になってしまい、“第2騎士団の団長で第3皇太子であるステル殿下と結婚をする”。
そのことは分かっていた。



だから、この人生では受け取ることが出来なかったのソソからの求婚を受け取ってきた。



この人生で他の男と結婚をした私のことをソソはきっと許してくれないと思ったから。
物凄く嫉妬深い男だったから、他の男と結婚をした私のことを次の人生で迎えに来てくれないと思っていた。



だから・・・



だから、受け取るだけでもと思い・・・



記憶の中のソソと・・・



10歳の頃のソソと・・・



2人だけで結婚式を挙げてきた・・・。



記憶の中だけでも二度と会わないつもりで・・・



インソルドで生きたルルとして、ソソからの求婚を受け取ってきた・・・。



「“私”じゃなくて、他にいたでしょ・・・。
次の人生で必ず求婚をするって、“ルル”にそう約束したでしょ・・・。」



13歳の頃にはとっくに別の女がいた“ソソ”に、小さな声で呟いた。



ヒヒンソウの小さな花の周りには次から次へと私の目から涙が落ちてきて。
ぼやけた視界の中、私の涙まで真っ赤に見えた。



まるで血のような赤に、見えた・・・。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】逆行した聖女

ウミ
恋愛
 1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m

処理中です...