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1本足で前を歩く男がそう言って・・・



「魔獣持ちって、剣王のロンタス王みたいな?」



俺が聞くと男が少しだけ振り向いてきて頷いた。



「その魔獣、村で第2皇子を育てさせる為に俺達を誘導してきたんだろうな。
そんなことが出来る魔獣なんてロンタス王が持った魔獣、グースくらいだろ。
それを考えれば簡単な答えだ、その第2皇子は魔獣持ち。」



それには驚きながら俺の隣を歩く魔獣を見ながら歩く。
魔獣は俺の胸の真ん中にいる第2皇子を水色の目で見詰めている。



「その第2皇子、名前は?」



「名前はあるが、その名は言えない。
あまりにも可哀想な名でな。
周りを黙らせる為に、周りを惑わす為に、その名を付けただけだ。」



俺も知らなかった話をお父様がしていく。
それを第2皇子の泣き声を聞きながら聞いていると、前を歩く1本足の男が言った。



「インソルドに着くまでに名前を付けてやろう。
お前、性別が女なんだろ?
男の俺達が付けるよりも良い名前が付けられるだろ。
何かあるか?」



女として育てられたことは1度もない俺にそんなことを言ってきた。
それには困ったけれどお父様も何も言わず、俺に任せているのだと分かる。



どうしようかと悩みながら、さっきからずっと大きな大きな口を開けて泣いている第2皇子を見下ろす。



黒髪持ちで生まれ“死の森”まで逃げてきて、魔獣に襲われそうになったけれど生き抜き、魔獣の返り血で血塗れになっているけれど生き抜く為に泣いている第2皇子の姿を。



魔獣持ちであった為にインソルドの村へ行くことが出来ることになった第2皇子の姿を。



この白い霧の世界の中、真っ赤な血で濡れている第2皇子を見下ろしながら俺は呟いた。



「ヒヒンソウ・・・。」



「「ヒヒンソウ?」」



お父様と男の声が重なり、俺のことを見てきた。
俺は2人に深く頷きながら答える。



「ヒヒンソウにする。
どんな場所でも咲くことが出来る強い花、ヒヒンソウという名前に。
どんな場所でも、強く強く強く、どこまでも強く生き抜ける子になるように。」



俺の胸の真ん中で強く強く泣き続ける血で濡れたヒヒンソウを強く抱き締めながら、そう言った。
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