81 / 168
5
5-3
しおりを挟む
それから・・・
「あの、何か・・・?」
あの古い扉を開けてカルベルの所に逃げ込むと、目の前に立った私にカルベルは恐る恐る声を掛けてきた。
「こんな姿だけど、私!!ルル!!」
「え・・・ルル伯爵令嬢ですか!?
すみません、その姿だと分からなくて。
そんな姿でどうされたんですか?」
「貴族の悪い男達から昼ご飯に誘われたり夜に部屋に来るように誘われたりし始めたから逃げてきた。」
「ナンフリーク殿下が貴族の女性達を相手にするのを止めると宣言したらしいので、元々ルル伯爵令嬢に目を付けていた男性達かもしれませんね。」
「違う違う、女から相手にされないような軟弱な貴族の男達!!
親がジルゴバート“陛下”の重鎮や側近らしくて、王宮を出入り出来るって自慢してたよ?」
「それは災難でしたね、その類いの男性達は傲慢で乱暴な男性ばかりなので。
僕はたまに蹴飛ばされたりしています。」
「誰にやられたの?特徴は?
私がバレないように一瞬で殺してくるよ。」
本気でそう言ったのにカルベルは楽しそうに笑っているだけ。
楽しそうに笑いながら、今日も大量の芋の皮を剥いているカルベルに聞く。
「ここって隠れて会う場所としてたまに使われるの?」
「はい、そうみたいですね。」
「カルベルも見たことがある?」
「夜の遅い時間に何度か見たことがありますね・・・。
その・・・はい、男と女が何やらしている場面を・・・。」
「まだ10歳でしょ?
そんなこと分かるの?」
「早いと16歳で結婚する男性もいますし、周りの人達も休憩中にそんな話で盛り上がっていたりしますし、なんとなくは・・・。」
「そうなんだ~。
男ってくだらない話してるんだね~。
カルベルに夜遅くまで仕事させておいて何してるんだかね?」
「あ、それは仕事といいますか頼まれ事でして。
料理の勉強みたいなことですけど、そういう機会を貰っているんですよね。」
嬉しそうなカルベルの顔を見てから小さく頷き、私はカルベルの手元にある芋を眺めながら聞いた。
「ここ、ステル殿下も使ってた所を見たことあるよね?」
そのついでにカルベルと話していたと言っていたステル殿下。
聞くつもりはなかったけれど、カルベルの姿を見たら思わず聞いてしまった。
不思議そうな顔で私のことを見ているカルベルに視線を移す。
この世界で1番良い色といわれ、神に近い能力があるという白い髪の色を持つカルベルに。
10歳のカルベルという名前の男の子に。
カルベルは小さく首を傾げながら口を開いた。
「ステル殿下って、第2騎士団の団長だった方ですよね?
僕はお会いしたことがないので、使っていたとしてもそれがステル殿下だとは分からないです。」
そんな・・・
そんなことをカルベルが言って・・・。
「ステル殿下と会ったことないの?
ステル殿下からはカルベルと知り合いだって聞いたよ?
ここを使うついでにカルベルと話してたって。」
「ステル殿下が・・・!?
まさか!!騎士団の団長なだけでも凄い方なのに、更に皇太子殿下になられたような方と僕がお話なんて出来ませんよ!!」
カルベルがそう言って笑っている。
聖女でありステル殿下の皇太子妃となった私と喋っているカルベルが。
そんなカルベルには自然と笑いながら聞いてみる。
「黒髪持ちの男とは話したことがある?」
そう聞いた私にカルベルはパッと顔を明るくして頷いた。
「黒髪持ちなんて珍しいはずなのに、ステル殿下と同じ黒髪持ちの方が騎士にもう1人いるんですよ!!」
「そうなんだ・・・っ?」
それには大きく笑いながら頷く。
ステル殿下もカルベルと話す時は身分を隠していたらしいから。
大きく笑っている私にカルベルも嬉しそうな顔で笑いながら言った。
言った・・・。
その男の名前を、言った・・・。
「ソソという名前の方です!!」
そう言った・・・。
この王宮には1人しかいない黒髪持ちの男のことを・・・
ステル殿下のことを・・・
“ソソ”と、そう呼んで・・・
「最近は使ってないですけど、前はたまにここを使っていましたね!!」
そう、言った・・・。
「あの、何か・・・?」
あの古い扉を開けてカルベルの所に逃げ込むと、目の前に立った私にカルベルは恐る恐る声を掛けてきた。
「こんな姿だけど、私!!ルル!!」
「え・・・ルル伯爵令嬢ですか!?
すみません、その姿だと分からなくて。
そんな姿でどうされたんですか?」
「貴族の悪い男達から昼ご飯に誘われたり夜に部屋に来るように誘われたりし始めたから逃げてきた。」
「ナンフリーク殿下が貴族の女性達を相手にするのを止めると宣言したらしいので、元々ルル伯爵令嬢に目を付けていた男性達かもしれませんね。」
「違う違う、女から相手にされないような軟弱な貴族の男達!!
親がジルゴバート“陛下”の重鎮や側近らしくて、王宮を出入り出来るって自慢してたよ?」
「それは災難でしたね、その類いの男性達は傲慢で乱暴な男性ばかりなので。
僕はたまに蹴飛ばされたりしています。」
「誰にやられたの?特徴は?
私がバレないように一瞬で殺してくるよ。」
本気でそう言ったのにカルベルは楽しそうに笑っているだけ。
楽しそうに笑いながら、今日も大量の芋の皮を剥いているカルベルに聞く。
「ここって隠れて会う場所としてたまに使われるの?」
「はい、そうみたいですね。」
「カルベルも見たことがある?」
「夜の遅い時間に何度か見たことがありますね・・・。
その・・・はい、男と女が何やらしている場面を・・・。」
「まだ10歳でしょ?
そんなこと分かるの?」
「早いと16歳で結婚する男性もいますし、周りの人達も休憩中にそんな話で盛り上がっていたりしますし、なんとなくは・・・。」
「そうなんだ~。
男ってくだらない話してるんだね~。
カルベルに夜遅くまで仕事させておいて何してるんだかね?」
「あ、それは仕事といいますか頼まれ事でして。
料理の勉強みたいなことですけど、そういう機会を貰っているんですよね。」
嬉しそうなカルベルの顔を見てから小さく頷き、私はカルベルの手元にある芋を眺めながら聞いた。
「ここ、ステル殿下も使ってた所を見たことあるよね?」
そのついでにカルベルと話していたと言っていたステル殿下。
聞くつもりはなかったけれど、カルベルの姿を見たら思わず聞いてしまった。
不思議そうな顔で私のことを見ているカルベルに視線を移す。
この世界で1番良い色といわれ、神に近い能力があるという白い髪の色を持つカルベルに。
10歳のカルベルという名前の男の子に。
カルベルは小さく首を傾げながら口を開いた。
「ステル殿下って、第2騎士団の団長だった方ですよね?
僕はお会いしたことがないので、使っていたとしてもそれがステル殿下だとは分からないです。」
そんな・・・
そんなことをカルベルが言って・・・。
「ステル殿下と会ったことないの?
ステル殿下からはカルベルと知り合いだって聞いたよ?
ここを使うついでにカルベルと話してたって。」
「ステル殿下が・・・!?
まさか!!騎士団の団長なだけでも凄い方なのに、更に皇太子殿下になられたような方と僕がお話なんて出来ませんよ!!」
カルベルがそう言って笑っている。
聖女でありステル殿下の皇太子妃となった私と喋っているカルベルが。
そんなカルベルには自然と笑いながら聞いてみる。
「黒髪持ちの男とは話したことがある?」
そう聞いた私にカルベルはパッと顔を明るくして頷いた。
「黒髪持ちなんて珍しいはずなのに、ステル殿下と同じ黒髪持ちの方が騎士にもう1人いるんですよ!!」
「そうなんだ・・・っ?」
それには大きく笑いながら頷く。
ステル殿下もカルベルと話す時は身分を隠していたらしいから。
大きく笑っている私にカルベルも嬉しそうな顔で笑いながら言った。
言った・・・。
その男の名前を、言った・・・。
「ソソという名前の方です!!」
そう言った・・・。
この王宮には1人しかいない黒髪持ちの男のことを・・・
ステル殿下のことを・・・
“ソソ”と、そう呼んで・・・
「最近は使ってないですけど、前はたまにここを使っていましたね!!」
そう、言った・・・。
5
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる