【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

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「はい、ステル殿下の魔獣、エリーです。」



「そっか、異変にすぐに気付けて報告にもすぐに来れる監視って、エリーのことだったんだ。」



下半身は魔獣、上半身は女になっているエリーの後ろ姿を眺めながら、私はゆっくりとエリーに向かって歩いていく。



「そろそろ2時間半に1度嗅がせている迷香薬の時間ですので、あまり近付かないでください!」



「3時間に1度ではなく2時間半に1度にしたんだ?」



「はい、ステル殿下からの指示で。
それまではヤミレナス男爵の管轄で監視していましたが、本日より第2騎士団の管轄になりまして。
ステル殿下がこっちの牢に移しました。」



「うん、懸命な判断だね。
すぐに殺すのが最善ではあるけど。」



「はい・・・?
ごめんなさい、聞き取れませんでした。」



「いいの、独り言。」



そう答えてからエリーの隣に並ぶ。
エリーは私のことを1度も見ることはなくユンスを見上げ続けている。



ステル殿下から言われた指示を守り続けているエリーに自然と笑いながら、私もユンスの方を見上げる。



普通ではなかった・・・。



「迷香薬はここまで効果があるんだ。」



大きな口から涎を垂らしながらもその口が大きく開くことはない。
相当な威力を持つ両手が動くこともない。
荒い呼吸だけを繰り返しているだけで襲い掛かってくることもない。



ユンスは知能が高い。
平民は襲わずに自分を攻撃してくるであろう人間を倒しながら王都を目指していく。
そして、クレドから得ている情報では他の魔獣と同じく国王を殺そうとしてくる。



王宮の中にいるのに国王を殺そうともしてこない。



「この国では国王が不在か・・・。」



殺そうとする国王が王宮にいないのなら、ユンスは案外大人しくしているのかもしれない。



「魔獣だからそれはないか。」



同じ魔獣でもグースやエリーとは全く違うことが見ているだけで分かる。
例え迷香薬で惑わしているとしても、それが分かる。



「本当だったら厚い氷で覆われた牢の中で魔獣を監視する。
そろそろ迷香薬の耐性がついてくる頃だから様子がおかしいと思ったらすぐに殺すように。
もしもそうなったとしてもジルゴバートにはステル殿下が上手く報告するから。」



騎士達に振り向きながらそう伝えると、騎士達は驚いた顔で私のことを見ている。
それには少しだけ慌てながらメルサのように可愛らしく笑ってみた。



「ステル殿下からそう伝えるように言われました。
よろしくお願いしますね。」
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