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「ステル殿下と随分と仲良くなられたようですね?」
ステル殿下が先に部屋を出て行き、私は新しいドレスに着替えてから部屋を出た後にミランダから言われた。
それに答えようとしたら、それよりも先に扉の前で待っていたケロルドが答えた。
「あれはもうカルティーヌ姫にゾッコンですよね!!
今日もまた“命に代えてでも守れ”と言われましたから!!
昨日の夕方はモルダン近衛騎士団長と剣で決闘まで始めて、みんな盛り上がりましたよ!!
モルダン近衛騎士団長から喧嘩を売られてもいつも絶対に買わないのに、昨日はカルティーヌ姫のことだったのでムキになっていましたよ!!
あんなステル団長・・・いや、ステル殿下の姿は初めて見ました!!」
ケロルドが物凄く楽しそうにそう言ってきた。
「ステル殿下とモルダン近衛騎士団長、どっちが倒した?」
「ステル殿下ですね。
ただ、モルダン近衛騎士団長は遠征から戻ったばかりでしたので、それを考慮すると互角かもしれません。」
「モルダン近衛騎士団長も強いんだ。
ミランダ、モルダン近衛騎士団長はクラスト陛下寄りってことでいいんだよね?」
歩きながらミランダに聞くと、ミランダは前を向き続けたまま口を開いた。
「私はそういったことはお答え出来かねます。」
「優秀過ぎる侍女長で逆に使えないな~。」
「このようにして生き抜いてきましたので。」
ミランダが強い目で私に視線を移してきた。
その目から何故か目が離せない。
普通の黒い瞳から・・・。
この国の多くの人間が持っている黒い瞳から・・・。
「侍女長として、女として、そして侯爵夫人として、私はこうやって戦ってきましたので。」
「ミランダも・・・ミランダも戦ってきたんだ・・・?
何の為に?誰の為に?クラスト陛下の為?」
聞いた私にミランダは何も答えないまま、また真っ直ぐと前を見て歩き始めた。
「ナンフリーク皇太子妃候補のご令嬢方からご意見が多く寄せられています。
カルティーヌ姫だと思われる女性が厭らしい姿で王宮をフラフラと歩いていて迷惑だと。
せめてコルセットはしてください。
胸がスカスカでたまに隙間から見えていますよ?」
「別にいいよ、減るものじゃないし。」
「女としての品格は減っていきますから。
・・・まったく、インソルドではどんな教育を受けさせているのか頭が痛くなりますよ。
女性はみんなカルティーヌ姫と似たような方なのですか?」
「そうだね、教育は一環してる。
あの場所で生き抜かないといけないからね。
インソルドを出て私の方が驚いたよ。
男も女もこれじゃあ魔獣にすぐに殺されるじゃん。」
「王都に魔獣が来たことはここ数百年ありません。
第1騎士団が砦を守ってくれているので。」
「その第1騎士団が命に代えてでも守っている民がこんな人間達だったなんてね。
多くは平民の民だけどさ。」
「騎士団は国の為、そこに生きる民の為に在りますからね。
そして近衛騎士団は国の為、国王陛下の為に・・・。」
「クラスト国王陛下はどこにいるのかミランダも知らないの?
知ってたらヒントだけでも頂戴よ。
クラスト陛下の明言もない、クラスト陛下の遺体もない、このままじゃジルゴバートが死ぬまでジルゴバートの圧政が続いていくことになる。」
「クラスト陛下は生きておられます。
あの方はそろそろ戻られます。
・・・戻られるはずです。
だからそれまで・・・それまでは・・・」
ミランダの声が震えてきたので見てみると、必死に涙を我慢した顔をしている。
「今出来る最善を尽くしかありません。」
「うん、良いね。私もそうやって教育されてる。」
「それならコルセットをしてください。」
「あんなのをしてたらいざという時にステル殿下を守れない。」
「カルティーヌ姫は聖女でありステル殿下の妻になられましたからね?
そのことはお忘れなく。」
厳しい口調でそう指摘され、そんなミランダには大きく笑いながら歩いていたら、また怒られた。
ステル殿下が先に部屋を出て行き、私は新しいドレスに着替えてから部屋を出た後にミランダから言われた。
それに答えようとしたら、それよりも先に扉の前で待っていたケロルドが答えた。
「あれはもうカルティーヌ姫にゾッコンですよね!!
今日もまた“命に代えてでも守れ”と言われましたから!!
昨日の夕方はモルダン近衛騎士団長と剣で決闘まで始めて、みんな盛り上がりましたよ!!
モルダン近衛騎士団長から喧嘩を売られてもいつも絶対に買わないのに、昨日はカルティーヌ姫のことだったのでムキになっていましたよ!!
あんなステル団長・・・いや、ステル殿下の姿は初めて見ました!!」
ケロルドが物凄く楽しそうにそう言ってきた。
「ステル殿下とモルダン近衛騎士団長、どっちが倒した?」
「ステル殿下ですね。
ただ、モルダン近衛騎士団長は遠征から戻ったばかりでしたので、それを考慮すると互角かもしれません。」
「モルダン近衛騎士団長も強いんだ。
ミランダ、モルダン近衛騎士団長はクラスト陛下寄りってことでいいんだよね?」
歩きながらミランダに聞くと、ミランダは前を向き続けたまま口を開いた。
「私はそういったことはお答え出来かねます。」
「優秀過ぎる侍女長で逆に使えないな~。」
「このようにして生き抜いてきましたので。」
ミランダが強い目で私に視線を移してきた。
その目から何故か目が離せない。
普通の黒い瞳から・・・。
この国の多くの人間が持っている黒い瞳から・・・。
「侍女長として、女として、そして侯爵夫人として、私はこうやって戦ってきましたので。」
「ミランダも・・・ミランダも戦ってきたんだ・・・?
何の為に?誰の為に?クラスト陛下の為?」
聞いた私にミランダは何も答えないまま、また真っ直ぐと前を見て歩き始めた。
「ナンフリーク皇太子妃候補のご令嬢方からご意見が多く寄せられています。
カルティーヌ姫だと思われる女性が厭らしい姿で王宮をフラフラと歩いていて迷惑だと。
せめてコルセットはしてください。
胸がスカスカでたまに隙間から見えていますよ?」
「別にいいよ、減るものじゃないし。」
「女としての品格は減っていきますから。
・・・まったく、インソルドではどんな教育を受けさせているのか頭が痛くなりますよ。
女性はみんなカルティーヌ姫と似たような方なのですか?」
「そうだね、教育は一環してる。
あの場所で生き抜かないといけないからね。
インソルドを出て私の方が驚いたよ。
男も女もこれじゃあ魔獣にすぐに殺されるじゃん。」
「王都に魔獣が来たことはここ数百年ありません。
第1騎士団が砦を守ってくれているので。」
「その第1騎士団が命に代えてでも守っている民がこんな人間達だったなんてね。
多くは平民の民だけどさ。」
「騎士団は国の為、そこに生きる民の為に在りますからね。
そして近衛騎士団は国の為、国王陛下の為に・・・。」
「クラスト国王陛下はどこにいるのかミランダも知らないの?
知ってたらヒントだけでも頂戴よ。
クラスト陛下の明言もない、クラスト陛下の遺体もない、このままじゃジルゴバートが死ぬまでジルゴバートの圧政が続いていくことになる。」
「クラスト陛下は生きておられます。
あの方はそろそろ戻られます。
・・・戻られるはずです。
だからそれまで・・・それまでは・・・」
ミランダの声が震えてきたので見てみると、必死に涙を我慢した顔をしている。
「今出来る最善を尽くしかありません。」
「うん、良いね。私もそうやって教育されてる。」
「それならコルセットをしてください。」
「あんなのをしてたらいざという時にステル殿下を守れない。」
「カルティーヌ姫は聖女でありステル殿下の妻になられましたからね?
そのことはお忘れなく。」
厳しい口調でそう指摘され、そんなミランダには大きく笑いながら歩いていたら、また怒られた。
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