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私の言葉にステル殿下は止まり、2人で顔を見合わせる。
そして・・・
「「1年前・・・。」」
2人の声がまた重なった。
「ユンスが捕獲されたのは1年前なんだよね?」
「そうだな。
そして魔獣の大群が押し寄せてきたのも1年前。」
「関係あると思う?」
「何とも言えないけど無関係だとも言い切れないな。
ユンス以外の魔獣が群れているのは見たことがないが。
アデルの砦の応援に行った時も群れている様子ではなかった。
他の魔獣を助けている姿なんかも見たことがない。」
「でも魔獣は必ず、王都を目指す。
その本能は必ず全ての個体が持っている。」
「もう何百年もアデルの砦を突破されたことはないけどな。
第1騎士団は有能だから。」
「サンクリア王国ではね・・・。
他国では王宮まで襲ってくることが結構あるらしい。
そして必ず国王を殺そうとしてくるってクレドが言ってた。」
「それは初めて聞いた、そういえば最近は王宮に来てないな。
俺の最新情報は知能の低い魔獣は“その場にいる1番強い人間を殺そうとしてくる”っていう話だ。」
「そうそう、だからチチにも私にも魔獣が襲ってきて大群の時は魔獣からモテモテだったよ。」
「俺もかなりモテたな。
何体殺った?」
「教えない。」
「なんでだよ・・・っ?」
ステル殿下が楽しそうに笑い、それから私の手まで握っていた手をゆっくりと開いてきた。
真っ白だったクロスがステル殿下の血で赤く染まっているのを2人で見下ろす。
「こんな傷どうってことない。
心配し過ぎだろ。」
「心配するよ、皇太子殿下なんだよ?」
「そうか・・・そうだよな、だからだよな。
だから俺のことを・・・」
ステル殿下が言葉を切った後、悲しそうな顔で笑いながら私のことを見上げてきた。
「俺はずっと勘違いをしていた。
ずっと勘違いをさせてくれていた。」
「勘違い?何を?」
私が聞くとステル殿下は小さく笑い、それから力強い目で私のことを見詰めた。
「カルティーヌは俺の妻になった。
聖女だからという理由だとしてもそれに変わりはない。
だから俺はこの国や国民と同じくらい、カルティーヌのこともこの命を懸けて守るから。」
そんなことを言われ、それには笑ってしまった。
「私は聖女になったから傷付かないし死ぬこともないからね?」
「それでも俺が守る。
俺が絶対に守るから・・・。」
ステル殿下が両手を私の方に伸ばしてきたのを見て、私の身体は自然とステル殿下の腕の中へと寄っていった。
ステル殿下の太い腕が私の背中に回り、強く強く強く、どこまでも強く抱き締められる。
「カルティーヌ、必ず生き抜こう。
この国で、この人生で、必ず生き抜こう。
強く強く強く、どこまでも強く。」
そう言って抱き締めてきたステル殿下。
私の真っ白な軽いドレスはステル殿下の血で濡れていた。
そして・・・
「「1年前・・・。」」
2人の声がまた重なった。
「ユンスが捕獲されたのは1年前なんだよね?」
「そうだな。
そして魔獣の大群が押し寄せてきたのも1年前。」
「関係あると思う?」
「何とも言えないけど無関係だとも言い切れないな。
ユンス以外の魔獣が群れているのは見たことがないが。
アデルの砦の応援に行った時も群れている様子ではなかった。
他の魔獣を助けている姿なんかも見たことがない。」
「でも魔獣は必ず、王都を目指す。
その本能は必ず全ての個体が持っている。」
「もう何百年もアデルの砦を突破されたことはないけどな。
第1騎士団は有能だから。」
「サンクリア王国ではね・・・。
他国では王宮まで襲ってくることが結構あるらしい。
そして必ず国王を殺そうとしてくるってクレドが言ってた。」
「それは初めて聞いた、そういえば最近は王宮に来てないな。
俺の最新情報は知能の低い魔獣は“その場にいる1番強い人間を殺そうとしてくる”っていう話だ。」
「そうそう、だからチチにも私にも魔獣が襲ってきて大群の時は魔獣からモテモテだったよ。」
「俺もかなりモテたな。
何体殺った?」
「教えない。」
「なんでだよ・・・っ?」
ステル殿下が楽しそうに笑い、それから私の手まで握っていた手をゆっくりと開いてきた。
真っ白だったクロスがステル殿下の血で赤く染まっているのを2人で見下ろす。
「こんな傷どうってことない。
心配し過ぎだろ。」
「心配するよ、皇太子殿下なんだよ?」
「そうか・・・そうだよな、だからだよな。
だから俺のことを・・・」
ステル殿下が言葉を切った後、悲しそうな顔で笑いながら私のことを見上げてきた。
「俺はずっと勘違いをしていた。
ずっと勘違いをさせてくれていた。」
「勘違い?何を?」
私が聞くとステル殿下は小さく笑い、それから力強い目で私のことを見詰めた。
「カルティーヌは俺の妻になった。
聖女だからという理由だとしてもそれに変わりはない。
だから俺はこの国や国民と同じくらい、カルティーヌのこともこの命を懸けて守るから。」
そんなことを言われ、それには笑ってしまった。
「私は聖女になったから傷付かないし死ぬこともないからね?」
「それでも俺が守る。
俺が絶対に守るから・・・。」
ステル殿下が両手を私の方に伸ばしてきたのを見て、私の身体は自然とステル殿下の腕の中へと寄っていった。
ステル殿下の太い腕が私の背中に回り、強く強く強く、どこまでも強く抱き締められる。
「カルティーヌ、必ず生き抜こう。
この国で、この人生で、必ず生き抜こう。
強く強く強く、どこまでも強く。」
そう言って抱き締めてきたステル殿下。
私の真っ白な軽いドレスはステル殿下の血で濡れていた。
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