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「何故俺に報告をしてこない!!
そんな重要な報告を何故俺にしてこなかった!!
そしたらもっと早く俺は魔獣持ちになれていたのに!!
お前が魔獣持ちだと分かった時から俺も魔獣が欲しいと思っていた!!
魔獣も従わせたいと思っていたのに!!!」



俺が叫び続けているのにステルは剣を構えたままユンスから目を離さない。



「当時の騎士団長には報告をした。
それより、3時間に1度、迷香薬を嗅がせる必要があると聞いている。
それも、1年前に捕獲しているならそろそろ薬の耐性が出来てくる頃だ。
ここで殺しておく。」



「・・・やめろ!!!
あの迷香薬にいくら注ぎ込んでいると思ってるんだ!!!
次の魔獣を捕獲するまではこいつが俺の魔獣だ!!!」



俺が叫んでいる途中で側近が慌てた鎖をその場に放り投げた。



「迷香薬の入手しているのは俺ですけど、1年で耐性が出来るとは知りませんよ・・・!!
早く殺してくれ!!!」



「ダメだ!!!!
次の魔獣を捕獲するまでは殺すな!!!!
ステル!!命令だ!!!
そいつが案内する場所にこいつを閉じ込めておけ!!!!」



「それは国王陛下代理である弟殿下からの命令ということでしょうか。
それとも俺の叔父様としての命令ですか?」



ステルが・・・ステルがそんなことを言って、大きな剣を構え続ける。



初めてステルからこんなことを言われて驚くしかない。
古くからの重鎮やクラストの側近からこのようなことは言われたけれど、その度に排除してきた。
俺の重鎮や側近達と共に、そいつらの家族や領民を人質に排除し続けてきた。



でも、この男に家族はいない。
あるのは騎士団の団長としての地位と第3皇太子としての地位だけ。
その2つは俺の刻印によって与えた地位。
その刻印を3年以内に消す場合、俺だけではなく重鎮議会で全会一致の必要がある。



古くからの重鎮がユンスが現れた瞬間に騎士団長のステルよりも素早くこの男の前に立った。
年老いた身体で、ヨボヨボの姿で、黒髪持ちで魔獣持ち、騎士団の団長である男を守ろうとしていた。



その姿を思い出し苛立ちが沸騰した時・・・



「もしかして、国王陛下としての命令ではありませんよね?」



そんな・・・



そんなことを聞いてきて・・・。



驚き過ぎて何も言えない俺に、ステルが続けてくる。



「クラスト国王は療養中とのことですけど、どこにいらっしゃいますか?
俺は昨日第3皇太子になりましたのでご挨拶に行きたいと考えています。」



ステルが剣を右手に持ったまま床に落ちた鎖を素早く拾い上げ、ユンスの首を引いた。
それによりユンスは少しずつ動き出す。



それを呆然と眺めながら固まっていた時、ステルの後ろ姿が止まった。



そして俺のことを見ることなく言った。



「弟殿下、ハフリーク第1皇太子殿下はお元気ですか?
しばらくお会いしていないのでハフリーク殿下にもご挨拶したいと思っています。
ユンスを置いた後にハフリーク殿下のご都合をマルチネス妃に確認して参ります。」



「・・・やめろ!!!!」



咄嗟に叫ぶとステルがゆっくりと、ゆっくりと振り向いてきて・・・



俺のことをバカにしたような顔で見て、笑った・・・。



その顔を見て・・・



俺の苛立ちは爆発した・・・。



「ダンドリー・・・っっ!!!」



この世で1番殺したい男の名前を叫んだ。



2人の“国王陛下”よりも殺したいと思い続けている男の名前を、叫んだ。
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