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「魔獣、なの?それ・・・。
僕には女性?なのかな、とにかく女の人に見えるけど。」
ナンフリークが1番先に声を上げた。
それにはステルが頷き、3本立てた指を見せてきた。
「3つの姿に変化することが出来ます。
獣のような姿、今の女のような姿、そして半獣のような姿。
グースよりも遥かに人の言葉を理解出来ますが、これは喋りません。
・・・喋らない、が正しいですかね。
喋らなくても俺とはある程度意志疎通が出来てしまうので。
必要になれば単語を少しだけ喋ると聞いていますが、知能は3歳児ほどしかなく、あるのは本能のようなものと勘だけ。
グースのように人を乗せませんが個体だけでなら1日に数回ですが空間を移動出来ます。」
魔獣のことをペラペラと説明するステル。
俺はその女から目を離せないでいた。
そして震えてきた口をゆっくりと開き、聞いた。
「お前の命が危なくなった時、それはお前を守るのか・・・?」
「“守る”という表現で正しいのかは分かりませんが、この見た目でも分かるように母性本能のようなものが備わっているようです。
ただ、戦闘力は驚くほどないので威嚇するくらいですね。」
「魔獣なのに、戦闘力がないだと・・・?」
「“戦闘力がない”といいますか・・・人や魔獣と殺し合っているところを見たことがありません。
俺の魔獣ではなく普通の魔獣だと思った幼い子どもに剣で切られた際、走って逃げていたらしいです。
当時はまだ空間移動も出来なかったようなので。」
「そうか・・・。」
戦闘力がないと聞きそれには心から安心した。
そして俺のことを不安にさせたこの男にやはり苛立ちが沸騰してくる。
グースのような使える魔術ではなくそんな使えないような魔獣を自慢気に紹介しているこの男に。
「お前だけではない、俺だって魔獣を従えている。」
俺はそう言ってから側近の1人に目配せをした。
そしたらその側近は意気揚々と立ち上がり部屋から出て行った。
「殿下、魔獣を従えているんですか・・・?
僕は初めて知りました。」
「見れば分かる。
ナンフリーク、俺のことは“陛下”と呼ぶように何度も言っているだろ。」
「はい・・・。」
「で、昨晩の女はどうだった?
1番豊かな胸を持っている令嬢だとマルチネス妃から聞いたぞ?」
「・・・ああ、うん。
胸が大きい子だったね。」
苦笑いを浮かべているナンフリークの顔を見て、俺は今日も心の中で悪態をつく。
俺とマルチネスの子どもとは思えないくらいに弱い男で・・・。
“優しい”のだろうけれど、そんなモノは国王には必要なくて。
“ナンフリークは王の器ではない”
心の中で今日もそう呟く。
それから魔獣だという女の身体を拭いているステルの方を見た。
“使える男”だと改めて思いながら。
騎士としては幼い頃から使えるガキだった。
黒髪は国を滅ぼそうとするなんて迷信を信じていた“あの日”の俺の重鎮達が今では笑い話にしているくらいに、“使えるガキ”だった。
“このガキ”を国王の椅子に座らせ、後ろから俺が操ればいい。
俺の父である先々代の国王から王の継承権を与えられなかった俺では、このまま国の上に立ち続けるのは難しくなってくる可能性がある。
それが先程のマドニスの発言で気付いた。
僕には女性?なのかな、とにかく女の人に見えるけど。」
ナンフリークが1番先に声を上げた。
それにはステルが頷き、3本立てた指を見せてきた。
「3つの姿に変化することが出来ます。
獣のような姿、今の女のような姿、そして半獣のような姿。
グースよりも遥かに人の言葉を理解出来ますが、これは喋りません。
・・・喋らない、が正しいですかね。
喋らなくても俺とはある程度意志疎通が出来てしまうので。
必要になれば単語を少しだけ喋ると聞いていますが、知能は3歳児ほどしかなく、あるのは本能のようなものと勘だけ。
グースのように人を乗せませんが個体だけでなら1日に数回ですが空間を移動出来ます。」
魔獣のことをペラペラと説明するステル。
俺はその女から目を離せないでいた。
そして震えてきた口をゆっくりと開き、聞いた。
「お前の命が危なくなった時、それはお前を守るのか・・・?」
「“守る”という表現で正しいのかは分かりませんが、この見た目でも分かるように母性本能のようなものが備わっているようです。
ただ、戦闘力は驚くほどないので威嚇するくらいですね。」
「魔獣なのに、戦闘力がないだと・・・?」
「“戦闘力がない”といいますか・・・人や魔獣と殺し合っているところを見たことがありません。
俺の魔獣ではなく普通の魔獣だと思った幼い子どもに剣で切られた際、走って逃げていたらしいです。
当時はまだ空間移動も出来なかったようなので。」
「そうか・・・。」
戦闘力がないと聞きそれには心から安心した。
そして俺のことを不安にさせたこの男にやはり苛立ちが沸騰してくる。
グースのような使える魔術ではなくそんな使えないような魔獣を自慢気に紹介しているこの男に。
「お前だけではない、俺だって魔獣を従えている。」
俺はそう言ってから側近の1人に目配せをした。
そしたらその側近は意気揚々と立ち上がり部屋から出て行った。
「殿下、魔獣を従えているんですか・・・?
僕は初めて知りました。」
「見れば分かる。
ナンフリーク、俺のことは“陛下”と呼ぶように何度も言っているだろ。」
「はい・・・。」
「で、昨晩の女はどうだった?
1番豊かな胸を持っている令嬢だとマルチネス妃から聞いたぞ?」
「・・・ああ、うん。
胸が大きい子だったね。」
苦笑いを浮かべているナンフリークの顔を見て、俺は今日も心の中で悪態をつく。
俺とマルチネスの子どもとは思えないくらいに弱い男で・・・。
“優しい”のだろうけれど、そんなモノは国王には必要なくて。
“ナンフリークは王の器ではない”
心の中で今日もそう呟く。
それから魔獣だという女の身体を拭いているステルの方を見た。
“使える男”だと改めて思いながら。
騎士としては幼い頃から使えるガキだった。
黒髪は国を滅ぼそうとするなんて迷信を信じていた“あの日”の俺の重鎮達が今では笑い話にしているくらいに、“使えるガキ”だった。
“このガキ”を国王の椅子に座らせ、後ろから俺が操ればいい。
俺の父である先々代の国王から王の継承権を与えられなかった俺では、このまま国の上に立ち続けるのは難しくなってくる可能性がある。
それが先程のマドニスの発言で気付いた。
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