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「ジルゴバート王弟殿下、聖女様とステル殿下の結婚式が滞りなく済みましたのでご報告に参りました。」
カンザル教会のトップであるクレバトル教皇。
わざわざ聖女とステルの結婚式に出向いてきたと知った時には驚いた。
そしてこのクレバトル教皇は、この王宮の教会では入りきらないくらいの聖職者達を引き連れてやって来たらしい。
クラストとマルチネスとの結婚式の時よりも多くの聖職者の人数だったと、さっきマドニスではなく“俺の宰相から”報告を受けた。
国王陛下の執務室の椅子から少し慌てて立ち上がり、クレバトル教皇にソファーに座るよう促した。
「わざわざクレバトル教皇までお越しいただき申し訳ございません。
第3皇太子とはいえ黒髪持ちで実際はただの騎士団の団長。
そして聖女とはいえ没落貴族の娘。
そんな2人の結婚式だからこそ見届けにいらしてくれたのだと思い、心から感謝しております。
これでこの王国は益々安泰になることでしょう。」
「そうですね、安泰になると予言が降りてきましたので本日は見届けに参りました。」
顔の表情を全く変えることなく淡々と言葉だけを出していく男だった。
カンザル教会はこの世界全てに共通している教会で、国とは丸っきり別の存在として各国に属して存在している。
「僕はまだ見ておりませんが、報告では聖女はこの世の者とは思えないほどの美しい娘だと聞きました。
今晩クレバトル教皇の部屋に酒をつがせに行かせますので、是非。」
「いえ、結構です。
これで我々は帰らせていただきます。
ここは空気が悪く息苦しいと苦しむ聖職者が多いですので、帰ったらすぐに浄化の儀式も行いたいので。」
「そうですか、残念です。
皆さんがいらっしゃるのは自然豊かな山脈ですからね。
ここは発展した王都、それは空気が違うことでしょう。」
俺の言葉を無視し、クレバトル教皇は物音もなく立ち上がった。
それには俺も少し慌てて立ち上がると、クレバトル教皇はやっぱり表情を全く変えることなく淡々と言葉を出してきた。
「これまでの記録では聖女様は必ずと言っていいほど王国1番の美女であったとされてきましたが、伝説というのはアテになりませんね。」
「・・・クレバトル教皇のタイプではない女でしたか?」
そう聞くとクレバトル教皇が小さくだけど笑った。
少しだけ上を見て、楽しそうに笑いながら。
「髪の毛は真っ白な方でしたが、褐色の肌、健康的を通り越したような太い筋肉が鎧のように身体を纏っている方。
顔は女性だとは思えないくらい屈強な顔付きをしていて、その目だけで殺されてしまうのではと思わず身構えてしまいました。
更には結婚式だというのに持っていたのは花ではなくて短剣。
そんな物を左手に持って教会に入ってきました・・・そう、見えました。」
カンザル教会のトップであるクレバトル教皇。
わざわざ聖女とステルの結婚式に出向いてきたと知った時には驚いた。
そしてこのクレバトル教皇は、この王宮の教会では入りきらないくらいの聖職者達を引き連れてやって来たらしい。
クラストとマルチネスとの結婚式の時よりも多くの聖職者の人数だったと、さっきマドニスではなく“俺の宰相から”報告を受けた。
国王陛下の執務室の椅子から少し慌てて立ち上がり、クレバトル教皇にソファーに座るよう促した。
「わざわざクレバトル教皇までお越しいただき申し訳ございません。
第3皇太子とはいえ黒髪持ちで実際はただの騎士団の団長。
そして聖女とはいえ没落貴族の娘。
そんな2人の結婚式だからこそ見届けにいらしてくれたのだと思い、心から感謝しております。
これでこの王国は益々安泰になることでしょう。」
「そうですね、安泰になると予言が降りてきましたので本日は見届けに参りました。」
顔の表情を全く変えることなく淡々と言葉だけを出していく男だった。
カンザル教会はこの世界全てに共通している教会で、国とは丸っきり別の存在として各国に属して存在している。
「僕はまだ見ておりませんが、報告では聖女はこの世の者とは思えないほどの美しい娘だと聞きました。
今晩クレバトル教皇の部屋に酒をつがせに行かせますので、是非。」
「いえ、結構です。
これで我々は帰らせていただきます。
ここは空気が悪く息苦しいと苦しむ聖職者が多いですので、帰ったらすぐに浄化の儀式も行いたいので。」
「そうですか、残念です。
皆さんがいらっしゃるのは自然豊かな山脈ですからね。
ここは発展した王都、それは空気が違うことでしょう。」
俺の言葉を無視し、クレバトル教皇は物音もなく立ち上がった。
それには俺も少し慌てて立ち上がると、クレバトル教皇はやっぱり表情を全く変えることなく淡々と言葉を出してきた。
「これまでの記録では聖女様は必ずと言っていいほど王国1番の美女であったとされてきましたが、伝説というのはアテになりませんね。」
「・・・クレバトル教皇のタイプではない女でしたか?」
そう聞くとクレバトル教皇が小さくだけど笑った。
少しだけ上を見て、楽しそうに笑いながら。
「髪の毛は真っ白な方でしたが、褐色の肌、健康的を通り越したような太い筋肉が鎧のように身体を纏っている方。
顔は女性だとは思えないくらい屈強な顔付きをしていて、その目だけで殺されてしまうのではと思わず身構えてしまいました。
更には結婚式だというのに持っていたのは花ではなくて短剣。
そんな物を左手に持って教会に入ってきました・・・そう、見えました。」
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