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そしてその冴えない侍女、エリナエルという女から生まれてきた子どもは・・・
「エリナエル・・・っ、王妃!
まだ動いてはいけませんから!!」
侍女長であり友人でもある為出産に付き添っていたミランダが、緊急の重鎮議会が開かれている場に現れた。
真っ青な顔をしてフラフラと歩いているエリナエルを支えながら。
「私の子は・・・私と陛下の子どもはどこですか・・・?」
「エリナエル・・・。」
エリナエルが現れた瞬間に立ち上がっていたクラスト陛下がエリナエルの前まで走り、その身体を抱き締めていた。
そんなクラスト陛下に驚いたのは俺だけではない。
身籠ったエリナエルの元にクラスト陛下がいる姿をこれまで1度も見ることはなかったから。
クラスト陛下がいつもいたのはマルチネス妃の隣で、下半身は不能だから子作り自体はしていなかったらしいけれどマルチネス妃の身体の相手は毎夜のようにしていたらしい。
“結構上手い”とまであのマルチネスが言っていたくらいで、マルチネス妃が俺の部屋にいない日は必ず一緒に寝ていたクラスト陛下。
マルチネス妃が部屋いない日についてもクラスト陛下が仕事以外で自室にいないことはない、そう侍女達も見張りの騎士達もマルチネスに報告をしていた。
だからこんな風にエリナエルを抱き締めているクラスト陛下には驚くしかない。
抱き締め合いながら2人で小声で何かを話していて、それを遠くから眺めながら重鎮達・・・主にここ数年でここまで登り詰めてきた貴族達はザワザワとしてきた。
俺が贔屓にしている貴族達が。
マルチネス妃とも身体の関係を持っているような貴族達が。
“家”の階級が低い貴族や歴史が浅い貴族、これまでの功績が低かった貴族達。
それでも国に有力な情報や知恵、金や物資、必要であれば武力となる人材も送り込んでくれる貴族達だった。
この者達を宮廷に入れることをクラスト陛下には長年却下されていたが、俺がマルチネス妃と子作りを初めてからはクラスト陛下も徐々に俺の意見を多く取り入れるようになっていた。
古くからいる重鎮達はその貴族達を宥めているが・・・
「ですが、黒い髪の子どもが生まれたなんてサンクリア王国が建国されてから3度目ですよね!?」
「1度目も2度目も国を滅ぼそうとした皇子となり、黒髪が生まれたらすぐに“天に返すように”と記録されているんですよね!?」
「そんな不吉な子どもを生むなんて・・・。
そもそも、陛下の本当の子どもかどうかも怪しいんですよね?
陛下は・・・子作りが出来ない身体らしいじゃないですか。」
「そうですよ、これが陛下の子どもでないとしたらあの女は国を惑わしたという重い罪に問うべきですよ。」
「その通りだ!
それを天が知らせる為に黒髪の子どもを堕たしたのだろう!!」
「皆さん、推測や憶測で話すのはお止めください。」
マドニス宰相が重い声を出すと、騒いでいた貴族達が口を閉じた。
「エリナエル妃が身籠った子どもはクラスト陛下との子どもです。
陛下からもそう報告を受けています。」
「それは部屋の前で見届けたということですか?」
俺の言葉にマドニス宰相が口を結んだ。
この優秀な宰相の口を結ばせたことに興奮してくる気持ちを抑えられない。
その気持ちのまま口を開く。
「仮に本当に陛下の子どもなのだとしたら、そっちの方が問題ではないですか?
陛下が黒髪の子どもを・・・国を滅ぼそうとする皇子をエリナエル妃から生ませたことになる。
だから違いますよね?
陛下の子どもではありませんよね?」
マドニス宰相に畳み掛けるように問うと、マドニス宰相は口を強く結び続けた。
それに思わず大笑いしようとしてしまった瞬間・・・
「陛下の子どもではない、そうだろ!?」
「陛下の子どもだったら陛下が厄災を迎えてきたことになる!!」
「そうだ!!陛下の子どもじゃないに決まっている!!」
「あの女、最初から怪しさしかなかった!!」
俺が贔屓にしている貴族達が俺の顔をチラチラと確認しながらそう声を挙げていく。
俺を気持ち良くさせる術を知っている貴族達ばかりだった。
優越感で気持ち良くなっていく中、女の泣いているような声が響いた。
「陛下との子どもです・・・!!
あの子は陛下と私が愛し合って誕生した子どもです・・・!!」
「エリナエル・・・っ、王妃!
まだ動いてはいけませんから!!」
侍女長であり友人でもある為出産に付き添っていたミランダが、緊急の重鎮議会が開かれている場に現れた。
真っ青な顔をしてフラフラと歩いているエリナエルを支えながら。
「私の子は・・・私と陛下の子どもはどこですか・・・?」
「エリナエル・・・。」
エリナエルが現れた瞬間に立ち上がっていたクラスト陛下がエリナエルの前まで走り、その身体を抱き締めていた。
そんなクラスト陛下に驚いたのは俺だけではない。
身籠ったエリナエルの元にクラスト陛下がいる姿をこれまで1度も見ることはなかったから。
クラスト陛下がいつもいたのはマルチネス妃の隣で、下半身は不能だから子作り自体はしていなかったらしいけれどマルチネス妃の身体の相手は毎夜のようにしていたらしい。
“結構上手い”とまであのマルチネスが言っていたくらいで、マルチネス妃が俺の部屋にいない日は必ず一緒に寝ていたクラスト陛下。
マルチネス妃が部屋いない日についてもクラスト陛下が仕事以外で自室にいないことはない、そう侍女達も見張りの騎士達もマルチネスに報告をしていた。
だからこんな風にエリナエルを抱き締めているクラスト陛下には驚くしかない。
抱き締め合いながら2人で小声で何かを話していて、それを遠くから眺めながら重鎮達・・・主にここ数年でここまで登り詰めてきた貴族達はザワザワとしてきた。
俺が贔屓にしている貴族達が。
マルチネス妃とも身体の関係を持っているような貴族達が。
“家”の階級が低い貴族や歴史が浅い貴族、これまでの功績が低かった貴族達。
それでも国に有力な情報や知恵、金や物資、必要であれば武力となる人材も送り込んでくれる貴族達だった。
この者達を宮廷に入れることをクラスト陛下には長年却下されていたが、俺がマルチネス妃と子作りを初めてからはクラスト陛下も徐々に俺の意見を多く取り入れるようになっていた。
古くからいる重鎮達はその貴族達を宥めているが・・・
「ですが、黒い髪の子どもが生まれたなんてサンクリア王国が建国されてから3度目ですよね!?」
「1度目も2度目も国を滅ぼそうとした皇子となり、黒髪が生まれたらすぐに“天に返すように”と記録されているんですよね!?」
「そんな不吉な子どもを生むなんて・・・。
そもそも、陛下の本当の子どもかどうかも怪しいんですよね?
陛下は・・・子作りが出来ない身体らしいじゃないですか。」
「そうですよ、これが陛下の子どもでないとしたらあの女は国を惑わしたという重い罪に問うべきですよ。」
「その通りだ!
それを天が知らせる為に黒髪の子どもを堕たしたのだろう!!」
「皆さん、推測や憶測で話すのはお止めください。」
マドニス宰相が重い声を出すと、騒いでいた貴族達が口を閉じた。
「エリナエル妃が身籠った子どもはクラスト陛下との子どもです。
陛下からもそう報告を受けています。」
「それは部屋の前で見届けたということですか?」
俺の言葉にマドニス宰相が口を結んだ。
この優秀な宰相の口を結ばせたことに興奮してくる気持ちを抑えられない。
その気持ちのまま口を開く。
「仮に本当に陛下の子どもなのだとしたら、そっちの方が問題ではないですか?
陛下が黒髪の子どもを・・・国を滅ぼそうとする皇子をエリナエル妃から生ませたことになる。
だから違いますよね?
陛下の子どもではありませんよね?」
マドニス宰相に畳み掛けるように問うと、マドニス宰相は口を強く結び続けた。
それに思わず大笑いしようとしてしまった瞬間・・・
「陛下の子どもではない、そうだろ!?」
「陛下の子どもだったら陛下が厄災を迎えてきたことになる!!」
「そうだ!!陛下の子どもじゃないに決まっている!!」
「あの女、最初から怪しさしかなかった!!」
俺が贔屓にしている貴族達が俺の顔をチラチラと確認しながらそう声を挙げていく。
俺を気持ち良くさせる術を知っている貴族達ばかりだった。
優越感で気持ち良くなっていく中、女の泣いているような声が響いた。
「陛下との子どもです・・・!!
あの子は陛下と私が愛し合って誕生した子どもです・・・!!」
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